#136 折衝
「……行くか」
「ええ、参りましょう」
私は2人を従えて、向こうの艦に乗り込む。その2人とは、一人が幕僚のソロサバル中佐、そしてもう一人が、船務科で長距離レーダー担当の女性士官、リオル准尉だ。
担当の長距離レーダーが破壊されてしまったため、仕事がなくなったということもあるのだが……それ以上に、私とはただならぬ個人上のつながりある間柄でもある。武器の携行など認められない場所に向かうわけだし、少しでも警戒を緩めるには、女性士官を混ぜた方がよいのではないかとも考えた。
さて、通路を歩き切って、向こう側のハッチの前に立つ。ノックしようと手を伸ばすが、この先に待っている私の果たすべき役割の重さに、思わず手が止まる。
「ねえ、アレハンドラ。まさか、怖気づいたの?」
リオル准尉、いや、カルロータが非番時の時のように、ため口で私に語り掛ける。
「そうだな……否定はしない。それよりもカルロータ」
「なあに?」
「この先は、そういう態度はなしだ。私とお前は、今は指揮官と、一介の士官。そういう関係であることを肝に命じておけ」
「はっ!承知いたしました、ビスカイーノ准将閣下!」
本当に、大丈夫だろうな?准尉が准将にため口でしゃべっているとばれたら、この先に待つ地球001の連中に見下されかねない。今後の交渉にも、大きく影響する。それだけは、絶対に避けねばならない。
私はカルロータ……じゃない、リオル准尉の方を確認すると、ハッチをノックする。すると、ハッチが一気に開く。
正面には、数人の武装した兵士らが現れる。我々3人に、一斉に銃を向ける。
「私は、第12小隊司令、ビスカイーノ准将。ごらんのとおり、丸腰だ」
私は両手を上げて見せる。同様に、ソロサバル中佐もリオル准尉も、それに倣う。その3人の身体を、さっとチェックする兵士達。
「チェック完了!失礼いたしました、お通り下さい!」
と、兵士全員が銃を納め、通路の両脇に整列して一斉に敬礼する。私は返礼で応え、その間を通る。
と、その向こうに、3人の人物が出迎える。こちらを見るなり、敬礼する。
私は、その真ん中の人物に目がとまる。飾緒付きの軍服のその人物。明らかに、将官クラスの人物だと分かる。つまりあれが、ロングボウズの司令官、ということになる。
意外なほど、若い。いや、私も異例の若さで准将に昇進したが、その私と同じ年代の人物。そんな人物が、この未知の兵器や機関を搭載した艦の艦隊を率いているというのか?
そして、その人物がついに、口を開く。
「ぼ……小官は、地球001、第8艦隊司令、ヤブミ准将だ」
やはり、この艦隊の司令官だったか。しかも、中小隊ではなく、艦隊と名乗った。たった500隻で艦隊を名乗るとは、やはりロングボウズがそれだけ特殊な艦隊であることが分かる。
「私は地球023、第2艦隊、第12小隊司令、ビスカイーノ准将だ」
地球023と聞いて、一瞬、眉を顰めるのが分かる。それはそうだろうな。あちらから見れば、宿敵中の宿敵。そんな星の人物が今、目の前にいる。
が、それはこちらも同じだ。殲滅すべき相手として刷り込まれてきた、地球001の人物と今、こうして相まみえることとなった。
「ようこそ、我が旗艦、0001号艦へ。これより艦内へ、案内いたしましょう」
准将自ら、私を手招きする。そして、すぐ奥にあるエレベーターへと向かう。
その准将の両側には、2人の軍人がいる。一人は飾緒から判断して、佐官であることが分かる。おそらくは、幕僚だろう。その横には背の低い、金髪で眼鏡をかけた女性士官らしき人物。だが、どういうわけかこの人物、何かツボのようなものを抱えている。どういう意味があるのか?
