愛の国
息子
一夜明けて、朝昼を兼ねた賄い料理のブレックファーストとして「ご飯・キャベツの千切り・チキンカツ・味噌汁・お漬物」を食べ終わり開店準備をしていた。
本日は平田が店先の掃き掃除を行った
既に数人並んでいた人々にまだかまだかと急かされる
平田は間も無く開店です今暫くお待ちくださいませと伝えると店内に戻り厨房の準備を確認する。
三人共、準備万端といった所であった。
平田
では、開店します。
暖簾を出して「商い中」と書かれた札を吊るし「お待たせ致しました!」と声を掛けると待ってましたとばかりに客が雪崩れ込んで来た。
客い
鶏かつ定食を頼むよ!後、持ち帰り様に鶏かつのぱんはさみを一つ
客ろ
鶏かれぃ飯にしようと思ったが新しい品があんのかい!?
ええい、その鶏唐揚げ定食ってのを一つおくれ!
客は
なんでぃ!こんちくしょー
新しいのがあんのなら試さねぇ訳には行かねぇな、こっちも唐揚げ定食くんなぁ
客に
唐揚げ定食!?
いやいやオイラは「鶏かつかれぃ飯」が食いてぇから「鶏かつかれぃ飯」を一つ!
皆さん新メニューの唐揚げが気になる様だった。
平田
唐揚げ定食お待ち致しました。
ごゆっくりどうぞ
唐揚げを頼まなかった客が新メニューの唐揚げをジッと見る。
唐揚げを頼んだ客は気にせず唐揚げを口に運ぶ
「カリ、サク」っと音がする
はふはふ言いながら食べて行く
客い・客に
やっぱり美味ぇのかい?
客ろ・客は
美味ぇってもんじゃねーな!たまんねーよ
客い・客に
チキショー、この野郎
夕方にまた食いに来ねぇと!!
それを見た他の入店客が唐揚げを頼みだす。
厨房では町人が唐揚げを揚げまくって、侍が定食の味噌汁とご飯と漬物の準備に掛かりっきりになる。
侍が定食セットを用意し、オーダー分のキャベツの乗った皿をフライヤーの横に並べる。
町人は揚がり次第に油を切ってゆき、油の切れた唐揚げを乗せていく。
侍は乗った分からご飯、味噌汁を入れた御膳を平田に出す。
平田は厨房を出たり入ったりと大忙しである。
商人が一人で他のメニューをこなし、厨房は猫の手も借りたい状態であった。
客から鶏かれぃ飯のオーダーが入る
平田
カレー 一丁!
商人が「はい、かれぃ 一丁」と復唱しながらカレーの提供準備にかかる
商人
はい、かれぃ、お待ち!
平田はカレーをお客様に提供する。
その時、中年の侍だと気付く
〔あっ、昨日のお侍さんの息子さんだ〕
ごゆっくりどうぞ
中年侍
うむ、馳走になるとするかの
〔天竺料理と聞き及んでおるが、どうかの?〕
何とも言えない芳香が中年侍の鼻腔を擽ぐる。
中年侍
これが父上の料理なのか?
薬膳にも似た香りじゃ
木匙を一口運ぶ
中年侍は絶句する。
〔何と言う味、何と言う香り、何と言う辛さ、何と言う旨さ!何と言う複雑な味わい!・・日の本の味では御座らん、これが娑羅双樹の国の味、祇園精舎の味、御仏の味なのか?・・最早、人の創り出す味では無いぞ〕
ううむ、目を閉じれば見た事の無い幻の都ガンダーラの情景が・・
後は無心となり、ただひたすら掻き込む様にして食べるのであった。
現在のお品書き
鶏かれぃ飯 十二 文
鶏かつ ぱんはさみ 十六 文
鶏かつ定食 十八 文
鶏かつかれぃ飯 二十 文
鶏唐揚げ定食 十九 文
不定期UPです。
誤字脱字等は小まめに訂正して行きます。
ブクマからの「しおり」機能をお使い頂ければ幸いです。 空銃