#120 戦術
我々はリーナ殿のいる銀河のことを「異銀河」と呼称している。当初はフィルディランド銀河と呼んでいたらしいが、特定の国名をつけるのは不味かろうということになり、今はこのひねりのない名前で落ち着いている。
名前を決めるにも、どこにある銀河かわからない。もし既になんらかの名称、またはメシエ天体として登録済みであれば、それで呼称すべきであるところだが、場所がまったく見当もつけられないらしく、正式名もつかない事態が続いている。
カワマタ研究員の別宇宙説も、それを確証するものがないため、あまり支持されていない。もし物理法則の異なる宇宙であるならば、どうして我々の船舶が航行可能なのか、などの疑問を説明できないからだ。
そんなこともあって、僕は今、サカエの研修施設に来ている。
ここでは、第8艦隊が地球1019周辺に滞在した際のデータの分析が行われている。もし、カワマタ研究員がいうように異なる物理法則の世界であるならば、その影響が機関のログなどに現れているはずだ、という意見を受けての調査だ。
「どうだ?」
「いえ、有意差はありませんね。極めて、普通です」
「そうか……機関部以外のデータに、何かあるかもしれない。砲撃時の戦闘データ、人型重機、哨戒機のログなど、ありとあらゆるデータを検証してみよう」
「はっ!」
「できれば、あの浮遊岩のデータもあるといいんだが……結局、我々は見向きもしなかったからな」
「ええ、そちらは素粒子研究所で行ってるそうですから、こちらは第8艦隊のデータを中心に調べることにいたします」
サカエに常駐する技術士官は、すぐに旗艦内にあったデータのログを集めにかかる。だが、データのクレンジング作業に時間がかかるため、結果が出るのは明日以降になりそうだ。
と、横には、配属されたばかりのヴァルモーテン少尉がいる。先ほどから、じっとデータ分析の報告を聞いている。
「貴官は確か、ドレスデン出身だと聞いているが、この期に帰郷しなくてもいいのか?」
「はっ、大丈夫です。問題ありません」
問題があるとかないとか、そういう話ではないのだがな。いいのか、こんな辺鄙な島国にいても。
「小官は、異銀河に出向いておりません。せめて、得られるだけの情報を得ておきたいと、そう願う所存です」
「ああ、そうだったな。言われてみれば貴官は、我々がこちらに戻ってきてから、我が艦隊に配属されたんだったな」
そこで僕は、ふと思う。気づけばもう、ヴァルモーテン少尉との会話ネタが尽きてしまった。じっと技術士官がキーボードから入力するその文字を、目で追いかけている。
そういえば僕はこの女性士官のことを、書類上の履歴とここ数日の短い付き合いでしか知らない。仮にも、司令部の人間だ。せめてどんな性格の人物かを知らねば、今後の作戦で支障をきたすかもしれない。
これがレティシアなら、もっとうまくこいつの本音みたいなものを引き出してくれるのだろうが……どうも僕は、そういうのは苦手だ。
だから、書類上にあったある部分について、言及することにする。
「ところで、貴官の軍大学の論文のテーマは、近接戦闘に関するものだったな」
「はっ、その通りです」
「だが、ここ200年以上、近接戦闘などほぼ行われていない。現に、駆逐艦には近接戦闘用の武装などついていない。何ゆえ、近接戦闘というテーマを扱ったのか?」
「それは閣下、この第8艦隊の艦艇に使われている新型機関が大きくかかわっております」
「なぜ、新型機関が近接戦闘に?」
「通常の3倍の高出力運転が恒常化すれば、光速の10パーセント程度まで増速する機動性が、連盟軍に対するアドバンテージとなります。となれば、その速力を活かした近接戦闘を考慮すべきかと」
「……なるほど。だが、近接戦を行うメリットとはなんだ?」
「現在の1光秒を隔てた撃ち合いでは、すでに決着をつけることは不可能となりつつあります。連合も連盟も、互いに手詰まりな状態。たとえ閣下の提案された特殊砲撃をもってしても、戦況を激変させるほどの戦術とはなりえないでしょう」
