ガラムハバ
香辛料の国
前回の続き
商人達はセイロンを後にし、セイロン島の向こうに見える最終目的地の天竺、現代でのインドで向かう。
ガンダーラ王国の所在地で有り、言わずと知れた仏教王国である。
処女神カンニヤークマリの名を冠したインド半島最南端カンニャクマリのコモリン岬を通過し北北西に大陸沖を沿って航行する。
商人
遂に天竺かぁ・・ガンダーラっちゅう国には何が有るんやろな
ここで女神様から残念なお知らせが船内アナウンスされる。
ガンダーラ王国は600年以上前の1021年に滅んだとの事で天竺では仏教よりヒ ンドゥー教がメインになりつつ有りガンダーラ王国の後地では回教が強くなってるそうだ。ブッダはとっくの大昔に入滅してる。
船員達の中にはワンチャン仏陀に会えるのでは?と思っていた者はガックシである。
しばらく進んでゴアの港に入港する。
接岸しワクワクしながら桟橋を降りると違和感を感じた。
商人
南蛮人が多いな・・
100年程前からポルトガルが幅を利かせてると女神様が教えてくれた。
そして嫌な光景を目にした。
苛烈な迄に鞭で叩きながら黒人の奴隷を使役していたのである。
商人
同じ人間やろ?酷過ぎるや無いか!
セイロンでカフェオレを御馳走してくれた絵描きの黒人を思い浮かべた。
肌の色以外に何がちゃうねん・・白人はそんなに偉いんか?
思わず商人達は目を覆った。
そこに総督府の南蛮人の役人が入港手続きにやってきた。
役人は馬鹿にしたようにニヤニヤしながら丁髷や和服を見ながら話す。
女神様の脳内通訳を聴きながら頷いたり、首を振ったりする。
役人がスペインに痛い目を合わせた日本人か?と訊かれ頷くと本来ならポルトガルの商会以外はダメだが今回だけ特別に許してやろう!
鼻をフンと鳴らすと次の船に向かって行った。
ポルトガルとスペインの仲が悪いのが幸いした。
商人
けったくそ悪いのぅ!なんやねん
まあええわ、早いとこ買いもんしよ
交易所に行けば何やら問題に巻き込まれそうなので一般の市場で売買をする。
香辛料の国だけあって一般市民用のマーケットでも大量の香辛料が売られていた。そして、ここで欲しかった残りの香辛料が全て手に入った。しかも激安である。
船の甲板には香辛料が一面に積まれていた。
商人
いやー、満載やな、まだ日本から持ってきたもんも残っとるで、どないしよ
しかし、あっついなぁ、ちょっとヤバいなぁ
風は強いが熱風だった。
乾いた熱風が体温をガンガン上げ、体力をゴリゴリ削ってゆく・・ガラムハバと言われる熱風の熱波により数千、数万人が亡くなる事もあった。
女神様
これはヤバ谷園、船を少し沖に停泊させて船員全員降ろした方がいいね。
船はバッチリ、ガードするから安心して
女神様の案に従い必要最低限の船員以外を波止場に降ろし、少し沖で錨を降ろした所で港の小船で迎えに行く。
商人
女神様、どこに行ったらええんでっか、日差しと熱風がキツイっちゅうか痛いですわ
女神様
とりあえず、天幕と壁のある市場へ行こう!
ぞろぞろと珍しい格好の団体が口呼吸でゼイゼイと言いながら歩く
市場に入ると周りが壁で囲まれており熱風を浴びず、日陰なのを有難く感じた。
そこで男性の客引きに声を掛けられる。
女神様の通訳によると客引きはいい店があるから少し涼んだらいいんじゃない?的な事を言っている。
商人達は流石にこの大人数ではあかんやろと思っていると客引きは人数を数えると来い来いと手招きする。
付いていくと大きなホールに着いた。
客引きが先払いだと言ってる。
スタッフにお金を見せると金貨をヒョイっと持って行かれる、椅子に座ってしばらく待つと大きな縦長のヤカンの様な物と人数分のカップを持って来た。
カップを並べると次々に茶色い液体を注ぎ、入れ終わるとスッタフは奥に消えた。
客引きがカップを持ち、飲みだしたのを見るとみんなも飲みだす。
商人
ん、温いけど飲み易いなぁ、なんやろコレ?
ちゅうか客引きの分も入ってるんかいな、強かなやっちゃなぁ
客引きの男はニヤリとしながら飲み物を指差して「チャイ」と教える。
いわゆるインドのミルクティーである、濃い目の紅茶に山羊のミルクと砂糖が入った飲み物であった。
商人は飲みながらセイロンで飲んだカフェオレを思い出した。
「なるほどなぁ、珈琲を紅茶にしたらチャイなんやな」
汗が引いて涼しくなっていたが全員、全く気付かず濃厚で香り高いチャイの虜になっていたのであった。
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