プロローグ2
五時間目が終わり、今日はあと数学の授業だけ。
そんな時のことだった。
「ねぇ村山くん。今日の放課後って空いてるかな?」
「ああ。空いてる……けど。どうしたんだ?」
「今日の放課後屋上に来てくださいっ!」
俺に声をかけてきたのは、学年一の美少女と名だかい娘。暁月七海さん。彼女は少しばかりウェーブのかかった澄んだ黒い髪の毛を胸元にかかるほど伸ばしており、お淑やかを想像させる容姿だ。
用件を伝えた彼女はスタコラと去っていった。
どんな用事なのだろうか
俺とはかけ離れた存在だ。変なことは起きないだろう。
「ヒューヒュー。羨ましいこった。村山くんよ?」
「なにがだよ。寿人」
「放課後に屋上つったら、一つだろ」
屋上……一つ。
最近読んだ小説のせいで一瞬自殺を連想するも、俺を呼ぶ意味がわからない。
「ま、まさか。そんなはずが……」
こ、ここここ、告白……!?
なんて思った俺だが、即否定される。
「だよな。そんなはずないか」
「うんうん。まさかな。ってぅおい!少しはあり得るだろう」
「あの暁月さんがお前のことを好きなわけないだろ」
「ま、そうだよな」
流石に、あの暁月さんに限って……。
羨ましいとか言ってるが俺からしたら、かわいい彼女をもってるおまえのほうが百倍うらやしいがな。
ただ、とんだ爆弾を落とされたものだ。期待はしていないが、そのことばかり頭を巡ったせいでろくに授業をうけられなかった。
♢♢♢
授業も終わり、教室の掃除、そして長ったるい先生のお話も終わり放課後に入った。
告白にしろ、そうでないにしろ、彼女いない歴=年齢な俺には、そもそも美少女と一対一というだけで荷が重い。
「ほら、行ってこいよ祐馬」
「ああ。告白ではないと思うが、俺を呼ぶということは何かあったんだろう」
そう結論付けた俺は、色々なことを考えながら屋上への階段を登った。
ドアを開けたらいかつい男が何人もいて、カツアゲされちゃいました、てへぺろ。なんてことはないと願っている。
あり得ないか。
屋上への扉の前に着く。
心臓の音がどくどくと聞こえる。
なんどもいうが、別に告白を期待していなかったにしろ、女子と二人きりというだけでドキドキするのだ。
ひんやりと冷たいドアノブを回し、
ドアを開ける。
肌触りの冷たい風が轟々と、俺の元へと吹き込まれてきた。
暁月さんは、風に長い髪を靡かせ、捲れないようスカートを手で押さえていた。
「ーーーーーーー」
口をパクパクさせている、何か言ってるんだろう。
風が強くて何も聞こえない。
とりあえず彼女の近くまで行き、声をかける。
「ごめん、風が強くて何も聞こえなかった。もう一回言ってもらっていいかな?」
そういうと、大声で叫んでいたのに聞こえてなかったことが恥ずかしいのか、顔を真っ赤にした。
ゆっくりと口を開き話し始めた。
「えっとね、まず、来てくれてありがとう。それで、その……呼んだ理由なんだけど、言いたいことがあって……」
さらに顔が真っ赤になる。
話すうちにどんどん下を向いていく。
なんか、もっと真面目でビシッとしたイメージだったのですごく萌えた。
かわいい……。
言いたいことって何だろう……。
思いつくのは、気持ち悪いから視界から消えて欲しい。か、彼女いるけど寿人を好きになってしまったから手伝って。とか?
いや、俺悲し。
自分で言っておいて、泣きそうだ。
前者だったら泣く。泣いてやる。
少しでもキモさが消えるようマスクもつけて、前髪も校則違反なあたりまで伸ばしてるってのに。
「言いたいこと、か。なにかな?」
なんでもこい。と腹を括った俺は、暁月さんが返事を待ってそうだったので返す。
暁月さんは、バッと俺の方を見て、叫ぶようにこう言った。
「わ、私と付き合ってください!!」
「………へ?」
大きい声でさはれ、と言った様子で叫ぶ暁月さんから出てきた言葉は予想外の言葉だった。
もし告白だったらな。なんて思うが、ありえない。と思っていたために素っ頓狂な声をあげてしまった。
「だめ、ですか?」
下を向きながらいう彼女。
ダメなわけないだろう
「い、いや、もちろんこちらからお願いしたいところなんですけど、ほんとに俺なんかでいいんですか?」
「い、いいの? よかった、よかった。ありがとう!」
彼女は安堵の表情を見せる。
彼女の告白を振る男子なんてそうそういないだろうに。
なんて回想してみるが、心臓がバックバクだ。
俺に彼女ができて……?
その上その彼女が超美少女……。
夢かよ。夢だとしたら覚めないでくれ……!
この時は嬉しさが勝り、気付いていなかった。
"俺なんかでいいのか。"その質問には答えていなかったということに。
なるべく毎日21時に更新します。
できなさそうな日は活動報告であげるかもしれませんが、ないかもしれません。
テストが近いのです汗
なるべく急ぎます