思わぬ品
初の香辛料
前回からの続き
台湾 台北淡水地区
夜が明け、天候にも恵まれ船内で朝食を摂り終えると船倉の荷を甲板に並べて行く
メインは日本刀、西陣織、日本酒、焼酎、泡盛等の酒類、螺鈿細工である。
焼き物は台湾にも多く流通してるので動きはあまり無いと見ていた。
並び終えると欄干を降ろし、「船内日本市場」と立札を建てて来船客を待つ
暫くすると現地の商人達に混じって一般の客もチラホラと欄干を上がってきた。
値札を見て考え込む物、物々交換を持ち掛ける者、値を見て溜め息を出す者と様々な者が居る。
商人は特殊案件が無い限り、直接接客はせずに見回りに徹していた。
不意に袖を引っ張られる。
商人
わ、何や何や?
振り向くと香花が笑顔で立っていた。
商人
お、香花ちゃんかいな、昨日ぶりなや
香花は何かが入った袋を何袋か見せる。
商人
お!これは香辛料やないか
袋に書かれた文字を読む
花椒は中華山椒やな、五香粉これは混合香辛料やな、八角これは堺でも稀に見るなぁ・・ん、これは!?ああ、惜っしいなぁセイロン肉桂かと思たけど支那肉桂の一種の桂皮かぁ
まあ、そやけど珍しい物やし、この量やったら欲しい所やな
頷く商人を見て香花は日本酒の樽を指差す。
商人
うーん、どやろ?日本酒が暑さで痛む前に捌きたいんは本音やし、損はせんけどもっと
高値でも行けそうやけど・・・いや、ここが売りやな、よっしゃ取引成立や
大きく頷く商人を見て満面の笑みで日本酒の樽を背負うと背中に縛る
商人
香花めっちゃ力持ちやん
香花は片手でヒラヒラと挨拶すると船を降りて行った。
商人
あれ?昨日は老酒で今日は日本酒って香花酒好きなんか?
香花の家は酒を提供する店、所謂、一杯飲み屋なだけであった。
一品料理に使う香辛料を持って来たのである。
今日より日本酒フェアーでがっぽり稼ぐのであったが商人はそんな事は知る由も無かった。
物々交換した中華香辛料をしまうと昨日の役人三人組がヒーヒー言いながら大きな壺を持ってやって来た。
各自、銭120万枚を持参したようで大きな壺にドサッと入っていた。
手の空いた船員十人に数えるのを手伝ってもらうとピッタリであった。
「壺、返品」と書いて見せると役人達はもう物を持ちたく無いからか首を横に振る。
商人
本来、脇差は付かんけど勉強しとこ!
日本刀を満足気に持つ役人達にサービスで脇差を渡すと役人達は小躍りし、「謝謝」を連呼して帰った。
船員1
大旦那はん、えらい気前ええけど、ええんでっか?
商人
小躍りしたいんはコッチや!
壺の下の名見てみぃ「景徳鎮」の名が入っとるで!
船員2
景徳鎮って何ですの?
商人
焼き物で一番有名で高品質な物作っとる場所の名前や!
持って行くとこ行ったら銭120万枚どころや無いでw
ボロ儲けや!!
船員3
ほー、こんな事あるんやなぁ
商人
これやから密貿易する商人が無くならへんねん。
よし、ボロ儲け記念や、今夜は自由にしーや、銭も台湾より先は使えるかどうか分からへんさかい、使うて来い。
船員達は「やったー」と喜ぶのであった。
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