火山島
熱き思いに比べれば
前回からの続き
本来なら数日を要する所、一日と掛からずに目的地に辿り着こうとしていた。
火山島を横に眺めて帆をたたみゆっくりと入港する。
陸地には既に港を預かる奉行所の者と思われる侍が二人見える。
ここは錦江湾、沖に見える火山島は桜島、今とは違い陸続きでは無く名前の通り島である。
入れ替わる様に出航した大型船の帆には丸に十文字の家紋が見える。
そう、ここは薩摩藩は鹿児島港である。
島津家は72万石を誇り、外様では加賀前田100万石に次ぐ大大名家の本拠地である。
商人は船を降りる。
何の様だと怪訝な様子の二人の侍に薩摩藩江戸屋敷にて頂いた紹介状を手渡す。
侍 い
む、江戸屋敷のご家老様からの紹介状・・ぬ!将軍様の御命令に従ってとな!?
侍 ろ
将軍家が関わる話であるのなら我らでは荷が重いの
侍 い
解り申した。
鶴丸城まで案内しよう、城にて要件を伝えれば良い
商人は残る侍にお辞儀をし、案内役の侍に付いて行く。
門番に何か伝えると小さいが小綺麗な別室に案内された。
商人は正座をし下座で待っていると誰かが板の廊下を歩いてくる音が聞こえる。
障子の前で足音が止まり「御免」と障子が開けられる。
土下座中の商人の上座に座ると「待たせたの、面をあげよ」と声を掛けられる。
商人が顔を上げると小柄ながらも引き締まった中年の男がいた。
わしは大目付じゃ、その方は「鳥屋」と申したかの・・商人風情が将軍様の御寵愛を頂くとは・・
いや、何でも無い、で、何を所望か?
商人
ははぁ、琉球への渡航と交易所の設置、商いのご許可を頂きとう御座います。
大目付
むむ、琉球とな・・商いとは琉球内だけの話しであるか?
商人
いえ、船を使った海外との商いを含みます。
大目付
・・・うーん、明「※現在の中華人民共和国」の南方やルソン「※現在のフィリピン」、アユタヤ「※現在のタイ」辺りと商いをしたいと言う事か?
商人
うーん、何と申したらええんやろ・・
大目付
?
商人の脳内に女神様の声が聞こえる。
「正直に言っちゃいな!」
商人
目指すは天竺「現在のネパール南部からインドの一部」やガンダーラ「現在のパキスタン」との商いで御座います。
大目付
て、天竺!ガンダーラとな!!
・
・
すまぬ、ちと大声が出てしもうた。
南蛮人が渡来する時代とは言えども、わしにはどちらも極楽浄土や桃源郷の様に思うておるのじゃが・・辿り付けるものなのか?
商人
はい、それは勿論!
神仏の御加護が有りますんで
大目付
将軍家どころか神仏の後ろ盾もあると申すか!?
いやはや、わしには話しが大き過ぎるの
どの道、殿へはご報告せねばならぬが・・参ったのう
商人
難しいでっか?
大目付
いや、将軍家の許しが出ておる以上、断る事は出来ぬが・・ちと、待て
大目付は誰かを呼ぶと茶の用意をさせる。
大目付
わしはご報告に参るゆえ、待たれよ。
そう言うと商人を残し、大目付は部屋を後にするのであった。
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