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会議

 最終転移を前にして、リンダはデュークとダラスと共にブリッジで星図を睨んでいた。空間転移を始めたら、もう、どこの座標に転移するかは変更できない。

 通常ならば、目標の最短距離になる位置を選ぶが、今回はそういうわけにはいかないだろう。

 恒星エレメンは、G型で、黄色みを帯びた星だ。惑星は四つ。名前は、まだ決まっていない。人類生息可能な星は、第三惑星で、衛星は二つ。

 いわゆる地球型の岩石系の惑星は第一から第三惑星で、第四惑星のみ、いわゆる天王星型の巨大氷惑星だ。

 惑星改造が可能とされているのは、第一と第二。連邦宇宙局の初期データによれば、第四惑星の衛星の一つがあげられている。

 第四の外の軌道上に、かなり広い小惑星群があって、航路的にもともと難易度が高い星系だ。

 そして第一から第三までの惑星の公転軌道が非常に近い。

 星系としての開発には非常に便利だ。

 プラナル・コーポレーションからの情報によれば、現在は開発拠点である第三惑星にスタッフが常駐していて、第一、第二の衛星軌道には、惑星改造用のステーションが既にあるらしい。

「ダラス、どこから入るのがいいと思う?」

「そうですね。第三惑星の軌道面に対して垂直に入って行くのが一番、良いかと。小惑星群もある程度避けられますし」

 ダラスの意見は正論だ。

 小惑星群は惑星の公転軌道面の垂直方向には少ないと報告されている。

 逆に言えば、軌道面に対して水平に侵入すれば、小惑星群の数が多い。当然航行の難易度は上がる。

「デューク、海賊が狙うとしたらどこだと思う?」

「小惑星群もあり得ますが、惑星の軌道上、もしくは、惑星に着いてからだと思います」

「そうよね」

 リンダも頷く。

 空間転移から出た直後の場所も狙われたら危ない箇所ではあるが、トレースをしない限り、正確な位置を予想することは難しいだろう。小惑星群も、コースがわかっていれば絶好の襲撃地ではあるけれど、確実性には欠ける。

 そうなると一番待ち伏せしやすいのは、目的地の惑星周辺だ。

「ですが、俺が全ての事情を知っている海賊だとすれば、俺たちが立ち去った後、惑星改造が始まる直前を狙いますね」

 デュークは口の片側をあげた。

「理由は?」

「俺達は、簡単に負けませんし、惑星改造用の衛星の位置は簡単にわかります」

「それはそうね」

 リンダは苦笑する。

 デュークの答えは単なる自惚れではない。

 猫丸号の性能は、軍用機には劣るものの、宇宙海賊に引けをとるようなものではない。火力もそれなりに備えているし、迎撃機もある。

 宇宙海賊が猫丸号を標的にするにはそれなりの覚悟が必要だ。

 単純にラマタキオンを狙うのであれば、三毛猫商会が手を引いた後の方が圧倒的に確率が高くなる。プラナル・コーポレーションの惑星改造の衛星がどこまで武装しているかによるが、イリアの情報によれば、それほどの武装はしておらず、またスタッフも荒事のプロはいないようだ。

 どう考えても、どこから現れるかわからない猫丸号より、どこにいるかははっきりしている衛星を狙う方が楽だ。

「そうはいっても私の勘では十中八九、第三惑星に入る前に一戦交えると思うわ。それに海賊に見立てた、プラナル・コーポレーションの反対派からの襲撃だった場合は、違ってくるかもしれないけれど」

 宇宙海賊はたいてい気が短い。計算高く立ち回る者がいないわけではないが、目の前にお宝があるというのに、ただ、時を待てるという奴らは少ない印象だ。

 ラスカラス星域のことから考えて、海賊たちに情報が流れているのは間違いない。おそらく情報源は、プラナル・コーポレーション内部からだろう。

「反対派?」

「そう。その場合は、そいつらはサンダース氏の失脚を狙いつつ、ラマタキオンは自分達の手に入れたいって考えるかもしれない。そういう奴は、かなり用意周到に動くわ。単純に欲で動かないからやっかいね」

 リンダは顎に手をあてて、ため息をついた。

「それは、既に海賊とは違うのでは?」

 デュークは眉間にしわをよせる。

 そういう奴らは海賊とは全く動きが違って狡猾だ。対応の仕方が全然違ってくる。

「そうねえ。ただ、絶対じゃないわ。そういう可能性もあるってことよ」

 リンダは肩をすくめる。

 そもそも海賊が待ち構えているということですら、絶対ではない。ただ、ラスカラス星域で襲われたことから考えて、猫丸号を狙っている一派はいるだろう。

 できるだけ多くの脅威に備えておくに越したことはない。

「そうだとすると海賊より厄介ですな。場合によってはラマタキオンを奪うことより、船を沈めようとするかもしれません」

 ダラスは顎に手を当てて苦い顔をした。

 船を沈める気ならば、火力で圧倒すればいい。停船させようとするより、攻撃する方は簡単だ。

「海賊じゃなくて、傭兵だよな」

「まあ、どっちも違法な奴らだけどね」

 呼び名が違っても、やることはほぼ変わらない。

「第三惑星に一番近い小惑星帯に入って様子を見るってのはどう思う?」

「社長は、相変わらず堅実ですね」

 くくっとデュークが笑いをこらえる。

「それはどういう意味かしら?」

 ベストな選択をしているはずなのに、なぜ笑われるのかリンダには理解できない。

「それでいいっていう意味ですよ」

 ダラスがにやりと口の端を上げた。



 

 

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