幼馴染
妨害工作
とある料亭の奥に2人の中年の男がヒソヒソと話していた。
頭巾を外した侍に料亭の男が酒を汲みながら喋り掛ける。
「御奉行様、何卒、良しなに願います。」
寺社奉行
わかっておる、皆まで言うな。
盛善、任せておけ。
寺社奉行と一流料亭「盛善」の3代目であった。
この二人は寺子屋で子供の頃から知り合いで良い事も悪い事も一緒にした幼馴染であった。
少し年上の侍の子とそれを慕う料理屋の子で有った。
寺社奉行は長兄次兄が英才教育を受ける中、自分はお情けで寺子屋通い・・あまり期待されて無いのも解っていた。
転機は貧乏旗本の三男坊にしては頭が良く、程よく出世欲もあった事であった。
そこに目を付けたのが、先代の2代目盛善だった。
資金援助をし、それを素に幕府の役職に滑り込めたのである。
援助があったからこそ、何とか出世し、寺社奉行の「寺社奉行吟味物調役」にまで抜擢されたのはわかっていた。
恩返しではないが先代が茶屋から会席料理屋になれる様に動ける範囲で動き、幼馴染の三代目が店を継いだ際には、自分の役職を上手く使い「精進料理」を覚えさせ、仏僧や神主等の会合場所になる様に仕向けた。
盛善が一流料亭になれたのはそのお陰でもあった。
盛善
「御奉行様、こちらを」と煎餅の箱を差し出す。
「うむ、いつもすまぬな」と受け取るとズシリと来る重さを感じる。
寺社奉行
盛善、ワシはこれ以上の上は無理じゃぞ、これ以上は家の格もいる。
盛善
いえ、そちらは御子息様に
寺社奉行
ワシの子か?
どこまで行けるかは判らぬが弾として貰っておく、感謝する。
で、「鳥屋」であったかの・・ワシも一度行ってみたが、中々手強いのぅ
とある藩の御隠居や豪商まで抱え込んでおる。
盛善
え、御奉行様ぁ
寺社奉行
情けない声を出すで無い、ワシに任せておけ「鳥屋」以外は敵では無い。
既に吟味役の和尚殿と神主殿、先輩の目付の台所番は抑えておる。
盛善
さ、流石だ、やっぱり兄貴はすげぇや!
寺社奉行
お互いに良い歳だ、兄貴は止めぬかw
策もちゃんと練っておる。
将軍様さえ、「鳥屋」を推さねば我らの勝ちじゃ!
盛善
あ、有難う御座います!
料理の方はどうしましょうか?
寺社奉行
おいおい、料理人が侍に聞くなよ・・しょうがないのう、精進料理で手を抜かなければ良い。
良いか、吟味役に和尚殿がいるのが壺じゃ、わかるな?
盛善
え?・・生臭物は!?
あ、有難う御座います。
寺社奉行
鳥屋は鶏肉ばかりであるからのぅ、ふふふ
まだ、吟味役は発表しておらぬからなw
盛善
いつ、発表で御座いますか?
寺社奉行
ん、ああ、不正が有ってはならんからの、数日前までは伏せてある。
何せ、吟味役の選定にはワシも絡んでおるからのぅw
極秘裏に進めねばのう
そう言うとニヤリと笑って見せる。
盛善
さ、流石です!そこに痺れる、憧れるぅ!
寺社奉行
まぁの!
それに既に「一手」打ってあるからの
「鳥屋」の反応が楽しみだ。
数日後、美食研究会、通称「鳥 屋」に番屋の同心や岡っ引きの総勢5人が取り調べに着ていた。
平田
一体、何の嫌疑ですか?
同心
ん、ああ、虚偽を働いてるんじゃねーかって事だ。
かれぃ飯っての人数分出して貰おうか?
平田は慌てて人数分のチキンカレーを出す。
岡っ引きの一人がボソッと呟く
「入ってやがる・・」
食べ終わると同心が平田に番屋まで同行してもらうぜ!と言う
「しょっ引きな!」
岡っ引き
へい!
そう言うと平田は後ろ手に締め上げられる。
平田
え!?痛っ!ちょ、ちょっと!!
侍
ちと待たれよ、何の嫌疑であるか?
同心
人心を惑わした罪でさぁ、御仏の食べ物と偽り、鳥肉を入れるたぁ、ふてぇ野郎だ!
御仏を敵に回すなんざ、大罪だぜ?
騙された坊主が食っちまって、自責の念に駆られて命を断つ所だったんだぜ?
お侍さん、悪いがこれは町方の事件だ、首を突っ込むのは止めてくんな。
商人
んな、アホな
お品書きにも鶏かれぃ飯って書いてるやないか!
岡っ引き
被害が出てるモンはしょうがねーよ。
それに町中、噂になってるぜ、坊主を騙したって
そう言うと平田は番屋にしょっ引かれてしまったのであった。
町人
大変な事になっちまった・・
おかよとお香は呆然とし、全員見送る事しか出来なかった。
不定期UPです。
誤字脱字等は小まめに訂正して行きます。
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