縦社会
事の真実
翌日、町人の思惑通りに瓦版や噂で見聞きした耳の早い者を先頭に開店と共に満員御礼状態となった。
注文聞きと配膳は勿論、平田であった。
客達が口々に言う
「おいおい、本当にピンピンしてるじゃねーかい!」
「神仏の御加護って本当何だな!」
「こいつは肖りてぇもんだ」
と、言う事で三蔵法師がありがたい仏教の経典を求めた旅先の天竺の料理として、インド料理のカレーライスが飛ぶ様に出る。
いつもの10倍仕込んだのにみるみる減って行く
食器が足りなくなりお香とおかよは洗い物等に付きっ切りで有る。
侍、商人、町人は捩り鉢巻きをして疾風怒濤のオーダーをこなしていた。
そんな混雑する客の中に一人、ラフな着流しの侍が鶏かつかれぃ飯を食べながら、平田の動きを目で追っていた。
「ほほう、かなり動いているな・・噂は本当であったか」
この着流し侍は先の南町の御奉行様であった。
きっつい取り調べを受けたにも関わらず、戻るや否や神の御加護で怪我が治り、翌日には普通通りに働いている。
その噂の真相を確かめに来たのであった。
南町奉行
どの道、「噂の真相を調べよ!」と上から来るのはわかっているからな。にしても、こいつは困ったな、信じてもらえるかは判らんが上には有りの儘報告しておくか、しかし、このかれぃ飯と言うのは美味いのう
南町奉行は食べ終わると屋敷に戻り着替えると奉行所に出て、祐筆係と共に報告の書状の作成に掛かる。
・・・かの者の噂、真実で有ると認めざるを得ない。
祐筆係
御奉行、これでよろしいですか?
南町奉行
有無、後はわしが花押を入れてっと
出来上がりじゃな、先ずは神仏が関わる事やも知れぬから寺社奉行殿に目を通してもらうかの・・
翌日には城の老中に書状は届き、寺社奉行の「神仏の御加護で間違い御座らぬ」の一筆で老中はそこまで言うので有ればと将軍様に事の真相を報告するのであった。
将軍
ほう!神仏の御加護とな?
聞けばその者、料理の試合に出る店の店主らしいではないか?
老中
は!仰る通りで御座います。
将軍
これは楽しみな事よ
日程の調整を急がせい
老中
ははぁ!早急に取り決めまする。
将軍
その前にこっそりと食べに行って見るか・・
老中
なりませぬ!
殿、自らが城下に行くなど危のう御座います。
将軍
ふー、わかっておる
〔ずっと城だと面白くないのぅ〕
老中
今一度、御注進致しまする。
なりませぬ!
将軍
ああ、わかった、わかった。
もう良い、下がれ
〔冗談も通じぬか・・〕
老中
代わりに私目が見て参りましょう
事細かく御報告致しますので、それで我慢を願います。
〔美味いと評判、これを機に食べて見るかのぅ〕
将軍
・・わかった
〔何でお主だけが行くんだ!連れて行けよ〕
老中は御免と言いながら下がって行った。
将軍
うーん、面白く無いのぅ・・何か気晴らしになる様な事は無いかのぅ
相談してみるとするか
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誤字脱字等は小まめに訂正して行きます。
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