7 ラルフ第二学年 (イヴリン二十一歳)
家族と一緒にいることを恥ずかしいと思う時期なのか、二年目の剣の大会も「別に見に来なくていいから」と言われたけれど、それでも暗めの色のコートとメガネで軽く変装してこっそりと覗きに行った。
少年から青年へと成長していく中で筋肉もつき、毎日の鍛錬の成果もあってか、二年生の時はベスト4に残るようになっていた。周りのファンも増えていて、さすがにその中に混じってきゃあきゃあ言えるほど子供にもなれず、無邪気に声援を送れる同級生たちをうらやましく思った。
その年、第一王子のシリル殿下とチェルシー様はご成婚された。
王妃様も安心なさった様子で、後はクライヴ殿下のお相手探しと、このままラルフが卒業して臣籍となれば概ね王位継承問題は解決し、王妃様のラルフへの警戒もなくなるのではないかと思われた。
クライヴ殿下は王妃様から何人かの婚約者候補をあてがわれ、お見合いを続けながらも結局は婚約に至らない状態が続いていた。特にどちらかに瑕疵があるという訳でもなく、何となく合わないような気がする、くらいの軽い言い訳で、お相手の方もあっさりとお断りに応じる。クライヴ殿下が煮え切らないので、お相手も王族とはいえいつまでも時間を取られるよりは、早々に他の良い条件の相手に切り替えることを望んでいたようだった。
時々、王城の図書室へ行く途中や、チェルシー様のお茶会の帰りにクライヴ殿下とすれ違い、お声をかけられることがあった。特に用があるわけでもなく、あまりに頻繁に会うので何か企んでいるのではないかと警戒する気持ちが強くなっていった。