ファッションリーダーの御食事のお供
ファッションモンスター
前回からの続き
やんごとなき方々が店内の一角に鎮座していた。
平田は味噌鶏かつ定食とソース鶏かつ丼、味噌鶏かつサンドを提供する為に厨房を出た。
平田
えーと五番様、お待たせ致しました、味噌鶏かつ定食です!ごゆっくりどうぞ。
二番様、お待たせ致しました、ソース鶏かつ丼とお持ち帰りの味噌鶏かつはさみです、ごゆっくりどうぞ。
店内で嫌でも目立つ異彩を放つ三人の女性が目に付く
〔あー、あれか・・女中さんにお姫様二人?〕
奥のコーナーに5、6人分のスペースに陣取っていた。
周りの客は椅子を押し合って狭い空間で食べていた。
〔うわぁ場所の取り方凄いなぁ、まあ、お香ちゃんとおかよちゃんに提供して貰えば納得するだろう・・クレームにならない様に丁寧に笑顔で接客だな〕
平田は食器を下げに厨房に戻る。
町人
お師さん、どうでやした?
商人
あれは、何言うても通じまへんで
平田
うーん、提供はおかよちゃんとお香ちゃんに行ってもらえればそれでいいんじゃないですかね?
商人
唐揚鶏かつ塩焼かれぃ飯 三丁、あそこの分完成や!
お香ちゃん、おかよちゃん、これ十 〜 十五番にどかっと座ってる人んとこ持ってってや。
平田
ん・・んん!?
ちょっと待って、ちょっと待って、ヤバいって!
そう言うと物置部屋に飛んで行く
侍
ん、どうかしたのか?
町人
さあ?
平田
あんな綺麗な着物はダメでしょう。
ガサゴソと探す。
「あった、あった!」
和服に詳しくない平田でも一目で分かるほどの高級な着物であった。
実際、当の三人はお忍びと言う事もあり、グレードを落としているものの一般庶民が見る機会の無い上物の博多織と西陣織を着ていた。
礼和の世なら数百万円、下手すれば一千万円オーバークラスであり、女中の着物でも100万円に手が届きそうな物であった。
平田
高級な着物にカレーライス・・嫌な予感しかしない。
戻ると、おかよとお香はスタンバっていた。
平田
お待たせ、じゃあ、一緒に行こうか!笑顔で接客ね。
平田の手には折り畳まれた紙エプロンが数枚、握られていた。
三人で提供に行く。
おかよのゆるふわ小悪魔ショートに白と淡いピンクを基調としたゴシックロリータっぽいドレス
お香のロングツインテールに淡い黄緑と黒を基調とした「ボーカロイドの初音ミク」を彷彿させる色合いのメイド服
お客達が「待ってました!」と声を掛ける。
平田
〔他のお客様も一目見たいんだな、二人には極力接客側についてもらおう〕
鷹乃達に提供すると目の前でくるりと回って見せる。
「お待たせ致しました、ごゆっくりどうぞ!」
二人はスカートを摘んでぺこりと頭を下げると引っ込んだ。
鷹乃
・・・可憐じゃ・・
御局様
ああ、もう行ってしもうた。
女中
本当に遥か向こう側ですね・・
鷹乃は男が戻らないのを不審に思い問う
「戻らぬのか?」
平田
こちらをどうぞ!
そう言うと折り畳んだ紙を鷹乃と女中に渡す。
女中
これは?
「説明しますね」
そう言い、紙を広げると前掛けになっていた。
平田
紙のエプ・・えーと、前掛けです。
お綺麗なお着物を汚さない工夫です。
では付け方を実演していきますね。
失礼しますと笑顔で御局様に紙エプロンを着けながら見せる。
鷹乃
ほう・・これはよく出来ておる。
見よう見まねで鷹乃と女中は装着する。
「木匙とお箸をお使いください。お水はおかわり自由です。それではごゆっくりどうぞ。」
そう言うと満面笑みで引っ込み、商人と入れ代わった。
鷹乃
折角御食事処まで来たので、頂きましょう。
女中と鷹乃は木のスプーンでカレーを掬って口に運ぶ
二人は声を失う。
鷹乃
なんと言う味、なんと言う香り!
女中
話題になるのも頷けますね・・
何故が御局様だけは食べずに固まっていた。
鷹乃
あの、どうかなされましたか?
御局様は慌てて「いえ、なんでも」と言いつつ食べたした。
食べ終わると、お忍びになって無い三人は忍ばず堂々と大奥に戻って行った。
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誤字脱字等は小まめに訂正して行きます。
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