お迎え
手料理
舞台は戻って元禄は江戸時代
香辛料が安定供給され侍の藩の財政は凄まじい勢いで伸び、平田がお局様を連れて現世に戻って何年かして鳥屋は役目を終えて閉店した。
侍が新鳥屋1号店として江戸の武家屋敷に、町人は江戸の町人街に2号店、商人は大坂に上方1号店を、京の都にお香とおかよが上方本店をオープンさせて数十年後、新たな若い力に店は任して、お香は朝廷の料理番、おかよは幕府の料理番となった。
鳥屋閉店後、女神様はとんと現れなくなった。
侍、商人、町人、お香、おかよは文のやり取りや数年に一度、会合を開いたりしていた。
もっぱら文や会合の内容は鳥屋での暮らしの事だった。
「ビールが、ブランデーが、水割りが、ジュースが飲みたい」・「シャンプー、リンスにコンディショナーが使いたい」・「アレ食べたいコレ食べたい」・「音楽聞きたい、マッサージチェアが恋しい、冷蔵庫欲しい、エアコンの効いた部屋でグッスリ寝たい」・「アニメ観たい、YouTube観たい」・「ウォシュレット使いたい、すぐに入れる風呂やシャワーが恋しい」と言った内容であった。
全員、成功を納め、地位やお金に困る事も無かった。が、昔味わった利便性がどうしても忘れられずにいた。
そして数年後、最長老の侍が逝った。
穏やかな笑みを浮かべて逝ったそうだ。
その数年後商人も同じ様に旅立った。
そして、めっきり老け込んだ町人も床に伏せる事が多くなった。
町人
ってやんでぇ、ちきしょー!一人だけ残されちまって・・
あーあ、このまま逝っちまうのか・・
食も細くなり何を食べても味がしなくなり、食べる楽しみもなくなっていた。
町人はいつの間にか寝ていた。
・
・
夢を見た。
侍、商人、お香におかよ、平田がいた。
鳥屋で忙しいながらも笑いながら楽しく働いてる夢だった。
真夜中に町人は目が覚めた・・強烈に覚醒していく
町人
ん、んん!?
目覚めると辺りは眩く、枕元に女神様が座っていた。
町人は、「え!?女神様じゃねーですかい!お久しゅーございます。」と飛び起きる。
女神様
お久!ん、コレ食べな!
そう言うとお盆を渡される。
角盆にはカレーライスと木匙が乗っていた。
この鮮烈な香りが町人を起こしたのであった。
町人
女神様の手料理って・・初めてですね!
女神様
当たり前って言うか料理神の手料理なんて神界でもそうそう口に出来ないからね。
町人はひと匙口に運ぶ
味もさることながら香りが凄まじかった。
「この味、この香り!すげぇー、まるで香りを食べてるみてぇーだ・・」
食べ終わると町人はポツリと呟く
最後だからご降臨くださったんですかい?
こんな美味いものを最後に・・「あーあ、もっと色んな物、食ってみてぇなぁ」
ったく欲が出るといけねぇやw
女神様
察しがいいじゃん、侍と商人も同じ事言ってたよw
でもね、逝った後は神界であーしの手伝いしてもらうから
町人
って事は?
女神様
もっと、もっと色んな美味い物が待ってるって事
あ、侍と商人も待ってるからねw
「そいつぁは早く逝かねぇと!」
そのまま町人は堕ちる様に寝てしまった・・そして、満面の笑みを浮かべて大往生したのであった。
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いよいよ次回、最終話です。 空銃




