プロローグ5
長かったプロローグも次で最後です
「ねぇ。こっちとこっちどっちの方が似合う?」
青と、黄色のワンピースを交互に自分の体に当てながら彼女は問う。
この手の質問は、相手側では決めているが背中を押して欲しいときなどによく言われるらしい。
昨日みたブログ曰く、正解すれば好感度と機嫌が上がるボーナス問題だが間違えれば不機嫌になる上に好感度も下がるという究極の問題である。と書いてあった。
初めての彼女。初めてのデート。
舞い上がっていた俺は昨日の夜にいろんなサイトを漁り、デート知識を身につけていた。
『そんな究極の問題の見分け方』に書いてあった相手の視線と自分の直感で決める。という結局勘かよ。なんて思っていたが、前文が非常に重要であった。
暁月さんがわかりやすいだけかもしれないが、視線はずっと青に向いていた。
俺が、「元がいいからどっちも似合うと思うけど……こっちかな」と、青を選択すると、「私もそっちがいいと思ってたの!」と、顔を明るくさせる。
よかった。大正解だ。
青のワンピースを手にレジへ向かう彼女の背中を見て、ホッと安堵のため息をついた。
♢♢♢
俺がトイレに行き、帰ってきた時のこと。
暁月さんの周りに、大学生くらいだろうか。チャラチャラとした男たちが群がっていた。
俺は、暁月さんの容姿のことだ、ナンパだろう。とすぐに気づき小走りで彼女の方に向かう。
「ねぇ、君一人? 俺らとあそばね?」
「すみません、彼氏を待っています」
「まじかー、可愛いもんね。そりゃ彼氏もいるか」
「彼氏持ちなら諦めようぜ?」
「でもこんな可愛い子他にいないぜ?」
「多分俺ら、女子を顔でしかみないから彼女が一回もできたことないんだぜ」
「おま、それは言うなよ」
「「「はぁ……」」」
そんな会話が聞こえてくる。
ヤンキーではなくてよかった。と思い、少し余裕を持って暁月さんに話しかけた。
「ごめん遅れた。大丈夫だった?」
「うん、なんか予想以上に聞き分けのいい人たちだった」
と苦笑する暁月さん。
そしてその問題の彼らだが、俺に話しかけてきた。
「「「師匠!!」」」
「し、ししょう?」
困惑する俺に彼らは矢継ぎばやに声をあげる。
「師匠みたいなTHEインキャがどうやってそんな可愛い彼女を作れたんすか」
「師匠、俺にも教えて欲しいっす」
「師匠俺も彼女できるっすかね?」
俺は聖徳太子でもなんでもないので全然聞き取れなかったが、彼女が欲しい。という彼らの熱意(?)だけは伝わった。
だが俺も初めての彼女。
それも向こうからの告白。
とりあえず、『性格ですかね......』と曖昧な返事をすると、
「「「ありがとうございます師匠! 俺ら頑張ります!」」」
と言って去っていった。
結局なんだったんだ。
少し気まずい雰囲気ながらも、彼女と顔を見合わせ笑った。
日も暮れ始め、終わりが近づいていた。
デパートを出て
「今日は楽しかった。ありがとな」
「うん。私も楽しかった」
「また行こうね」
「うん」
と言葉を交わす。
心なしか暁月さんが寂しい笑顔を浮かべている気がした。
♢♢♢
プルルルルル。
けたましく鳴り響くスマートフォンを開き、電話に出る少女。
「もうデートもしたらしいし、明日嘘こくだったこと言っていいよ」
「あのさ、そのことなんだけど……」
「どうしたの? ななみん」
「その、彼とてもいい人だったからそんな悲しませなくてもいいかなって」
「なに? まだ付き合うってこと?」
「う、うん」
「わかった。いいよ。ラブコメみたいだね。嘘こくからの出会い」
「ほんとに!? ありがとう!」
「うん。じゃあね」
「うん。ありがと!」
ツーツー。
電話が切れたあと満足そうな顔で少女はベッドに向かった。
別の個人チャットにて。
「暁月、あのクソインキャに恋してるっぽいんだけど爆笑」
「まじ? 草生える」
「こんなのぶっ壊すしかないよねww」
ほんとにテストが近づいて来たので出せない日が出るかもです
その場合は本当にすみません