ずけずけと、言いたいことを発言する士官だな。僕は続ける。
「……では聞くが、近接戦闘ならば、その閉塞感のある今の戦況を打開できると?」
「はい、閣下。間違いなく打開できます」
「具体的には?」
「はっ、人型重機を使います」
「えっ!?人型重機を!?」
「特殊砲を搭載する艦には、すでに人型重機のみが2機、搭載されており、さらに他の標準艦でも、2つの格納庫の一つを人型重機用に変えてしまえば、そこに最大4機の人型重機を搭載可能となります」
「それはそうだろうが……その前に、人型重機を搭載するとどのように戦術に変化が起こるというのだ?」
「高機動で敵の艦隊に接近し、距離100キロ以内で人型重機を射出、敵駆逐艦を強襲します。まずはバリアの弱点である後方部に回り込み、噴出口を破壊し、敵駆逐艦を行動不能にします。必要ならば、艦橋を直接攻撃することも可能でしょう」
「確かに、後部はバリアが無力な場所だからな。人型重機でも、強襲は可能だろう」
「加えて、第8艦隊独自の兵器が効力を発揮致します」
「独自の兵器?」
「特殊砲撃です」
「あの特殊砲が、どうかしたのか?」
「機関をやられ、行動不能に陥った艦隊に対して、あの特殊砲を使用すれば、どうなるかはお分かりいただけるかと思います。ゼロ距離からの特殊砲となれば、いかにバリア展開をしたところで、なすすべもなく敵は……」
「ヴァルモーテン少尉!」
「はっ!」
「今一度、確認しておこう。我々の目的は、敵艦隊の殲滅か、あるいは敵の攻撃意欲を挫くことの、いずれであるか?」
「後者であります。閣下」
「ならば、今の戦術はいささか過剰攻撃に過ぎる。機関破壊で、すでに目的が果たせている。それ以上の攻撃は、無用と考えることだ」
「はっ!ですが閣下、一つ疑問がございます」
「なんだ?」
「近接戦闘戦術が常態化した場合、閣下のご提案された特殊砲撃という戦術が無用となる恐れがございます。それについては、どうお考えですか?」
「貴官の提案する近接戦闘戦術は、確かに導入された直後ならば効果はあるだろうが、すぐに対策されてしまうだろう。具体的には、対人型重機用兵器の投入、同じ重機か、哨戒機や複座機による防御戦術の考案、あるいは接近戦時に使う後方の噴出口防御のための局部バリアシステムの装備などが思いつく」
「つまり……最終的には現状の艦隊戦に戻る、と仰られるのですね?」
「そうだ。なればこその、特殊砲撃、艦隊決戦構想だ。連盟側に真似のできない、防ぎようがない手段で圧倒する。それが、戦略上も大きな影響を及ぼす」
「小官の考えが、浅かったようです。恐れ入ります」
と、僕のこの反論に、敬礼で応えるヴァルモーテン少尉。
少尉の近接戦闘構想ではないが、先ほど僕が言った、すぐに対策されてしまう戦術の事例を、僕は最近経験している。連盟の、あの「ニンジャ」だ。
あれも当初は、我々を翻弄した。が、幸いにも我々は「ニンジャ」を発見できる手段を得た。そして、その単純な仕組みゆえに、我々もそれを模倣し、実際に使用した。
近接戦闘も同じだ。おそらくは、当初はかなり効果を挙げるだろう。が、すぐに対処することは可能だ。だいたい、高速接近する艦艇が現れたら、近接戦闘を行うと宣言するようなものだ。迎撃機の発射に、艦艇の防御を固められるだろう。
また、飛び込んでいった味方艦艇も危険に陥る。人型重機を射出した以上は、回収のために近くで待機する必要がある。となれば、逆に敵からも近接戦闘を受けることになる。駆逐艦はその構造上、接近戦には向いていないから、結局、それを避けるために遠距離からの攻撃に転じることとなり……つまり、元の戦闘に戻ることになるだろう。
ただ、ヴァルモーテン少尉の提案が無駄というわけではない。運用の問題だ。戦闘局面によっては、有効な手段となりうると、僕は思う。
が、同時に僕は、この若き戦術参謀の本性を垣間見た気がする。
