#105 反転
「全艦、全速前進!直ちに艦隊主力に合流!」
「了解!」
オオシマ艦長が、周辺にいる9隻の僚艦に向けて指示を飛ばす。その間に僕は、ジラティワット少佐に尋ねる。
「少佐は、どう見るか?」
「はっ。最初のあの迎撃システム、もしやあれを破壊したことが引き金となり、ここに集まって来たのではないかと」
「いや、それは分からんが……だがあれも、無人だと思うか?」
「おそらくは、と、言いたいところですが……無人にしては、あまりにも見事な艦隊運動です」
厄介なものが現れた。それは間違いなく、ある意思を持った艦隊行動をしているようにしか見えない。
ということは、あそこに人がいる可能性が高いのではないか?
「ともかく、艦隊合流を果たす。艦隊主力にも打電、両者の中間地点で合流する。直ちに集結せよ、と」
「はっ!艦隊集結の指示を伝えます!」
こんなところで、ジラティワット少佐が大忙しになろうとは、考えてもみなかった。想定外も想定外。連盟艦隊がいない宙域での艦隊行動。だが、相手はまったく未知の艦隊ときた。
まさかとは思うが、やつらはこの宙域における「地球001」のような存在なのではあるまいか?
だとすれば、銀河を超えたファースト・コンタクトか?
いや、それはすでにやった。フィルディランド皇国という国との接触の方が、まさにファースト・コンタクトだ。
が、あれはごく普通の異文化接触だった。多少の波風はあれど、平和的にその後は推移している。
しかし、それが宇宙艦隊を保有する相手となれば、そう簡単にはいかない。しかもこちらは、すでにその一部を破壊している
ともかく、ここは一旦、戦闘を回避せねば。
と思っていたのだが、それを無視して前進するやつが現れる。
「艦隊の一部が、前進します!」
「なんだと!?」
「エルナンデス隊です!不明艦隊に向けて進撃中!」
「おい、命令違反だぞ!後退させろ!」
またエルナンデス隊か……僕はジラティワット少佐に命じるが、無線封鎖したまま、前進をやめない。
「やむを得ない……全艦、前進!エルナンデス隊と合流する!」
すでに先行するエルナンデス隊100隻は、あの不明艦隊に50万キロまで迫っていた。あと5分もあれば、向こうを射程内に収めることになる。
前回、あれと同じやつと遭遇した際に、確か射程が35万キロだったという記憶だ。となれば、エルナンデス隊が先手を打つことになる。
いや、それはさすがにまずい。今度の相手は、人がいる可能性がある。それを撃ってしまったら、本当に取り返しのつかない事態になる。
「エルナンデス隊に再度連絡!直ちに後退し、艦隊と合流せよ、と!」
「提督!そのエルナンデス隊が、応答しません!」
無茶苦茶なやつだな。そうこうしているうちに、向こうの艦隊とエルナンデス隊との距離が、45万キロに達しようとしていた。
「エルナンデス隊、主砲充填を開始!」
「くそっ、間に合わなかったか」
「不明艦隊からも、エネルギー充填を確認!」
「なんだと!?」
なんということか。こちらのアウトレンジ攻撃になると思われたこの遭遇戦闘は、想定外の展開を見せる。
「双方、発砲を開始!」
エルナンデス隊が発砲すると同時に、あちらの艦隊も砲撃を開始する。青白いビームが、この漆黒の宇宙を錯綜する。
エルナンデス隊が不意打ちしたつもりが、むしろこちら側の方が逆に不意打ちを受けることとなった。エルナンデス隊も今ごろは、思惑違いな展開に戸惑っているところではないか?
「やむを得ない……エルナンデス隊に後退を呼びかけつつ、観測を続けよ」
「了解!」
「にしてもエルナンデス隊の艦艇は、一発も当てられないのか?まだ、一隻も沈んでいないぞ」
撃つなと言った相手に、撃沈できていないことに憤慨するというのも妙な話だが、命令違反を犯したわりに、得られるものがなさすぎるというのもあまりに不甲斐ない。だから僕は、二重にエルナンデス大佐への怒りを感じている。
が、すぐにこれが、エルナンデス隊の不甲斐なさでないことが判明する。
「……なんだと!?バリアのようなものを確認した!?」
「はっ、明らかにエルナンデス隊からのビームを弾いております」
「どういうことだ……我々の艦艇と、ほぼ同じ装備じゃないか!」
エルナンデス大佐の暴走から始まったこの戦闘だが、今回現れた艦隊に関し、意外な事実がいくつも判明する。それは、射程距離が我々と同じ45万キロであり、さらにバリアシステムも備えているということ。どういうわけか、砲撃に使われているビームもほぼ同じくらいの威力であり、何から何まで、こちらの武装をコピーしたような構成だ。
まさか、先日の迎撃装置から、我々の戦力をそっくりそのままコピーしたというのか……?