6人を乗せたエレベーターは上昇する。この辺りの作りは、我々の駆逐艦と何ら変わりなさそうだ。途中、エレベーターのドアが開き、向こう側から女性士官が現れる。
「あーっ!ヤブミ提督!今度はヴァルモーテン少尉を侍らせて、またへんた……」
この女性士官、何やら言いかけるが、准将の横にいる佐官が、しきりに身振り手振りで何かを伝えている。するとその女性士官は、私の方を見る。
明らかに色の異なる軍服を見て、何かを察する。急いで直立、敬礼するその士官に向かって、ヤブミ准将はこう告げる。
「グエン少尉、これより客人を会議室にお連れする。接客を頼む」
するとその女性士官は無言でうなずいて敬礼し、そしてエレベーターには乗らず、引き返していった。ドアが閉まり、再び上昇する。
……なんだろうか、今のは?妙に緊張感が感じられないな。いや、ここは敵地だ。油断は、禁物だ。
そしてエレベーターを降りて通路を抜け、会議室へと入る。
この辺りの作りは、我々の駆逐艦とほとんど変わらない。というか、ここがあの途方もない武器、高性能な機関を持ったあの船とは思えない。が、それは言い換えれば、ほとんどの部分は昔からの規格品なのだろう。最新鋭の武装を載せた船とはいえ、居住部は我々のそれとさほど変わらないということか。
先ほど、エレベーターで遭遇した士官が、ポットとティーカップを載せたワゴンを押して現れる。そして、無言でお茶を入れては、まず我々3人の前にそれを置く。
そして、その士官がヤブミ准将ら3人の前に、注いだお茶を並べる間に、ヤブミ准将が口を開く。
「ではこれより戦時条約に基づき、貴官らの降伏受諾と、その後の措置について取り決めたいと思う」
降伏、という言葉を聞いて、一瞬あの女性士官の手が止まる。が、そそくさとお茶を配り終えると、ワゴンを引いてこの部屋を退出する。
「ヤブミ准将、その前に一つ、伺いたい」
「なにか?」
「我々は、不本意ながらこの見知らぬ宙域にワープアウトした。航路、および座標をロスト。貴官の艦隊は、同じ迷い組なのか、それとも否か?」
降伏はしたものの、相手も我々同様、ここに迷い込んだというなら、この先の対応が変わる。だが、ヤブミ准将から発せられた言葉は、我々にとっては意外で、しかし希望の一言だった。
「いや、我々は迷い込んだのではない。独自の航路で、ここにたどり着いている」
私は、ここで確信する。やはりこいつらは、十分な補給線を確保した上で、我々に戦闘を挑んできたのだ。補給皆無であれば、極力戦闘は避けるはずだというのに、彼らは何のためらいもなく、容赦なくこちらに攻撃を仕掛けてきた。私の直感が正しかったことが、ここで証明される。
「では、通例に従い、我々はその航路で……」
「いや、軍機につき、その航路を教えるわけにはいかない」
「なんだと!?では、我々はどのようにして帰還すればよいのか!」
私は、声を荒げる。それはそうだ。わざわざ武装解除にまで応じたというのに、帰りの航路を示されないとはどういうことか?これでは、降伏した意味がない。
「いや……航路は明かせないが、条約に則り、必ず貴官らを帰す。だが、少し時間を頂きたい。それは了承してもらえないだろうか?」
もっと威圧的な態度に出るかと思いきや、意外なまでに低姿勢なこの対応に、私は留飲を下げる。そして、私は応える。
「……承知した。我々には現在、帰る術がない。貴官を信じるより、他にない」
地球001の連中は、冷徹で高慢、そういうイメージをずっと植え付けられてきたというのに、目の前の男は、とてもそういう人物には見えない。
「……では、今後のことについて決めていきたい。まず、我々と共に……」
彼らと我々の状況を明かしたうえで、ヤブミ准将は淡々と、この先のことを話し始めた。が、その時だ。
突然、この会議室の後ろのドアが、バンと音を立てて開く。そして、金髪の女性が入ってくる。
「おい、カズキ殿!ちょっと聞いてくれ!レティシアのやつがだな……」
まるで昔の軽装の騎士のような姿のこの女性は、なにやらヤブミ准将に向かって叫んでいる。それを見て、あわてて身振り手振りで何かを伝えるヤブミ准将。
「あ……いや、取り込み中であるな。済まなかった。失礼する」
どうやら状況を察したようで、その女性はそそくさと出ていく。再び、静まり返る会議室。
「……失礼した。では、話を続ける。まず、我々と共に、地球1019というところに向かう」
「地球1019?」
「その名くらいは、聞いたことがあるだろう。」
「連合側の星だということは知っているが、位置が分からないとされていたな」
「そうだ。その星へ、我々と向かう。そこで……」
と、再び会議室の後ろのドアがバンと大きな音を立てて開く。今度は、銀色の髪の女が現れた。
「おいカズキ!ちょっと聞いてくれよ!リーナの野郎が、俺のチューブ味噌を勝手に使いやがったんだ!」
……妙に口の悪い女だな。しかも、さっきの女と言い、妙にこの准将に向かってため口ではないか?