こいつはヤバい。明らかに、殲滅戦思想に染まっている。先ほどの提案で、そう察した。
「……少尉、一つ尋ねたい。貴官の近接戦闘構想をもし我が艦隊の中で実現しようとするなら、どの戦隊が相応しいと考える?」
「はっ!これまでの戦闘記録から鑑み、小官はカンピオーニ隊こそが相応しいと愚行致します!」
「その根拠は?」
「特に圧倒的戦力差のある敵艦隊に突入し、それを奔走したあの機動性、そして艦隊運用術は、まさにこの近接戦闘構想の実現に不可欠であると、小官は判断致します!」
うん、決して見立ては悪くない。僕も、ヴァルモーテン少尉とほぼ同意見だ。ただ、僕とは根本的な違いを感じるところもある。
が、上手くは言えないが、ヴァルモーテン少尉がカンピオーニ大佐の隊を指名したのは、大佐の能力ではなく、どちらかというと、そのヤバい気性ゆえではないのか?少尉の答えっぷりから、僕は察した。
となると、僕ならやっぱり、ワン大佐の隊を指名するかなぁ……ワン大佐自身、人型重機乗りだったというし、その手の運用も心得てそうだ。
とまあ、そんなことがあった翌日の朝のこと。
僕とレティシア、リーナ殿は、揃ってオオスにやってきた。
「んでよ、あの店で俺は杖を買ったんだ」
「杖?そんなもの、何に使うんだ?」
「いかにも魔女らしいじゃねえか」
「そうなのか?魔女といえば、先が光る薄紅色の棒ではないのか」
リーナ殿よ、それは多分、魔法少女の間違いだろう。
「で、今日はどこに行くのか?」
「そうだなぁ……鶏の丸焼きは昨日行ったばかりだからなぁ」
レティシアが悩んでいる。が、それは食い物の話だろう。まさかここに、食い物だけを目当てにやって来たのではあるまい。
「おい、ヤブミ殿」
「どうした?」
「いや、あそこにいる者だが……あれは、ヴァルモーテン殿ではないか?」
というリーナ殿の指す方を見ると、短めの金髪に、やや小柄な、軍服姿の人物がいる。肩の階級章が少尉であることを示している。
間違いない、こんなところを非番の時に軍服で歩くやつなんて、そうはいない。だが、休みの時ぐらい、関わらなくてもいいような……
「おーい、ヴァルモーテン!」
と思っていたのに、すぐに声をかけるやつがいる。レティシアだ。
「……これは、ヤブミ准将閣下に奥方様、そしてリーナ皇女様」
と、その場で180度振り返った後に直立、敬礼をするヴァルモーテン少尉。僕も思わず返礼する。
「なんでぇ、おめえ、こんなところで何してやがる?」
「本日は、骨董市があると聞いたもので……」
「はぁ?おめえ、そんなものに興味あるのかよ」
「大須観音と言えば800年以上前に、イエヤス公がこの場所に移転した寺社であり、それ以来、門前町であるオオス商店街と共に、現代にいたるまで新旧様々な文化が入り乱れる町の拠点として君臨し続けた……」
ああ、始まってしまった。一度始まったヴァルモーテン少尉のウンチク話は、なかなか止まらない。
「んなこたあどうでもいいや、おめえ、朝食はまだか?」
「えっ?あ、はい、まだです」
「じゃあ、一緒に来いよ。行こうぜ」
「行くとは、どちらに?」
「行きつけの喫茶店でモーニングだ。決まっているだろう。」
「モーニング、ですか?」
「なんでぇ、モーニングを知らねえのか?」
「いえ、知ってますが……」
「ならいいじゃねえか。行こうぜ」
いや、別にモーニングでなくてもいいのだが……だが、ヴァルモーテン少尉はレティシアの勢いに押され、そのままついていく。
「おい……リーナ殿よ。食い過ぎじゃないのか?」
「ほえ?らいりょううらろ!」
……何をしゃべってるのかさっぱり分からん。食いながら喋らないで欲しいな。商店街の中ほどにある喫茶店に、4人で向かっているのだが、その途中、スイーツ等の店の前を通り過ぎては、リーナ殿が買い食いを繰り返している。栗アイス、ういろうバー、そしてみたらし団子。これから朝食だというのに、すでに食い過ぎではないのか?