いや、そんなこと、あるはずがない。わずか1、2週間程度で、100隻もの艦艇にそれだけの武装を施すなど、不可能だ。しかもそんな芸当ができるなら、それを上回る武器を作り出すことだって可能だろう。わざわざ、相手と同じ武装にする意味がない。
そんな仮定の話など、考えている余裕はない。とにかく、エルナンデス隊の暴走を止めねばならない。
「全艦、前進!バリアを展開しつつ、エルナンデス隊の前方に出る!」
艦隊主力と合流した0001号艦も、今撃ち合っている目の前の艦隊目掛けて前進する。現在、この宙域にいるのは、エルナンデス隊を除いて350隻ほど。それがエルナンデス隊100隻の前に、立ちはだかる。
不明艦隊の砲撃が、ビシビシと飛んでくる。時折それが、バリアに触れる艦艇も見られる。第8艦隊の他の艦艇が出しゃばったことで、ようやくエルナンデス大佐が直接通信をかけてきた。
『何をする!砲撃の邪魔だ!』
それを待ち構えていたかのように、僕は応える。
「エルナンデス大佐!現時刻をもって、貴官を戦隊長、および艦長の任を解く!」
この一言に、さすがのエルナンデス大佐も言葉を失う。
「全艦に告ぐ!砲撃を中止!そのまま全速後退し、不明艦隊との戦闘を回避せよ!」
即座に、こちら側の砲撃が停止される。そのまま後退を始める450隻の第8艦隊。
だが、あちらは執拗に追尾してくる。距離を空けようにも、こちらが後退した分、あちらは距離を詰めてくる。
おい、エルナンデス大佐よ、どうしてくれるんだ?相手は相当お怒りじゃないのか?追撃を止めようとしない。このままでは、こちらのバリアが切れて、こちらが全滅するまで、撃ち続けるつもりじゃないのか。
そうなってはまずい。ならばむしろ、反撃に出た方が良いのか?だが待てよ、たった一つの迎撃システムをやっただけで、100隻現れたとも考えられる。ならば、もしあれを全滅してしまえば、今度はさらに100倍の艦艇が現れて……
ねずみ算式どころじゃないな、恐ろしい未来しか見えない。かと言って、いつまでも攻撃を受け続けるというわけにもいかない。どうするか……
と、そこに、叫び声が響く。
「何事か!?」
現れたのは、リーナ皇女だ。窓の外を見て、血相を変える。
「な、なんだ、この青い光は……?」
「リーナ殿、今は戦闘中だ。直ちに食堂へ向かい、そこで……」
僕がこの皇女様を非戦闘員が集まる食堂へ向かうよう言いかけた、その時だ。
「不明艦隊、砲撃を停止!」
それを聞いた僕は、窓の外を見る。さっきまで無数のビームが飛び交っていたこの宙域が、ただの真っ暗な星空に戻っている。
「不明艦隊から、ようやく離れたのか!?」
「いえ、距離は45万キロのまま、射程内です!」
「ならば、なぜだ……」
そのやりとりを聞いていたリーナ皇女が尋ねてくる。
「おい、何が起こっているのだ?」
「いや、こちらもよく分からないのだが……」
そんなやりとりをしているうちに、さらに仰天する内容の報告が飛んでくる。
「光学観測にて、不明艦隊の反転を確認!」
「は!?反転、だと!?」
「現在、横陣形のまま、回頭中!」
「なんだ、一体何が、始まったんだ……」
事態を把握しないまま、全長3、40メートルほどの艦艇の回頭を、モニター越しに見守る。それはちょうど180度回頭し、後ろ向きに変わったところで、ようやく回頭を停止した。
その後、さらに事態は不明瞭な方向へと向かう。
「ふ、不明艦隊が!」
「どうした!?」
「不明艦隊が、今度は後退し始めました!」
「後退!?後退って、まさか……」
「はい、後ろ向きなので、つまりこちらに接近しております!」
なんだ、何が始まったんだ。愕然とする艦橋内の一同をよそに、その不明艦隊はこちらに後ろを見せたまま接近し続ける。
「おい、さっきから不明艦隊などと言っているが、なんのことだ?」
「いや、いきなり、岩の塊のような艦艇が100隻現れた。こちらの一部が砲撃すると応戦してきたが、止めてしばらくして後退を続けていたら、今度はあちらが後ろ向きにこちらに接近し続けてきて……」
