和装
プレス
町人は誰かを連れて来た。
伴ってきた者はかわら版屋の男であった。
かわら版屋
とくダネって一体なんだい?
町人
あんたの耳なら届いてるんじゃねーかい?
かわら版屋
ああ、鳥屋の御主人がしょっ引かれたってのだろ?
町人
で、目の前に居るお師さんを見て、なんか分かんねぇのかい?
かわら版屋
ん?
お!あれ?
やけに元気そうに見える・・
町人
お師さん、上着を脱いでくんな!
平田
え?はい、いいですけど
上着を脱いだ平田を見てかわら版屋は腰を抜かしかける。
「あんた、怪我は?」
取材で拷問を受け解放された事は当然知っていたかわら版屋は目を丸くする。
町人
明日のかわら版はあんたの所が一番売れるって事よ!
「鳥屋の主人、無実の罪できつい取り調べを受けるが放免と共に神の御加護で無傷に!」ってな!
かわら版屋は平田の周りをグルグルと周り、舐める様に見る。
かわら版屋
こいつは・・大変だぁ!!
そう叫ぶと外へ飛び出して行った。
侍
なるほどの、中々やるではないか!
商人
これは、明日のかわら版が楽しみやw
お師匠はんを見にいつもより多くのお客さんで溢れ返りまっせ!
侍
おお、そうであるな
これはいつもの倍、いや10倍は仕込まねばな!!
町人
そう言うこった!
さあさ、仕込みましょうぜ!
平田
ピンチをチャンスに変えた!町人さんやるぅ!
町人
死中に活有りってやつですぜ!
厨房は大量の仕込みで一気に熱を帯びて鉄火場の様に忙しくなる。
おかよとお香も仕込みの手伝いを始める。
・
・
やるじゃん!
神界から見ていた女神様は嬉しそうに呟く
恨み、つらみでは無くプラスに変えるその姿勢!良いよ!ナイスゥ
ふふふ、後は一肌脱いどくか
その夜、寺社奉行の枕元は眩い光に覆われた。
寺社奉行
な!何だ?
その夜の女神様の装いはいつもと違った和装であった。
寺社奉行
はう!
ぼ、観音菩薩様!?
慌てて布団を捲りあげて土下座しながら手を合わせる。
女神様
これ、寺社奉行
その立場を忘れての悪行三昧の挙句、我の加護を受ける平田に無実の罪を被せるとは何事か!?
不正は許さぬ、実力で勝負せよ、次は無いぞ。
寺社奉行は「ははぁー」と頭を床に擦り付ける。
パァーッと眩い光と共に消えた。
寺社奉行は寝惚けたのかと思いもしたが、翌日、かわら版を手に震えるのであった。
後日談として、彼は数年後、息子に家督を譲り、幕府から御役御免を受けると出家し、並々ならむ信心と修行、全国行脚の旅を経て大僧正と呼ばれる様になる。そして、出家前に尋常ならざる体験をしたと言う噂と共に大くの民を助け、導くのであった。
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