才長けて見目麗しく情け有り
知勇兼備
大奥内で鷹乃と御局様と女中の三人は話していた。
鷹乃
御局様、御前試合の料理の味利き役として大奥から一名の参加が認められました。
御局様
おお、誠か!
鷹乃
はい、勿論、御局様にお願いしたく存じます。
ここまでは鷹乃の策略通りであった。
外出制限のある大奥では外食にも行けずにモヤる御局様を何とか店主に会わせてあげたく思い、将軍様との夜伽時に大層美味しく珍しい料理の店があるらしいと話しをし、興味を持った将軍様に料理の御前試合を持ち掛けたのである。
そして、味利き審査に大奥から一人の審査枠として御局様の参加を取り付けたのである。
伊達に将軍様の「No1お気に」ではないと言った所である。
御局様
そ、そうか!
有難い、礼を申すぞよ
さらにこれは布石であった。
美味しく珍しい食べ物であるのは解っており、食べれば将軍様も美味かったとなる。
料理御前試合の後の同衾時におねだりして、定期的に大奥まで作りに来させる算段もしていた。
鷹乃は知的で綺麗ではあるが、最大の魅力は甘え上手にして話題上手な所であった。
毎回、楽しく面白い話しを将軍様に提供していた。
将軍も話しだけでもと、指名するのであった。
女中
試合当日が待ち遠しいですね。
鷹乃
とは言っても試合日はまだ決まっておらぬがの
鷹乃と女中は久しぶりに明るい顔を見せた御局様を見て少し安堵する。
女中
「一汁三菜」で競い合うとの事で御座りまする。
どんな料理が並ぶのでしょうか?
気になりますね。
御局様
そうであるか
女中
ん?
鷹乃
試合日が良い天気になると良いですね。
御局様
そうであるか
鷹乃
?・・御局様
御局様
そうであるか
女中
え?あのぅ
御局様
そうであるか
平田に会えると思うと御局様は心ここに在らずであった。
当日の着物は何にしよう、髪を結いなおさなければと色々と考えているのであった。
何にせよずっと塞ぎ込んでいた御局様が晴れやかな顔になったので良しとする二人であった。
当日、平田は来ないのであるがそんな事は思いもしない三人であった。
一方、美食研究会こと通称「鳥 屋」では試合に備えてお香が日替わり板長の下に付いて徹底したサブ業務を行っていた。それに伴い、おかよは注文取りと配膳に集中させていた。
注文が入るとお香は瞬時に判断し定食や食器の用意をし、日替わりの汁物やキャベツ、漬物にソース類を所定の入れ物に用意して、完成に会わせてご飯を盛る。
試合では何人前を作るのか解らないので場数を踏ませておく事で不安を解消させていた。
おかよもお勘定を大人達が補佐の下、始めた。
幸い、ここでの客数は凄まじいので体がドンドン覚えていく、まるで砂地が水を吸うが如く吸収して行った。
順風満帆とまでは行かないが上手く物事が運んでいたが、数日後、恐るべき噂を聞く事になるのだが、今は、誰も予想していなかった。
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