僕にも、何を言っているのか分からない。ありのまま、起こっていることをただこの皇女様に話すしかない。
その間も、あの不明艦隊は後退を続ける。特に攻撃をする意図も感じられないため、我々はそのまま待機し、不明艦隊の動きを監視し続ける。
で、それから30分後。距離はすでに、30キロまで迫っていた。
もはや、目視でもぎりぎり見えるくらいまで迫っている。横一線に並んだ光点が、窓の外に見えてくる。
そこで再び、不可解な艦隊運動が観測される。
「不明艦隊、陣形を転換!」
「なんだと?こんなところで、陣形転換だって!?」
実に奇妙なことだが、その様子は窓からも見える。横一線だったあの艦隊は、ちょうど目の前で円形に並ぶ。そしてそのまま後退を続けて……
気づけば0001号艦は、全長30メートルほどのこの岩の艦艇に、ぐるりと取り囲まれてしまった。
「……ジラティワット少佐」
「はっ」
「先ほどから、あの艦隊より何の通信も入ってこない。にもかかわらず、まるで我々と合流するかのように、接近してきた」
「その通りです」
「それが、どういう意図なのか、分かるか?」
「いえ、さっぱり……」
「そうだよな、分かるわけ、ないよな」
あの艦隊の配置を確認する。今、その艦隊は、大小2つの円形に配置されており、それがこの第8艦隊に食い込むように割り込んでいる。
いや、もっと正確に言えば、明らかにこの0001号艦を取り囲んでいる。
「ダニエラ!」
「はい!」
「この周辺にいる謎の艦艇を、捉えているか?」
「いえ……おかしなことに、全然、私の鏡に反応しないんです」
「そうか……砲撃管制室、カテリーナ!」
『……なに?』
「この周囲の艦艇から、気配を感じているか?」
『……感じない!』
我が艦にいる2人の賜物持ちが、揃ってこの100隻を感知できない。ということはつまり、前回と同じ、ということになる。
どうもこの艦隊からは、人の気配を感じられない。確かに、機械とは思えない艦隊行動だが、その後の行動が、明らかに人らしくない。
艦艇のサイズも30メートルほど。艦艇というより、小型の小惑星そのものだ。そこにただ、砲撃用の穴が空いているだけの簡素な艦艇。とてもじゃないが、居住空間など無さそうだ。我々の艦の格納庫ほどのサイズしかない。
一隻でも母艦のようなものでもいれば別だが、全てこのサイズの艦艇で、旗艦があるのかすら不明だ。一部、40メートルほどの大きさのものもあるが、人が乗るには十分とは言いがたい大きさだ。
こんなものが、我々と同じ砲撃に、バリアシステムまで備えているとか、到底信じられない。しかも、最初は砲撃を加えてきたくせに、突然向きを変えて、こちらの艦隊に合流してしまった。
だが、そのきっかけは、確かにあった。
そして、そのきっかけと考えられる人物は、たった1人だ。
「な、なんだ?おいヤブミ殿、なぜこちらを、じろじろと見るのか?」
僕の視線は今、艦橋の入り口付近で立っている皇女様に向けられている。この皇女様が艦橋に飛び込んできて、急にあの艦隊の動きが変わった。
おまけに、この0001号艦を中心に取り囲んでいる。
どう考えても、この皇女様が鍵だ。そうとしか思えない。
だが、それをどう証明しようか……
「リーナ殿!」
「は、はい!」
「貴殿はここに入る時、何か考えてはいなかったか?」
「……どういうことだ?」
「いや、そのままだ。些細なことでも構わない。その時、心に浮かべていたことを、可能な限り教えて欲しい。」
「うむ……」
考え込むリーナ皇女。だが、思いの外早く、口を開く。
「あの青い光の筋を、私は一度、見たことがあった」
「えっ?あの光を?どこで」
「ちょうどテイヨと共に、この船に乗ることになるその前の晩に、急に夜空に数本の青い光の筋が現れたのだ」
ああ、それはおそらく、我々があの自動攻撃してきたあの小惑星を撃墜した時だろう。今思えば、あれが今回のこの謎の艦隊を呼び寄せた一因だろうが。
「で、あの青い光の筋を見た時、その時のことを思い出していた」
「なるほど……で、その時に何か、考えていなかったか?」
「なんだ、考えとは」
