婚約破棄に至る病
出典:フリー百科事典『貴記ペディア』
【概要】
婚約破棄に至る病 (こんやくはきにいたるやまい)とは、主に王位継承権を持った王子だけに発症し、思考、知覚、感情、言語、自己の感覚、および行動における他者との歪みによって特徴付けられる症状を持つ、極めて限定的な精神病の一種です。
王国では3051年まで無能王子病と呼称されていましたが、3052年より正式に婚約破棄に至る病と改称されました。
【症状】
多くの場合、婚約者との初対面を行う頃から症状が現れるようになります。
初期症状は婚約者に対する理由・根拠のない嫌悪感や被害妄想です。実際の婚約者の容姿や性格、言動に関係なく「非常に不細工、冷たい氷のような目、女性らしくない体つきをしている」「真面目で融通が利かない、可愛げがない」「つまらない話や説教ばかり繰り返す」などといった不快な印象を覚えるようになります。
症状が進行するにつれ、婚約者以外の女性が悉く魅力的に感じられるという思考障害、また彼女達に対する性的倫理観の欠如、及びそれによりもたらされる性的行為(具体的には耳元で愛を囁く、腰に手を回す、髪を撫でる、キスなどの行為を公衆の面前で行う傾向が見られます)なども確認され始めます。
またこれらの奇行は、特に学園への元平民の編入生に対して行われる割合が非常に高くなっています。
更に部分的な学習記憶能力の低下により、自らの立ち居振舞いが立太子に及ぼす影響や王族の安全のために監視・報告を任務とする機関(通称:王家の影)の存在について考慮することができなくなり、婚約者以外の異性の言葉を妄信的に正しいと感じるようになります。
末期症状では、ほぼ確実に婚約者以外の特定の女性に愛を誓い、婚約者に婚約破棄を宣言することになります。多くの場合、学園の卒業パーティーなどの衆目環視の場を選んで宣言を行おうとすることも、症状の大きな特徴です。
【原因】
発病メカニズムは不明であり、明確な病因も未だに確定されていません。王族に限定して発症することから遺伝病の一種ではないかとみられていますが、仮説の域を出ません。
【検査・診断】
チェックシートによる検査が有効です。30の異なる症状につき、1点から10点までの得点をつけます。最低点は30点、最高点は300点です。210点以上の場合、婚約破棄に至る病の発症者であると診断されます。
【予防】
根本的な予防策は見つかっていませんが、症状の特殊性から政略結婚制度を撤廃することで発症を防ぐ試みが各国で行われており成果を上げています。ただし、自由恋愛の結果により婚約した場合は発症しないという明確な調査結果は未だ発表されていません。
【治療】
一度発症した患者の治療は極めて困難です。末期症状まで進行し、婚約破棄を宣言した後は当然廃嫡などの処分を受けることになりますが、同時に全ての症状の消滅が確認されます。それにより元婚約者に復縁を迫る例も後を絶ちません。研究者の中には、この行動まで含めて症状の一種なのではないかと推測するものもいます。
また、過去にこの特性を利用して、症状の進行前に敢えて婚約解消を行う治療法も試されました。実際に解消後には症状の緩和が確認されましたが、再び婚約すると同時に再発してしまいました。
現在では対症療法としての薬物治療の研究が進められています。
【歴史】
3049年に起きた世界各地同時多発婚約破棄事件をきっかけに、王子の婚約破棄が一種の精神病であるのではないかという研究が始められました。(世界各地同時多発婚約破棄事件についてはリンク参照)
当初は「無能王子病」という呼称が一般的でしたが、研究が進むにつれて王子の意思や知能に一切関係なく発症することが判明し「婚約破棄に至る病」という病名が使われるようになりました。
【参考文献】
マニュアル
・王国精神医学会(3052), 婚約破棄に至る病の診断と統計マニュアル, (第三版).
・王国精神医学会(3060), 婚約破棄に至る病の診断と統計マニュアル, (第四版).
臨床ガイドライン
・王位継承者の精神病と婚約破棄に至る病:治療と管理 (レポート). 世界保健医療機構. (3058).
その他
・3054年『僕は何故平民になったのか』 アラン・アルヴィエ 王都社
・3054年『王子に婚約破棄されて最終的にめちゃくちゃ幸せになった件www』イザベラ・フォン・シャルパンティエ 帝都社
【関連項目】
・冒険者パーティー追放に至る病
・幼馴染NTRに至る病
【外部リンク】
・婚約破棄に至る病 – 世界保健医療機構
・王国福祉健康医療連合会
・王族支援のページ (3058年度 独立行政法人福祉厚生医療機構 社会福祉医療振興助成事業)