天才ぱもみのトイレトレーニング 【Season1】完結
サンダルがプニプニと柔らかく、歩くたびにキュンキュンと鳴り響く音がする。
そのサンダルをはいた人物はカリスマ的な存在であり、周囲からは神々しく見られていた。
そのサンダルをはいた人物の名前は『ぱもみ』。
スーパー東京大学を卒業したばかりの7才の女の子である。
天才児。天才美少女。
ぱもみには、いくつものマイルールがあった。
「わたしには、おなかがポッコリ出るのはみっともないです!」
ぱもみは、食事中のおなかに手を当てていた。
「ぷっくりお腹は、子どもっぽすぎます!」
ぱもみは、お腹が出ていると、おなかが大きくなったように錯覚して、食欲を抑えられなくなる。
「食べ過ぎてもみっともないです! 太っちゃいますから食べ過ぎないように、食べなくては!!」
ぽっこりおなかに手をあてながら、自分のことをかわいい女の子だと言って、食べ物を口に運んでいる。
「食べながらしゃべったらダメ。食べ物が口に残って汚らしいです! だって、わたし、いつもきれいな女の子だからです!」
とか言っているときに、ぱもみはもよおした。
「おトイレに行きたくなったら、ちゃんとトイレでおしっこしなさい! お漏らしはダメ。お漏らしはお漏らしなんです。お漏らししちゃダメなんです!」
ぱもみは自分に言い聞かせる。
「お漏らししちゃうとお股がビショビショに濡れちゃうんです。ビショビショのお股は気持ち悪くて、臭くて、子どもっぽくって、みっともないです!」
眉のかたちを八の字にして――ほっぺを紅潮させながら。
「おトイレでは、おしっこをするのに、パンツを下ろすなんてしません!」
「パンツを下ろしたら、お股が寒くなって、おしっこが止まらなくなっちゃうんです!」
「わたし、おトイレでおしっこをするのに、スカートを捲り上げるようなはしたないことはしません!」
「わたしは、お漏らししないように気をつけています!」
全部ひとりごとである。ぱもみは天才児だが独り言がおおい女の子だった。
「おトイレでは、パンツの中にだけ、おしっこをするんです!」
ぱもみは、トイレに閉じこもる。
「わたし、トイレでオシッコをしています!」
「わたしのおしっこは、誰にも見られてはいけません! わたしは、誰にも見られることのない場所でおしっこをしなくてはなりません! トイレでおしっこをして、ドアに鍵をかけていませんと!」
独り言はつづく。
「わたし、今、おトイレです! おトイレでオシッコ中です!」
水洗音がトイレ内に響いた。それは――さざなみのように引いていく。
ぱもみはトイレの外に出ると、
「わたし、オシッコをしました!」
ひとりごちて、嬉しそうに言った。
「わたし、おトイレでおしっこをしました!」
「お漏らしなんかじゃありません! お漏らししませんでしたのです! わたしは、おトイレでおしっこをしたのです! お漏らしではありません!」
ぱもみはトイレのドアを閉めた。
「わたしは、おトイレでおしっこしました!」
ぱもみは嬉しそうに言った。
「わたし、もうトイレでおしっこをしなくっていいんです! おしっこ済みですから!!」
ぱもみは嬉しそうに同じようことを繰り返して言った。
ぱもみのトイレトレーニングは完璧であった。天才なのである。
「わたしのオシッコは誰にも見られてはいけません!」
ぱもみは恥ずかしそうに言った。そして手を洗わずにどこかに向かって駆け出した。
【Season1】完結です。【Season2】は、またいつか。