好きな人の『ネットの大親友』とやらが私なんですけど男だと思ってる!?
色々試したかった実験作です。
「は~っ!今週も神回だった!」
清楚系の黒髪ストレート。学校では落ち着いたJKと思われている私は大好きな深夜アニメをリアタイ視聴してベッドに倒れ込んで、暗い部屋の中でスマホからSNSに感想を書き込む。
『展開マジ最高!はるみんのおっぱいもマジ最高!』
『わかる超良かったわーー!!』
『いつも返信はえーよwww』
クラスでは見せない私の一面。深夜アニメを見てSNSで感想とおっぱいを叫ぶ!くぅ、この瞬間のために生きてるって感じがするね!
ネット上では同士も叫ぶ、本音で話せる仲間がここにはいる!
ピコンピコンピコンピコンピコン
スマホから5連続で通知音が鳴る。見ればいつものようにDMで『あ』『あ』『あ』『あ』『あ』と送られてくる。送り主は特に仲のいい『猫しっぽアルファ』さん。…ほんとなんなんだろうこのDM。この奇行だけは本当に謎センス。
『どうしたα?いつものか?』
『鼻からバナナ食うゴリラさん…感動で泣きすぎてツイートできない…』
『俺とのDMは心の声の会話じゃないんだが??』
妙な所がズレているネットの友人と、よくわからないやりとりからアニメの感想をダベる。明日に引きずらないよう深夜2時を回る前には床に就いた。
「聞いてくれるか海老塚」
「どうしたの泉くん」
翌日教室で隣の席の男の子。剣道部の生真面目な泉くんに相談をされた。
泉君はなかなか人に弱みを見せられないタイプなのだが、それに気づいた私は自ら相談役を買って出たことで彼が唯一気を許せるポジションにいる。
どうして気づけたのかって?好きだから目で追っているうちに気づきましたえっへん。
ちなみに私は学校では落ち着いた子ムーヴをしています。
泉君は声を潜めるように耳を貸せと私を手招きする。
おやおや接近を許していいのかい?ドキドキしてもっと好きになっちゃうぞ?
「実はネット上で絡む親友がこのクラスにいるかもしれないんだ」
「へー生真面目な君がネット上で親友ができたのか」
「ああ、鼻からバナナ食うゴリラさんって人なんだが…」
「へ、へぇ…泉君は何て名前?」
「猫しっぽアルファ」
鼻からバナナ出そうになったけど私の表情筋よく頑張ったよ。
「どうしてその人が同じクラスだと?」
「鼻から…予測変換だと全部出るけどフルネーム面倒だな。バナナさんはネットリテラシーが甘くてしょっちゅう時間割の話をするんだけど俺と全く一緒なんだよ」
「それでもしかしたら同じクラスだと?」
「いや、学校からすぐの総菜屋でコロッケ買い食いしてる写真あげてたからほぼ確実に同じクラスだと思う」
インターネット怖っわ。
しかしどうしようか。好きな人が私の事を大親友だと言っている。運命か?
ここでスマホからアカウントを見せれば私の位置は相談役から大親友になるんじゃないだろうか?
いやいやもしかしたら恋人にだって… 探りを入れてみよう。
「泉くんはその人と会えたらリアルでも大親友になれると思う?」
「もちろん!それだけは胸を張って断言できる」
「でもさ…どんな人か分からないじゃない?」
「そうだな…言動から見て男子じゃないかとおもうんだが…」
おおっと名乗らなくて良かったかもしれないぞ?そういえばTwitterの私は一人称が『俺』だった。
男だと思ったら女の子でしたーではびっくりしてしまうだろう。
下手に正体を明かすとびっくりして距離感が変わってしまうかもしれない。
「ネットじゃ相手が男か女か分からないじゃない?どうして男だと?」
「おっぱい大好きなんだよこの人」
…今日は良く表情筋が活躍する日だなぁ!ごめん、言えない…それ私って言えない…
「へ、へー。変わり者みたいだけどそれでも大親友になれそうなの?」
「ああ、出来る事なら会って。一緒に俺の部屋でアニメを見たい」
きゃー!泉くんのお部屋で隣同士に座ってアニメ視聴!?DVDとかだよね?まさか放送時間の深夜に一緒ってことじゃないよね!?も、もう少しだけ踏み込んで聞いてみよう…!
「もしさ…女の子だったら恋愛対象になると思う?」
「ええっ、絶対男だと思うんだけど。そうだな…この人以上に俺と話が合う人なんていないだろうし…そういうこともあるかもしれない」
ここここれはチャンス!一世一代のチャンス!泉くん、実はね、それはわた…
「いや待てよ?一緒に俺の部屋でアニメを見ながらおっぱいの話してくる女子…困るなぁ」
「えっ!?どこに問題が?」
女子に向かって平然とおっぱいおっぱい言っていた泉くんが恥ずかしそうにしている。なんだちゃんと恥ずかしいとか思う気持ちあったのか。そうだよねー異性と同じ部屋とかさすがの君でも意識しちゃうよねー。
そう思う私の遥か上をいくように、恥ずかしがりつつも真面目な顔をして泉君は言った。
「男として色々止められなくなるかもしれない」
はい!無し!まだ教えるのやめとこう!健全にね、健全にいきたいんですよ私は。
思わず身の危険を感じて後ろに下がってしまいそうになるが変に勘ぐられるのもよろしくない。
危ない危ない。まだ相談役でいよう。そしてTwitterでは今まで通りに大親友だ!ふふっ、Twitterじゃ私は仲のいい友達って認識していたけど泉君は大親友だって! 一方的に正体を知っちゃったからこれからどう接しようかなぁ…おっと表情筋が緩みそうだ、もう少し耐えてくれよ。
「そうだ、DM送ってみりゃいいじゃん。5連あああああっと」
ピコンピコンピコンピコンピコン
音はずいぶん近い場所から聞こえた。うん、私のポケットからだね。
ピコンの3回目あたりでシーンと2人の間の音が消えた。
4回目、5回目はとてもよく響いた。
「えっと…無事を保証してくれるならぜひ部屋に遊びに行きたいなぁって」
そう聞く、私の顔はきっと引きつっていただろう。
リアルの私が大親友や健全な恋人関係ですむのかは…この正直すぎるスケベな泉君次第なのだけど、その選択を彼に任せてしまうのは惚れた弱味だ仕方ないね。




