表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋するクローン  作者: もうすぐ死ぬ作家
8/94

その⑦

「わああああああああああっ!」

 ブロックが途切れる寸前、思い切り足元を蹴り飛ばす。

 走り幅跳びの選手のように、僕の身体は宙に弧を描いた。

 次の瞬間、水面に激突した。

 ドンッ! と立ち上がる水柱。

 目を開けると、そこは黒い水の中だった。

 耳の奥で、くぐもった泡が弾ける音がする。シャツが水を吸い、汗ばんだ肌を滑る。気持ちいいと感じたのは一瞬で、途端に鉛のような重さとなって僕の身体に貼り付いた。

 すぐに水面に顔を上げて、女の子を探す。

 女の子は十メートル程先を海に向かって流れていた。

 藻掻いていない。動く気配もない。

 僕は歯を食いしばると、流されていく女の子に向かって、必死に腕をかいた。

 苦い水を飲み込みながらも、少しずつ加速して、女の子に近づく。

 追いつく。

「おい!」

 湿った声で言いながら、女の子の肩を掴み、空気が吸えるよう引っくり返した。

「しっかりしろ!」

 その時だった。

 バチンッ! と水気を含んだ音と同時に、僕の頬に痛みが広がった。

「え…」

 数秒の沈黙。余韻として広がっていく、痺れるような痛み。

 ビンタをされたのだと気づいた瞬間、僕は目を見開き、顔を上げた。

「え…?」

 変な声を出して、女の子を見る。

 彼女はいつの間にか体勢を整え、水の中に立っていた。

 ふんっ…と息を吐くと、僕の頬を打った手の水滴を払い、猫のような眼で僕を睨む。そこに、溺れている様子は微塵も無かった。

「え…、君、何やっているの?」

「それはこっちのセリフなんだけど」

 艶のある声が聞こえた。

 女の子は恨みがこもった声で言った。

「人の自殺の邪魔をして、楽しい?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