先ほど同様、身振り手振りで何かを伝えているが、今度の相手はそれが伝わらないようで、あわててヤブミ准将はその女の元に向かう。不機嫌をあらわにするその女は、ようやく事情を察したようで、私の方に向かって軽く手を振ってくる。
「あ……あはははっ!いやあ、邪魔したな、それじゃあ、ゆっくりしていってくれ!」
と、そそくさと立ち去る銀髪の女。再び、私の前の席に座り直すヤブミ准将。
「あの……ヤブミ准将、あの2人の女性は一体、何者なのか?」
落ち着きを取り戻した准将は、私のこの問いにこう応える。
「軍機につき、お答えできない」
◇◇◇
「おい2人とも!なんだっていきなり、会議室に入ってくるんだ!」
「しょうがねえだろう!ナゴヤから持ってきた貴重なチューブ味噌を食われちゃ、俺だって黙ってられねえぜ!」
「いや、レティシアが美味そうに食べているから、少しもらっただけではないか!」
「少しって、全部使いきっちまったじゃねえか!どうしてくれるんだよ、おい!」
たかがチューブ味噌ごときのことで、連盟軍人の目前でもめないでくれ。えらい恥をかくところだったんだぞ。
やんややんやと言い合う2人の前で、僕はさっきの連盟軍人の事、特にあのビスカイーノ准将のことを考える。
彼は、どう見ても僕ぐらいの年代の人物だ。僕のように、どこかの大将に祭り上げられて准将となったわけではなさそうだから、やはりそれなりの軍功を重ねての出世の結果だろう。
と、言うことは、僕なんかよりもずっと「軍人」なわけだ。そんな人物から、僕はどう見られてるんだろう?
今、ジラティワット少佐に引き継いで、武装解除やその後のことを詰めてもらっている。そろそろ、終わる頃だろうな。
「……それじゃ、行ってくるか」
「おい!いくって、どこに行くんだ!?」
「まだ敵の指揮官がこの艦内にいるんだ。いつまでも、ここにいるわけにはいかない」
「なんだよ、そんなこと、ジラティワットにやらせとけばいいじゃないか」
「そんなわけにはいかない。2人が喧嘩してなきゃ、僕だってまだあの場にいなきゃいけないところなんだぞ」
ブスッとした顔で、僕を睨みつけるレティシア。リーナも同様だ。だが、今は2人のことより、外にいる敵の艦隊のことの方が気がかりだ。
ここからが大変だ。何せ100隻もの武装解除。すんなり行くとは思えない。
だから僕は、あるカードを切った。正直それは、僕の一存で切っていいものではないのだが、我々の状況や戦時条約の適用通例を調べた結果、充分可能であると判断した。それくらいの妥協がないと、あの指揮官も配下を説得できないだろう。
それにしても、レティシアとリーナの、この不機嫌な表情も、悪くないな。なんだろう、急にムラムラと、2人まとめて抱きしめたくなってきたぞ。
で、僕はそれを、実行に移す。
ほぼ同時に、2人から張り手が飛んでくる。
◇◇◇
「……と、言うわけで、これにて降伏後の当面の行動についての合意としたい。同意いただけるか?」
「了解した。異存はない」
「ならば、これにて今回の折衝を終了とする。帰還に関するプラン提示については、追って知らせるものとする。以上だ」
そう言うと、ヤブミ准将は立ち上がる。我々も起立し、互いに敬礼する。
会議室を出て、エレベーターで降りる。再び我々は出入り口に向かう。そこで私はふと、ヤブミ准将の顔を見る。
さっきまでは、あんなに頬が赤くなかった気がするんだが、どうして急にあんな顔になってしまったのか?我々への詳細説明を配下の幕僚に任せ、少し席を外している間に、何があったのだろうか?
