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春のパン射撃戦(世界一安全かもしれないデスゲーム)

ヤマザキ春のパンまつりが始まった。毎年恒例のデスゲームだ。


「あ、あの、すみません……このイチゴスペシャルをひとつ買います……」

「はあ、これですか? 少々お待ちください」


私は店員さんに声をかけて、ズボンの後ろポケットから財布を取り出す。


「ありがとうございます!」


ニコニコとしていたのも一瞬で、店員さんが手に取ったのはPOSレジのバーコードスキャナではなく――拳銃だった。


「いやっ怖い!」


私はすぐにその場から離れて、他のコンビニを訪れた。


「すみません。このイチゴスペシャルを買いたいのですが」


私は別のコンビニの店員さんに声をかける。きょうの昼飯はどうしてもイチゴスペシャルでなければ気が済まない。


「はい、これですか? 少々お待ちくださいね……」


店員さんがどこからともなく取り出したのは――銃刀法違反で逮捕されそうな感じのデカい機関銃だった。

私はすかさず店員さんに飛びかかり、機関銃を奪い取る。

すぐに店から飛び出し、また別のコンビニへ行って、やはりイチゴスペシャルを買い求める。


「……おい……イチゴスペシャルを……」


姿をあらわした店員は、笑顔でガトリングガンを抱えていた。

私は先程奪ったばかりの機関銃の銃口を店員さんに向けて引き金を引いた。

ガガガガガ!!!と、轟音と共に機関銃から大量の弾丸が発射される。

しかし、店員さんは銃撃を避けようともせず、笑顔のまま。


「そんな……まさか……」


店員の胸に迫った銃弾は、パン生地に変わり、次々に地面に落ちる。


「さあ、これからパンを……ヤマザキの菓子パンを一緒に楽しみましょう!」


現実感を伴わないその提案に対して怖くなった私は、店員さんに向かってもういちど機関銃をぶっ放した。でもやっぱり機関銃の弾は次々とパン生地に変わり、重力のまま地面に落下していく。


「……っ……っ……!」


この世界では……ヤマザキ春のパンまつりが開催されているあいだは……銃弾で人を殺せないことを私は悟った。


「あ、ああぁぁ……あああああぁぁぁ……」


私は叫び声を上げながらコンビニから逃げ出した――

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