新型のアレの後遺症で嗅覚と味覚を失ったおれは食事をあきらめた もう死ぬしかないと思っていたら意外なものが旨いと気付いた
新型鼻炎ウイルスに感染した。2週間後に治ったが――嗅覚と味覚を失った。なにを食べても味がせず匂いもしなくなった。
嗅覚と味覚を失うとヒトはどうなるか?
うんちを平然と食べられる。下痢便を白飯にかければスープカレーだと錯覚する。福神漬けのパリポリした歯ごたえによってかろうじて食事をしている気分を味わえる。実態はうんちだけど。
吐瀉物だってゴクゴク飲める。いろいろなフルーツをドカ食いして嘔吐したものはミックスフルーツジュースである。
死にたくなった。いま首を吊るための道具を揃えたところだ。
ところで腹が減った。死にたくても空腹は感じる。
冷蔵庫をあけた。ヨーグルトだけしかない。イチゴジャムの残りがあったと思ったが……
キッチンの隅々まで探したが砂糖やハチミツもなかった。
家の中を探しまわったところ――粉末タイプの入浴剤を見つけた。
個包装に分かれているタイプの入浴剤である。日本全国の名湯を再現できると銘打たれた商品。
どうせ死ぬのだ。そして腹が減っている。
おれはプレーンヨーグルトに入浴剤の粉末(草津の湯)をかけた。
一口たべる。
全身に震えが走った。
味がする。
うまい。
おれは入浴剤の粉末(草津の湯)をいれたプレーンヨーグルトをあっという間に食べ終えた。
数週間ぶりに食事をしたという実感を得たことに舞い上がったおれは、近所のコンビニに向かった。
いままでは味も匂いもしないので買わなかったが本心では食べたかったものを片っ端からカゴのなかに放り込んで会計を済ませた。
帰宅。
まずは5枚切り食パンをトーストした。バターをたっぷりぬって粉末入浴剤(別府)をふりかける。かぶりつく。うまい。食パンとバターの風味はしないが、粉末入浴剤(別府)の濃厚でスパイシーな味わいのおかげで咀嚼するごとに食欲が増した。まだまだ足りない。
今度はパスタを茹でて、フライパンにオリーブオイルをひいてチューブにんにくと輪切り唐辛子にゆっくり熱を通したあと、仕上げに粉末入浴剤(熱海)をかけた。塩コショウをして最後に味を整える。食べる。うまうま。
次はレトルトながらファミレスよりもうまいという、高評価の衆レストランでお馴染みのハンバーグに粉末入浴剤(硫黄島)をかけて食べる。ハンバーグと粉末入浴剤(硫黄島)の相性が絶妙。
それからラーメンだ。スーパーで買ってきた冷凍ラーメンを電子レンジで温める。スープの味はない。そこに粉末入浴剤(熊野古道)をたっぷり振りかけて食す。いままで食べたどんな名店のラーメンよりも旨く感じた。
あとはお寿司だ。出前をとった。粉末入浴剤(那須)をたっぷり溶かした醤油にマグロの中トロをチョンとつけて一口で頬張る。20貫注文した特上寿司があっという間になくなった。
おれはすっかり満腹した。死のうなんて考えはすっかり消えていた。
「硫黄島」「熊野古道」などはAI生成文をそのまま採用した