といって、その頬の赤い理由を尋ねる雰囲気などなく、そのまま、出入り口へと向かう。そして互いに敬礼し、我々は、ハッチへと向かう。そして、通路に入った。
「おかえりなさい、閣下!」
通路の向こうでは、艦長や副長など、数名が出迎える。そして、こちら側のハッチも閉じられる。直後、エアチューブは切り離される。
「……で、折衝の結果は、いかがでした?」
「ああ、意外な提案を受けた」
「意外な提案?なんですか、その提案とは」
「地球1019への、上陸だ」
「えっ!?地球1019!?それって、位置情報が不明のまま登録されているという、あの噂の星のことですか!」
「そうだ。この謎の宙域に、その星はあるということだ。我々の、その星への上陸を認めるというのだ」
「なぜ、そんな重要なことを、あっさりと……彼らにとってその星は、秘匿すべき星ではないのですか?」
「分からない。まあ、星そのものは地球型惑星であるから、特段、秘匿すべきものでもないのだろう。ともかく、我々は通常の降伏手順に則り、全艦の武装解除を受け入れた。直ちにそれを実行すると、通達されている」
艦長に、この交渉の経緯を話した。やはり、あの案には驚いていたな。私も、あの唐突な提案には驚いた。
地球1019への上陸。これはつまり、武装解除を滞りなく進める上での、彼らなりの妥協だろう。そんな妥協をする義務は本来ないのだが、それを敢えて提案した辺り、あの指揮官の洞察力と度量を感じる。
間違いなく、武装解除受け入れは揉める。再び、100隻の艦長らの説得を行わなければならない。だが、この上陸許可というカードは、交渉をより有利にしてくれる。ただでさえ、宇宙の只中で迷子になってしまった我々にとって、陸地に降りられるという安心感は大きい。
おそらく、そこまで考えての提案だろう。だが、それはヤブミ准将にとって、何の得があるというのか?
交渉をスムーズにできるという以外のメリットが、彼にはない。それどころか、連盟側の人間を彼らの領域に侵入させることになる。デメリット以外の何ものでもない。
何を企んでいるのか?だが、我々には選択肢はない。その思惑に乗る他に、道がないのだ。
「なかなかの指揮官でしたね」
と、リオル准尉が呟く。
「なんだ……准尉ですら、あの指揮官に何か感じるところがあったのか?」
「ええ、あったわ」
リオル准尉が即答する。
「あの両頬を見たでしょう?」
「両頬……」
「えっ?閣下は、気づかなかったんですか?」
「いや、もちろん気づいてはいたが……あの腫れた頬が、どうしたというのか?」
「あれは絶対、途中に現れたあの2人から食らったものだわ。間違いないわね」
妙なところに目をつけるものだな。だが、それがどうして「なかなか」という評価に繋がる理由となりうるのか?
