パリピ上様
実食
将軍様が御成になり、高級料亭の盛善が作る豆腐会席の様々な一口焼豆腐盛が出された後、鳥屋のコロッケ野菜カレーとワカメスープセットが出された。その後にも各料理人が腕を奮って作った料理が続く
味見役の寺社奉行は両サイドを和尚、神主とで挟み、斜め前には役は下だが先輩の目付の台所番を配していた。
ここで寺社奉行は敢えて感嘆の声を出す。
「おお、色鮮やかで様々な味付がありますなぁ!」
目付の台所番
ん、ああ、確かにそうで御座いますなぁ!
これは珍しい!
和尚
精進料理なので拙僧も安心して食べれますなぁ!
神主
神仏にご理解の有る料理でいて、目でも楽しませてくれる!
寺社奉行は一つを摘むとパクリと食べる。
「ほほう、これは美味い!一口で食べれて様々な味を楽しめる工夫がされておる!」
〔よし!ここまでの会話は上様にも聞こえただろう・・ワシに出来るのはこの辺りまでか・・〕
後ろから声が聞こえる。
上様
ほう、爺!
ワシの好物の豆腐じゃ!
老中
おお、確かに!それはよかったですのぅ
寺社奉行
〔豆腐が上様の好物じゃと!?何たる僥倖・・イケる、これはイケるぞ!〕
心の中でニヤリと笑っているとスパイシーな香りが鼻孔を衝く
「ええい、鳥屋の料理か!」とボソっと言いながら手に取り木匙で掬い口に運ぶ
「う、美味いのぅ」と思わず声が出てしまう。
さらに後ろの声に耳を傾けると上様の声が聞こえる。
「おお、待っておったぞ、鳥屋のかれぃ飯!どれどれ・・うーん、美味いのぅ!爺」
「はっ、安定の味で御座いますなぁ」
その後も「鰻の櫃まぶし」、「出汁巻き玉子」、「天麩羅」、「江戸前寿司」、「刺身」、「焼鳥」、「蕎麦」に「饂飩」に「煮物」と様々な料理が出たが仏僧のベジタリアン対応食は天麩羅の海老と鱚と穴子抜きと昆布出汁の蕎麦と饂飩だけであった。
天麩羅は天汁がベジ対応出来ずに塩で食べていた。
他は和尚の採点が付かず実質、盛善の一口焼豆腐の盛り合わせ VS 鳥屋の野菜コロッケの乗った野菜カレーセットの一騎打ちであった。
何やら上様が老中の爺やに耳打ちをしている。
老中が控えていた者に言う
「盛善の味付け無しの焼豆腐を適量持って参れ」
寺社奉行の耳にも聞こえた
「お代わり?だが味無しとは一体?」
暫くすると盛善の一口焼豆腐が運ばれていく
後ろ向いて確かめたいが上様の許しも無く御前を向くなど出来よう筈も無くヤキモキする。
「どうじゃ、爺!仲間内でこう言うのも良いではないか?」
「お、おお!流石は上様!」
一体何をしているのだろうか
侍やお香、他の料理人の目には変な光景が映っていた。
凝視するのは無礼なのだが目に見えてしまう。
上様と老中が焼豆腐にカレーを付けて食べていたのである。
ここで老中の声が出る。
「皆の者、そのまま聞くが良い、焼豆腐にかれぃを付けて食べてみよ!上様の御考案じゃ!美味いぞ、ささ、早う!」
寺社奉行
〔は?・・何を・・いや、やってみるか〕
ほう、コレは美味!
盛善も焼豆腐を大皿に乗せて鳥屋のブースへ行くと「かれぃを!」と言う
気付けば味見役も監視役も料理人も焼豆腐にカレーを乗せたり、チーズフォンデュの様に焼豆腐をカレーに潜らせたりして食べているのであった。
上様の許しが有ったといえ、これでいいのだろうか?そう思いながらもカレーフォンデュに舌鼓を打つ面々
無礼講で皆が食べてるのを見る上様は上機嫌であった。
「こう言うのも良いのぅ、ウェーイ!」
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