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白銀の少女は深淵を辿る  作者: あいだ
2/3

白銀の少女は太陽を知る

少女は砂浜に立っていた。

照りつける太陽と、絶え間なく寄せては返す波の音。

乱雑に並んだパラソルの群れが、少女の前にあった。


「海だーーー!!」


先程、水底で友人を完食した少女は、初めて外から見る海の姿を堪能していた。


少女は、海とは縁のない、雪の多い北国で生まれ育った。

針葉樹の森の中、木組みのかわいい家が立ち並ぶ不思議な街である。

街のほど近くには大きな魔石鉱山があり、街では古くから魔石を加工した魔石細工が主な収入源となっていたが、鉱山が枯れてからは職人が似た特性のガラスを加工するようになり、ガラス細工の街として名を馳せてきた。

少女は祖父の代から続く工房の娘として生まれ、親の手伝いをしながら地元の小さな魔法学校に通っていた。


のだが。


「結局ここはどこなんだろう…?」


少女は常夏な南の島のビーチに立っていた。

不思議なことに観光客の姿は見えず、ガランとしていた。


「うーん、とりあえず砂のお城でも作ろっと」


少女は海での遊びに憧れていた。本の中にだけあった南国の砂浜がここにある。ならばやることは一つ。夢を叶えるのだ。


「わーーーー!!!裸!!!!!」


突然、誰かの叫び声が聞こえた。振り返ると、そこには黒い髪の少女が立っていた。大きな麦わら帽子をかぶっていて、袖のない珍しい服を着ていた。


「ひゃあ!だ、大丈夫ですか…?」

「大丈夫はこっちのセリフだよ!!なんで裸なのあなた!?」

「さぁ…?気が付いたら裸で生食で海の底でした」

「意味がわからない!!」


現地の少女はどこかへ走っていったかと思うと、白いワンピースと白い帽子を持って再び現れた。


「とりあえずこれ着て!!ここヌーディストビーチじゃないから!」

「よく分からないけど、たぶん事案なんだね!」

「事案っていうか事案予備段階っていうか…」


わちゃわちゃしながら現地のは白銀のにワンピースを着せた。


「あたし、ソレイユっていうの。あなたはどこの誰なの?」

「わたしはノエル。北の街に居たんだけど、気が付いたら海の底にいました」


紛れもない真実なのだが、どうしても意味がわからない。


「北の街…どこ基準の北なのそれ…?」

「さぁ…よくわからないですけど…」

ノエルはふらふらと左右に揺れながら曖昧に答える。

「ねぇ、このお洋服かわいいね!」

「お気に召したようで何よりだけど…街の名前とか分からない?」

「うーん、なんか凄く覚えにくい名前なんだよね…。見れば分かると思うんだけど…」

「自分の街の名前覚えてないの…!?そんなバカな…」

「今バカって言った?食べるよ?」

「食べるの!?」


そんな会話をしていると、遠くからソレイユよりも背の高い女性がやってきた。


「あんた、突然アタシのワンピース持っていってどういうつもり?」

女性はソレイユとは違い、長髪でキリッとした目をしていた。

「あ、この人は私のおねえちゃん。この子はさっき全裸で砂浜で土いじりしてた子。この子に着せたの」

「全裸!?…ていうか、めちゃくちゃ美少女ね…」

「よく言われます」

ノエルは真顔で答えた。



ノエルは、ソレイユと姉が経営しているという民宿に連行されて、事情聴取を受けることとなった。

作ってもらったタコライスという食べ物を食しながら、ノエルはソレイユに大方の事情を話した。


「(これ…タコ入れ忘れたのかな…?)」

「なるほど…気が付いたら海の底に居て?カニやらタコやらを食べながらここまで来たと…?」

「タコはいいヤツでした」


ノエルはタコとの楽しい旅を思い出していた。

終わってしまった短い旅を。

タコはもうどこにも居ないのだと、タコ抜きタコライスを見ながらノエルは思った。


「いいヤツなのに食べたの?」

「美味しかったのでつい…」

「え、こわ」

「へへ…」

「全部怖いわ」


ソレイユの姉がドコドコと階段を降りてきて告げた。

「地図、持ってきたよー」

「あ、ありがとうございます!」


机の上に広げられたロール気味の地図には、ノエルにとって未知の島々が描かれていた。


「??????」

「どう、ノエル…?思い出せそう…?」

「私の知ってる地図はこんなに海広くないデス」

「…となると、こっちか。」


次に広げられた地図は、大きな一つだけの大陸が描かれた世界地図だった。

「あ…ここらへんかも知れない…!」

ノエルが指したのは…世界地図の北の北、大陸の北の海岸線だった。

「ぅえぇーーーー!?遠くない!?!?ウチこの辺だよ!?」

ソレイユが指したのは赤道直下の島々だった。

「こりゃ9000キロくらいあるね…どうする…?」

空を飛ぶ乗り物がホウキくらいしか存在しないこの世界で、9000キロもの距離を旅するなど前人未到だ。しかし。


「帰りたい」

「ノエル…」

「わたし、ネヘトサハエノヴェラリドリンスクに帰りたいよ…!!」

「確かにそれは覚えてられないわ…!」


ソレイユの姉は少し考えた後、こう言った。


「まぁ…ノエルちゃんに出会ったのも何かの縁だし、できる限り帰宅に協力したい」

「ソレイユのお姉さん…!!」

しかし、ソレイユの姉はすぐに眉をひそめた。

「ただ、流石に旅費の全てを出してあげるのは無理だ。なにせ9000キロもあるからね。ホウキで飛ぶのは厳しい。それと、これだけの距離だと速い馬やらラクダやらを使っても相当な時間が掛かるし、その間の食費も馬鹿にならない。船を使うにしても相当な遠回りで危険な航海になる」


「それなら…海底を歩くのはどうですかね?」

「え…?」


ノエルの言葉に一瞬時が凍りついた。


「わたし、何故か水の中で呼吸が出来るみたいなので!それに、海の中なら魚とか貝とか食べ物もあるし、なんとかなるんじゃないかなって!」

「いや、それは…ちょっと厳しいんじゃないかな…?」

「どうして?」

「いや…安全面もそうだし、魚の居ない海域も相当続くと思うよ。アタシは漁師でも海洋学者でもないから詳しいことは知らないけど…」

すると、ソレイユがふと思い出したように言った。


「ミクモ博士に聞いてみようよ!」





・ソレイユの姉はコライユという名前ですが、出すタイミングがありませんでした。

・世界地図としてはアメリカ大陸、アフリカ、オーストラリアとその周りの大きい島々が存在しない地球のような感覚です。大体ユーラシアと東南アジアで出来てます。ノエルちゃんは東南アジアにある架空の島の北側にスポーンして、前回までに南に泳いで島にたどり着きました。最終的にはシベリア北端の小村に帰りたい感じです。


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