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業務スーパー1kgポテトサラダをできるだけ長持ちさせる保存方法を求めて……(冷凍保存以外で)

神戸物産(こうべぶっさん)すなわち業務スーパーで販売している1kgのポテトサラダ。

税抜398円という破格のわりには、そこそこ旨い。


業務スーパーの1kgポテトサラダ。価格・味・品質に関して他者の追随を許さないコスパ・ナンバーワン商品なのだが――ひとつだけ欠点があった。

独り暮らしの場合、1kgを食べきる前に(いた)んでしまうのだ。

業務スーパーの1kgポテトサラダのうち数百グラムを廃棄する事態になれば100g約39円というコスパ神話が崩れる。であるならば、食味や品質が優れている他社の400g398円をはじめから買ったほうがマシという結論になる。


近年の業務スーパーの1kgポテトサラダは半分の500gずつにミシン目で切り離せるセパレート包装が施されたおかげで以前よりもタイムリミットに追われて毎食ポテトサラダ地獄に陥ることはなくなった。


とはいうものの業務スーパーの1kgポテトサラダ問題が完全解決したわけではない。

ちなみに冷凍保存では解決できないことは先人によって証明済みである。解答したものはとてもじゃないが食えたものではなくなるからだ。


魔法を使うしかない。

時を止める魔法をつかって業務スーパーの1kgポテトサラダの劣化や腐乱を防ぐ。そうすれば独り暮らしでも食べたいときに安くてそこそこ旨いポテトサラダを堪能することができる。


時間停止魔法を習得するしかなかった。

――そう決意したのは2日前のことである。


この魔法は簡単そうに見えても実はかなりの高等技術で習得するのに相当な努力を要する。


俺は自宅マンションに帰ると冷蔵庫から業務スーパーの1kgポテトサラダのパッケージを取り出し、食器棚からサラダ皿とスプーンを取り出すとテーブルの上に並べる。


それから椅子に座り、目を閉じて意識を集中させる。


「――時間よ止まれっ」


そして、呪文を口にする。


「――時間よ止まれっ」


呪文が発動する兆候はない。


「――時間よ止まれっ!」


再度呪文を唱えるも、結果は同じだった。


「くそっ! 時間、止まれよっ!」


俺は声を荒げながら呪文を口走る。


しかし、どれだけ呪文を叫んでも結果は変わらない。


「くっそー!」


俺は思わず叫ぶと業務スーパーの1kgポテトサラダのパッケージをテーブルに叩きつけた。

そのとき――


「あっ!」


思わず声をあげる。


業務スーパーの1kgポテトサラダのパッケージが宙に浮かんでいる。


いや――宙には浮かんでいない。


空中に停止しているのだ。


「これは……サイコキネシス!」


俺は思わず声をあげる。


念動力(サイコキネシス)とは超能力のひとつであり、物の動きを操るという超能力である。


俺はゆっくりとテーブルの上から手を外して業務スーパーの1kgポテトサラダのパッケージから手を離す。


すると業務スーパーの1kgポテトサラダのパッケージは何者かに掴まれたかのように宙に浮かんだまま固定される。


俺は椅子から立ち上がり、業務スーパーの1kgポテトサラダのパッケージの横をすり抜けていく。


「魔法ってほんとうに存在するんだ! でも僕が習得したいのは時間停止魔法なんだが……」


俺はそうつぶやき、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出すとキャップを外し、口に含む。


すると――


「んっ! んんーっ! ゴホッ ゴホッ!!」


僕は耐えきれず叫び声を上げ、口からペットボトルの中身を吐き出し、その場に倒れ込む。


「ペットボトルに入っていた水が――業務スーパーの1kgポテトサラダになってる!」


僕は妙な魔法を習得してしまった。

周囲にある液体すべてを業務スーパーの1kgポテトサラダ味にする魔法である。


――10日後。結局食べきれずに傷んだポテトサラダは酸っぱい臭いを発するようになった。

僕は捨てた。

500gパッケージ版でも腐りかけるまえに食べきれない。だから買わない。1kgタマゴサラダも食べたいけれど結局腐らせるから買えない。

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