「察するに、あの2人はヤブミ准将とかいう指揮官の恋人か妻であり、その2人がそろってあの男の頬を引っ叩いた、ということでしょう?」
「そういう解釈も可能ではあるが……だが、それがなんなのか?」
「つまり、それだけあの女2人は、仲がいいってことよ」
「……言いたいことが分からん。今の話のどこに、あの男の評価に繋がるポイントがあったのか」
「もしもあなたが、私以外の恋人を見つけて、私の前に連れて現れたとしたら、たとえその相手が私の親友だったとしても、私は嫉妬のあまり、その相手と仲良くすることなんて絶対にありえないでしょうね。でもあの指揮官、そんな2人の仲をうまく取り持っているってことよ。大したものだと思わない?そういう芸当、あなたじゃとても無理ね」
だんだんと「リオル准尉」から「カルロータ」になってきたな。准将にタメ口をきく准尉。まあしかし、ここはエレベーターの中だ。いるのは、ソロサバル中佐だけだ。
「閣下、そろそろ、最上階に着きますよ」
だが、中佐はそろそろ切り替えろと、暗に私とカルロータに警告する。その直後、エレベーターが開く。3人は、エレベーターを降りる。
そして私は、再び各艦長への説得に赴くべく、艦橋へと向かった。
◇◇◇
「で、その両頬を真っ赤に腫らしたまま、敵の准将の前に出たんですか?相変わらず、馬鹿ですねぇ」
容赦無く僕に暴言を投げかけるのは、グエン少尉だ。
「しょうがないだろう、出ないわけにはいかないんだから」
「だったら、なぜこんな時に、2人からビンタを喰らうような所業に出るんですか?仮にも軍司令官ともあろうお方が、自身の行動がもたらす結果を、予測できないものですかねぇ」
言いたい放題だな、この士官は。それくらいのこと、当然考えている。
ああいう時は、僕に矛先を向けるように仕向けた方が、かえって仲直りするのが早い。そういう経験があっての行動だ。今ごろはおそらく、仲良く戯れあっている頃じゃないだろうか。
「おらおら、でっけえ胸しやがって、うらやましいじゃねえか、おい!」
「れ、レティシア!そなただって、ついているであろう!」
「いやあ、こんなにデカくはねえな。これだけ触りごたえのあるやつを見せつけられたら、俺でさえ触りたくなるぜ!」
部屋に戻ると、案の定、下品なおさわり会が始まっていた。僕は軍帽と軍服を脱ぎ、ハンガーにかける。
「おう、そういやあカズキ、どうだった?」
「滞りなく、終了した。あとは敵が、武装解除に応じるかどうかだけだ」
「ま、なんとかなるんじゃねえか?だってあいつら、カズキに頼らねえと、元の宇宙に戻れねえんだろう?」
「おい、レティシア!そこは揉むな!」
何やってるんだ、この2人は。ベッドの上で下着姿のまま、リーナの背後に回ったレティシアが……
と、突然レティシアが、僕の腕を掴むと、そのままベッドの上に手繰り寄せる。
「お、おい、レティシア!」
「さっき、引っ叩いちまったからよ。その詫びだ。おい、リーナ!」
「しかたあるまい……カズキ殿、これで許されよ」
「いや、僕は別に気には……うわっ!」
女性の胸についているあれは、成分的にはつまり、脂肪の塊とされている。その脂肪分を両側から、僕の顔に押し当てられる。
若干リーナの方が、筋肉質なためか、硬い気がするなぁ。いや、それを言ったらボリュームがやや少ないレティシアの方も、硬いと言えるかもしれない。
そういえばあの准将、傍に女性士官を連れていたな。あの2人の関係は、僕でいうところのグエン少尉か、それともレティシア、リーナのような関係なのか。根拠はないが、あの眼光からただならぬ何かを感じたから、多分後者だろうな。もっとも、まさかそんなことをあの准将に直接、聞くわけにはいかなかったが。
◇◇◇
「第12小隊、全艦、前進します!」
「了解。規定通り、100キロ手前で停船し、処置に備え、と伝えよ」
「はっ!」
武装解除の説得は、案外すんなり終わった。もはや他に道がないという事情もあるが、上陸というカードが心理的に大きな影響を及ぼしたことは疑いない。やはりあの指揮官、只者ではない。
我が1101号艦は、敵艦隊のど真ん中で待機する。まあ、いわば人質だ。武装解除が終わるまでは、我々はまだ武装が健在な僚艦を牽制するため、ここに残る必要がある。
「ロングボウズより、人型重機、多数発進!数、およそ200!」
こちらの動きに合わせて、あちらも武装解除に向けて動き始める。200機の人型重機が発進し、こちらに接近中の駆逐艦に向かう。
そして、それから30分後。この人型重機によって、武装解除が実行された。




