都市伝説 差出人「あなたを愛する者」から宅配便が届いたら……
宅配便が自宅に届いた。代引き着払い。身に覚えがなかったから「送りつけ商法」だとすぐに判断した。でも送料含めた代金が600円をだったからノリで支払ってしまった。男の独身所帯なので恐怖心が少なかった。
宅配便ラベルの『差出人』の欄には――
「あなたを愛する者」
――と書かれていた。
知っているぞ。有名なインターネット匿名掲示板で流行った都市伝説――「あなたを愛する者」から荷物が届く――が、うちにもやってきたのだ。
都市伝説『「あなたを愛する者」から荷物が届く』の内容は、匿名掲示板で書き込まれた投稿が切っ掛けとなり、匿名掲示板でやまとめサイトを経由して世間に広がることになった。
それは、女性を自称するユーザーが「あなたの名前と住所を教えてください」と匿名掲示板に書き込みをしたことから始まるいう内容のものだ。
書き込みをおこなった女性は、自分には好きな人がいなくて、このまま独身でいれば婚期を逃してしまって結婚出来ないか悩んでいたらしい。当時はマッチングアプリが存在せず、いわゆる「出会い系サイト」は本人確認がおこなわれていなかった。
「あなたの名前と住所を教えてください」という女性の書き込みに対して、誰かがふざけて匿名掲示板に自分の実住所を書き込んだ。
すると、女性が「あなたの名前と住所を教えてください」を書き込んだときと同じハンドルネームで「あなたの住所宛てにプレゼントを発送しました」という書き込みがおこなわれた。
その書き込みに対しては――
「偽物だ」
「気味が悪い」
「送られてくるものは危険だ」
「ほんとうに届いたら受取拒否したほうがいい」
などの賛否両論があった。しかし、あるとき――
『「あなたを愛する者」の宅配便がうちに届いた』
という書き込みがおこなわれた。
匿名掲示板には「詐欺に引っかかったバカw」「で、中身は何だった?」などの好奇心と悪意が入り交じった書き込みであふれた。しかし、「あなたを愛する者」に関する返信の書き込みはおこなわれなかった。
「もしかして呪いで死んだ?」「本名と住所を晒したのだからサイコパスに標的にされたのかも」など、「行方不明」になった自称受取人に対するさまざまな憶測が飛び交った。
これが「あなたを愛する者」という都市伝説の出発点となった。
うちに届いた段ボールには、緩衝材に埋もれて小さな封筒が入っていた。
さらに封筒をあけると、そのなかにはボールペン字で認められた便箋が1枚。
差出人「あなたを愛する者」からのメッセージは――
「だから わたしも あいして」