伊達に国民食では無い!
鼻腔を擽る
前回からの続き
商人は返事待ちで部屋にいると若い侍がやってくる。
若い侍は迎えの者がきてるのでと商人を連れ出し、門の前まで送るとそこからは妙齢の女中に連れられて大きな屋敷に連れて来られると「おお、こっちじゃこっち!」とみっちゃんが待っていた。
商人
みっちゃん殿のお屋敷は大きいんやなぁ
みっちゃん
ん、そうかの?
それより、こっちが台所じゃ!
案内されたのは所謂土間であった、現代ではあまり馴染みの無い下は土で上には屋根があり、建物の一部と言った様式である。
3つ並びの竃の真ん中では炊飯が終わったようで二人の料理番の侍がお釜を移動させてる所だった。
みっちゃんに気付いた料理番達は慌てて挨拶をしようとするのをみっちゃんは「よいよい」と静止し商人にその下駄を使うが良いと急かす。
商人は下駄を借りそのまま土間の台所のチェックを始める。
「鳥屋の近代的な厨房に慣れたら土間の台所ってなんか暗いし、埃っぽいなぁ・・」
とか思ってると女神様が脳内通信してくる。
女神様
懐を探れ!
商人
え、懐でっか?
自らの懐に手を入れると何かがある。
取り出すと風呂敷に包まれた食材であった。
どう考えててもこの量が懐に入ってる筈が無い量である。
商人は左右の視線に気付く
右から料理番の二人、左には至近距離からみっちゃんが目を皿にして懐を探る様に見ていた。
商人
みっちゃん殿、近過ぎて動けまへんって・・
みっちゃん
いやいや、今これが懐に入っておった様だが?
有り得んだろ!
神仏の御加護って本当であったのか!?
商人
え、まあ、そうでんなぁ
みっちゃん
で何をすれば良い?
商人
食材をチャックしながらいつも通りで安心すると「大きな鍋を火にお願い出来ますか」と言うと料理番が鉄の深い鍋を竃の火にかける。
商人
包丁を借りるといつも通りに玉葱を半分の量を細切れにし、残りを適当に切る。
鍋に油を数滴落とすと一口大にカットした鶏胸肉をジューっと炒めていく。
そこに細切れの玉葱を投入し、更に炒めていく。
周りに良い匂いが立ち込め細切れの玉葱が飴色になると同時に鶏胸肉にしっかりと焦げ目が出来る絶妙のタイミングで、芋と人参、玉葱の残りのカットと水をジュワっと入れていく。
料理番の二人とみっちゃんは食い入る様に見ている。
みっちゃん
どう見る?
料理番α
水煮の一種としか・・
料理番β
始めこそ炒め、変わっているかと思いましたが同じで御座います。
みっちゃん
うーむ、これが天竺料理?
沸騰し、アクをある程度取ると切り札のカレールーを入れていく。
みっちゃん
む、今のはなんじゃ!
商人
あ、これが味の決め手で御座います。
この食材となる香辛料等を手に入れる為に琉球を始め、遥か彼方へと考えております。
ものの数分で辺り一面に暴力的な程の香しい香りが立ち込める。
みっちゃん
な、なんと言う匂いじゃ!
料理番の二人は自然と喉をゴクリと鳴らす。
気付けば人が集まってきていた。
商人
あ、匙!
木匙とか有りまっか?
みっちゃん
おお、あるぞ。
商人
あと、みっちゃん殿のお許しがあれば人数分の茶碗など
みっちゃん
構わぬ、それよりも
は、早う致さぬか!辛抱堪らん
商人はお盆に水の入った湯のみ、丼にご飯と鶏かれぃをたっぷりと入れてみっちゃんに渡す。
商人
あっついんでお気を付けてください。ほんまに
みっちゃん
お、おお!解っておる、解っておる。
そう言いながら口を付けると目を丸くして無言で掻き込みだす。
汗を浮かべ、ふー、ふーと息を荒げて
商人は料理番の二人に渡す。
料理番の二人はみっちゃんの許しを待ってる様だった。
みっちゃん
ん、構わぬ、食え食え!美味いぞ
料理番の二人も慌てて食べ出す。
「な!うまっ!」、「これがかれぃなる味!」
商人は次々とかれぃ丼を渡して行く、全員行き渡った時にはみっちゃんがおかわりに来るとそれを見た料理番達を始め完食した者達が我も我もと押し寄せる。
気付くと腹一杯になったみっちゃんが畳の上で大の字になっていた。
「美味かった!初めて食べたが本っ当に美味かった・・まさに東西随一じゃ!」
商人は最後の残りを今更ながら味見をしていた。
「うん、やっぱり美味い!」
汗だくで大満足の完食者達を見る。
「美味いもん出して、喜んでもろうて、腹一杯になって幸せそうになってんの見たら、やっぱり気持ちええなぁ」
残り物には福があるっちゅー事やな!そう呟きながら笑顔で美味しく食べる商人であった。
不定期UPです。
誤字脱字等は小まめに訂正して行きます。
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今回、筆が乗ってしまい長文です。