「んじゃ全員、ウインナーコーヒーでいいな」
「おい、レティシア。私はレモンティーを所望したいのだが」
「なんでえ、コーヒーじゃねえのかよ」
ようやく辿り着いた喫茶店で、レティシアが注文を仕切る。それにしてもリーナ殿は、レティシアへの遠慮がないな。
「ヴァルモーテン少尉、貴官は変えなくていいのか?」
「いえ、私もウインナーコーヒーで。隣国のオーストリアを象徴するコーヒーですし。あ、ウインナーコーヒーのウインナーとは、『ウィーン風』という意味であって、別にウインナーが入っているわけではありません。そのオーストリアはかつて、ハプスブルグ家による帝国として、五大列強国の一角であったのですが……」
この士官は、会話にいちいち逸話が必要なのかな。なんらかのうんちくっぽいものを語らずにはいられない性格らしい。
で、コーヒーと紅茶がそれぞれ運ばれてくる。そして、モーニングとして小倉トーストが添えられる。
その小倉トーストを見て、ヴァルモーテン少尉の青い目が開く。
「やっぱりモーニングに、小倉トーストは外せねえよな。」
とつぶやきながら食べるレティシア、無言でがつがつ食べるリーナ殿。何もそんなに急いで食べなくても……と思いながら、ふと僕は、ヴァルモーテン少尉の方を見る。
あれ……いつも無表情な少尉が、頬を抑え、にやけながら小倉トーストを食べてるぞ。ドレスデン出身だと聞いていたが、こんなものが好みなのか?
「おう、ヴァルモーテン、小倉あんがよほど気に入ったようだな」
「はっ!?い、いえ、そんなことはないです!」
「そうか?顔がにやけてたぜ」
「へ?顔が?」
そういえば、ナゴヤに着いたばかりの時も、昼食で寄ったあの店で食べたクリームぜんざいに舌鼓を打っていたな。こいつ、この小豆のもたらす甘味に、すっかりはまってしまったようだな。
ということは、あずきバー辺りを勧めてみようか。歯が折れるほど、食べるかもしれないな。
「おい、レティシア!次はこのチョコレートパフェが食いたい!」
ええ?まだ食べるのか?おい、リーナ殿よ、まさかお前の胃袋は、あっちの銀河とつながっているわけではあるまいな?
「そういやあ、ヴァルモーテンよ、おめえ、骨董市で何を見るつもりなんだ?」
そのチョコレートパフェをがつがつと食べる品のない皇女を横目に、レティシアは小倉トーストをかみしめるように食べる少尉に尋ねる。
「ええ、陶磁器を見ようかと思ってまして」
「はぁ?陶磁器?」
「はい」
「あんまりイメージが合わねえな。お前が、陶磁器?」
「私のいたドレスデンの近くに、マイセンという有名な陶磁器の生産地があるのです」
「マイセン?聞いたことねえなぁ……」
「白磁器に繊細な模様を描き、2本の剣のマークが特徴の、欧州を代表する陶磁器の一つです。17世紀にアウグスト2世が、景徳鎮のような陶磁器を作りたいと、錬金術師のベドガーに命じて作らせたのが始まりと言われ……」
うう、また始まったぞ。こいつの頭の中はどうなっているんだ?
