蛮行
南国
前回からの続き
台湾を出航し現在は台湾とルソン「現在のフィリピン国ルソン島」の間のフィリピン海であった。
夕方になり船上での夕食となった。
料理長が台湾で仕入れた調味料を使った珍しい料理が並んだ。
商人
おっ、早速珍しい料理やな!
献立教えてんか?
料理長
最初のが茄子の豆豉醤炒めです。
次が魚の唐揚げ、柚子絞りと大根おろしの酢醤油を付けて食べてもらいます。
3つ目が烏賊と蓮根の甜麺醤炒めで汁物が鶏ガラの玉子の汁物・・親子汁でんなw
お漬け物が搾菜の胡麻油掛けです。
飲み物は薩摩で仕入れた黒酢を砂糖水で割ったやつです。
商人
豆豉醤に甜麺醤?
何やそれ?
料理長
甜麺醤は台湾でよう使うみたいでっせ、味噌の一種でんなぁ
豆豉醬は大陸の方でよう使うやつやって言うてました。四川っちゅー所やったかな?
商人
ほう、そりゃ楽しみやな!で、何で黒酢なん?
料理長
流石に油っこいでっしゃろ?
日本では油で炒めるっちゅーんはあんまり使わんさかい、胃もたれせん様にですわ。
「※ 平安時代から炒める・揚げる等の技法はあるがあまり好まれていなかった。恐らくだが一汁三菜の考えが焼く、煮炊き、蒸すの方程式だった為では無いかと思われる。また、油分をあまり取らない食生活が油が苦手になっていったと推測します。元禄後期に本格的に胡麻油で野菜の炒め物が僧侶発で流行するのだが今はまだの話しです。」
商人
まあ、日本人には多めの油はキツいからなぁ
取り敢えず、はよ食べよや!
交代で食事をするとあっと言う間に夜になっていた。
商人
ああ、美味かった!そやけど油対策してあったのに少し胃がもたれるなぁ
よっしゃ、この事も書いとこ
そう言えばルソンにはいつ着くんやろ?
女神様からの一斉放送が脳内に響く
「明日の日の出にはルソンでーす。」
女神様のご連絡で安心した商人は帳面代わり大福帳に今日食べた料理名と味、感想、簡単あ挿絵を書いて直ぐに寝てしまった。
早朝、暑さで日の出前に起きてしまい甲板に出るとルソンが見えていた。
椰子の木等の見た事の無い植生の鬱蒼なジャングルに目を見張った。
「流石、南国!ここまで来たら別世界やな」
商人を始め乗組員一同、どんな人、飲食物、品に出会えるかに心踊らせていた。
日が昇り浅瀬が近くなり海を見ると色取り取りの珊瑚礁と魚達が歓迎する。
そして、ゆっくりとルソンの港に入港する。
港に降り立ち、身振り手振りで交易を持ち掛けるも皆、指で建物を指す。
建物に向かうと交易所だった。
ここで商人は気付く、今までは現地の人々と交易をしたが、どうもここではスペイン人が仕切ってるらしい。
しかも現地人に対して苛烈な扱いをしている。
日本人の商人も小馬鹿にされてるのに気付く。
商人
[現地人は奴隷扱いか・・なるほどな、伊達に南蛮人って言われて無いなぁ、南で蛮行に及ぶ人か・・]
何やらにやけた南蛮人が茹で玉子を渡してきた。
商人
ん、何や?
くれるんかいな?
実はええ奴なんか?
茹で玉子を割ると商人は「ひえっ」と声を上げてしまった。
その玉子は普通の茹で玉子では無く郷土料理の「バロット」と呼ばれる物であった。
孵化寸前の家鴨の玉子を茹でた物である。
もちろん中身は雛の形である。
顔を顰める商人を見て南蛮人達は笑っていた。
商人的には「何て酷たらしい料理や」となり。
しかもそれを見て楽しんでる南蛮人に怒りを覚えた。
商人
こいつら舐めてけつかって!
分かったわ、おどれら!そう言う態度やったらこっちにも考えがある!
商人は滅多に怒らないが商い上で舐めプする奴には怒りを顕にした。
ニヤつく南蛮人達を余所に交易所のカウンターの上にバロットを置くとクルリと背を向けて去るのであった。
商人
商いに来た者に対して、ええ度胸しとるなぁ、浪速の商魂っちゅうんを見せたるわ!
横暴な態度の南蛮人に対して、今、商人の怒りがスパークする。
不定期UPです。
誤字脱字等は小まめに訂正して行きます。
ブクマからの「しおり」機能をお使い頂ければ幸いです。 空銃




