甘いは正義
面接
いつもならまだ、寝ている早朝である。
商人と侍は丁稚奉公候補の迎えに出ていた。
町人と平田は面接する為、客席に椅子と机を並べていた。
侍が連れて来る予定の子は侍の家臣の孫で9歳となった女の子との事だった。
商人が連れて来るのは自分の店の次期番頭候補の手代の娘で算盤に読み書きができる、こちらも9歳の女の子であった。
親は女中見習い、丁稚にと考えてるところを引っ張って来るとの事だった。
町人
あっしには良くわかりやせんが、お二人さんが連れて来るってこたぁ、出来た子なんでしょうね。
平田
でしょうね、為人は面接で探って見ましょう
町人
あっしも同席しなきゃなんねぇーんですかい?
こういったのはやった事もねぇんで、さっぱりでさぁ
平田
うーん、将来的に町人さんが店を持つ時には面接は必要となるんで、これも勉強だと思ってください。
町人
自分の店?随分とまだ先だと思いやすが、確かにこいつは勉強にならぁ
そこに「毎度」と商人が女の子を連れて戻って来た。
女の子は緊張してる様だった。
町人
こいつはいけねぇ、お師さん、緊張で震えちまってますぜ!
平田
あ、これはちょっとかわいそうだな。
そこに侍も「御免」と戻って来た。
平田は侍と商人に二人の女の子を座せる様に伝えると
「ちょっと待っててください。」と奥に消える。
侍も商人も連れて来た子の緊張を解そうと話し掛けるが女の子達から見ると親の上司で有り、今日、初めて話すと言う事も有り、更に固くなる。
礼和の世とは異なり、元禄の世はバリバリの封建社会で有り上下関係が厳しいのである。
侍
〔ううむ、参ったのう〕
そう緊張するで無い、別に取って食おうと言うのでは無い。
商人
もっと気ぃ、楽に、な?
〔ちょっと!これはあかんて〕
連れていた女の子は緊張でカチコチに固まっていた。
そこに平田がお盆を持って戻ってくる。
甘い香りが辺りを包む
机の上に人数分の湯気の立つカップを置く
町人
ん、お師さん、こいつは?
平田
ミルクココアと言う甘い飲み物です。
みんなで頂きましょう!
熱いから気を付けてねと女の子達にも勧める。
商人
お、これはごっつい甘もうて美味いもんやなぁ、二人も飲んでみ?
侍
うむ、甘いのう!
美味いぞ、二人共、ゆっくりで良いから飲んで見なさい。
町人は敢えて聞こえる様に「おっ、こいつは甘くて美味ぇなぁ」とオーバーに言ってみせる。
勧められて少女達もカップに口を付ける。
「うわー、めっちゃ甘くて美味しいわぁ!」
「こんなに甘くて美味しい飲み物、初めて!」
感嘆の声を上げ、緊張が少しづつ解けてきたのを見て商人と侍は「ほっ」と胸を撫で下ろす。
ココアを飲みながら自己紹介をする。
平田です・・えーと、店長って呼んでください。
あっしの名は町人でいいって事よ
なら、拙者は侍で良かろう
ほな、わては商人や
少女達に名をきく
商人が連れて来た上方訛りの子は「おかよ」
侍が連れてきた子は「お香」と名乗った。
ここで働くと美味しい物がお腹一杯食べれて、勉強にもなって、仕事が終わったら楽しい事が沢山ある。
そう大人達が伝えると満面の笑みを見せた。
平田
取り敢えず、見習いからやって見ようね、みんなで教えるから大丈夫だよ
そして面接らしからぬ面接は終わり、仕込みと賄い作りに入って行くのを見学してもらうのであった。
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