「まあいいや、さっさと食っていこうぜ!」
こういうめんどくさい相手に対しては、レティシアは勢いで押し切る。で、ウインナーコーヒーをズズッと飲み干すと、4人は喫茶店を出る。
そういえば、ようやくここの店主にもにらまれなくなってきたな。久しぶりに来たこともあるし、また、近頃は我々も大人しい。おまけに、リーナ殿がよく食う。騒ぎを起こさず、売り上げに貢献するならば、むしろ歓迎のようだ。
で、そこから大須観音へと向かう。途中、やはりリーナ殿は店で買い食いをする。あれだけ食べたのに、まだ食うのか、こいつは……ちなみに今は、ケバブを食べている。
そんな口が忙しいリーナ殿を連れて向かう先は、仁王門と書かれた赤い門が出迎える。門を潜るとそこは、境内の前の砂利が広がる広場……だが、今ここは、数々の品が並ぶ骨董市が開かれている。
今日は8月18日。毎月18、28日に開かれるこの市では、数々の品で溢れている。食器、人形、置物、服、その他小道具。この宇宙時代になっても、その名の通り、古いもの、あるいは古風なものが売られている。
「お、このステッキ、いいな」
と、レティシアが手に取ったのは、細い手品師用のステッキ。
「レティシア、そんなものどうするんだ?」
「どうもしねえけどよ、これ、持ってるだけで、なんだか魔女らしくねえか?」
いやあ、魔女らしいとは思わないけどな。それにお前が以前買ったあの杖は、今でも地球1010の住居の玄関に立てかけたままで、使ってないじゃないか。これ以上買ったら、またゴミが増えるだけだぞ。
「ほう、これはまた面白いな。この小さな器には、どことなく惹かれるものがあるな。」
と言いながら、リーナ殿が手に取っているのは、盃だ。小さな盃が4種類、桜色、新緑色、紅葉色、雪色で染められた器に魅了されている。四季を表すその盃に魅了されるとは、案外リーナ殿も風情というものを感じるのだな。ただの胃袋脳筋騎士ではないようだ。
だが、さらなる関心を持って、その市の品に接するやつがいる。
「こ、これは……かのイエヤス公が所有していたとされる茶道具、『初花』では!?」
興奮気味に叫ぶのは、ヴァルモーテン少尉だ。手には、手の平ほどの壺型の茶色い陶器。だが、ヴァルモーテン少尉よ、そんな国宝級の物が、こんなところにあるわけがないだろう。
だが、少尉の興奮は続く。
「ああ、こちらにあるのは『利休尻膨』!かのセンノリキュウが用いたとされる茶器ではありませんか!しかも、『利休子茄子』とセットで!」
絶対に偽物だ、それ。いくら骨董市とはいえ、国宝の品が出回ることはない。そんな貴重な物が、たったの30ユニバーサルドルで売られていることに、おかしいとは思わないのか?
「ああ!これは幻の茶器、『古天明平蜘蛛』ではないですか!こ、この骨董市は、どれだけレベルが高いのですか……」
などと騒いでいるが、そいつは偽物どうこう以前の問題だ。それは戦国時代に、マツナガ ヒサヒデが抱えて爆死したとされる茶器だ。この世にあろうはずがない。
どうやらこの女性士官は、知識は豊富だが、真贋を見極める目はないらしい。
そんな偽物をいくつも買うヴァルモーテン少尉。その至福の表情を前に、真実を言えない僕は、ただ少尉が陶器を買い漁る姿を見守るしかない。まあ、いいか。大した金額ではないし。
この日、僕はヴァルモーテン少尉の本性を垣間見したような気分だ。意外と、表情がある。ウンチクよりも、それをもっと出せればいいのに……などと思う僕だった。