「いや……なんていうか、強烈な思いというか、嘆きや悲しみというか」
「そうだな、確かに、考えていたことはある」
「何を考えていたんだ?」
「ちょうどその翌朝に、我々は隠れていた炭焼き小屋を追われ、最後の護衛の部下が、私の身代わりとしてその場に残った。もしあの時、第8軍の他の兵士らが現れたなら、彼らを救えたのではないかと。一瞬だが、その想いが心を過ぎった」
「ああ、そうなのか……」
どうして僕は、リーナ殿にそんな細かいことまで尋ねたのか、実はよく分かっていない。だがなんとなく、もしこのリーナ殿が鍵だとするならば、そのきっかけとなる何かがあるはずだと感じたからだ。
本人の存在だけがきっかけならば、この0001号艦が現れた時点で砲撃を停止するはずだ。が、リーナ殿が艦橋に現れてから、その直後にあの砲撃が止んだ。特にそれらしい身振りをやったわけでもないし、呪文などを唱えたところで宇宙空間に声は通じない。となれば、届くのは思考のみだと思った。
だからこその、今の質問だ。
「……まさかとは思うが、リーナ殿の思考に反応して、この艦隊が急に行動を変えた、ということなのか……」
「おいヤブミ殿、何か言ったか?」
「あ、いや、たいしたことではない。それよりもだ」
「なんだ」
「外に並んでいる、あの岩の塊のようなものに向かって、前に進めとか、そういうことを命じてみてはくれないか?」
「は?」
「あ、いや、ちょっと試したいだけだ。僕の直感が当たっているならば、何か動きがあるはずだ」
「うむ……その程度のこと、やらないではないが……」
妙なことを頼むものだと思っているだろうな、この皇女様は。まあいい、これではっきりする。
「……ところでヤブミ殿よ。一つ、相談があるのだが。」
「相談?」
「あれに何か命じよと言われてもだ、なにか呼び名はないのか?」
「呼称か……そうだな、不明艦隊ではおかしいし……」
「どうせなら、フィルディランド皇国の皇族に相応しい名前が良いな。なにかないか?」
この皇女、案外贅沢だな。そんな呼称が、急に思いつくわけがないだろう。うーん、艦隊の呼称か……と、僕の脳裏に、ある言葉が浮かぶ。
「良い名がある。オオアタケ艦隊、というのはどうか?」
「オオアタケ?なんだそれは」
「僕のいた国の英雄が、とある水軍を破るために建造した、大安宅船というのがある。それに準えた名前だ」
「うむ、奇妙な響きだが、まあよかろう」
自分でも、奇妙なネーミングだと思う。この駆逐艦よりもずっと小さい艦艇の集団に、「オオアタケ」と名付けた。真逆過ぎる。
が、史実での大安宅船の艦隊は、モウリ水軍を圧倒したという。そういう意味では、我々は少なくともこの小型船集団に圧倒されたから、あながち根拠のないネーミングでもない。
僕のこの即興で思いついた名前を気に入ったかどうかは分からないが、ともかくこの皇女様は窓際に向かう。そして、叫んだ。
「オオアタケ艦隊、前進!」
◇◇◇
突然、この船を囲んでいたあの岩のような船らしきものが、突然、私の掛け声に反応するかのように前進する。
「ぜ、前進しました!不明艦隊、前進を開始!」
「やはり、そうだったか……思った通りだ」
「艦隊、再び横陣形に展開!相対速力300!さらに増速中!」
「リーナ殿、今度は後退を命じてくれ」
「あ、ああ……オオアタケ艦隊、後退せよ!」
今度は猛烈な速度で、それが戻ってくる。このままではぶつかると直感した私は、思わず叫ぶ。
「と、止まれ!」
すると、横一線に並んだあの岩の集団は、この船の手前でぴたりと止まる。
何が起きているのかが、私はまるで腑に落ちていない。だが、気味が悪いほどに私の意のままに動くあの岩の集団。
「これではっきりした。間違いなくあれは、リーナ殿と連動している」
「は?だがヤブミ殿、私にはあのような岩の知り合いなどおらぬし、だいたいこの宇宙というところにすら出たのは初めてだぞ!」
「といっても、あれが急に動きを変えたのはリーナ殿がこの艦橋に入って来たタイミングとぴったりだったし、この艦の周りにだけ集まろうとする。まるで、この艦を守ろうとするが如くだ」
いきなり私は、あの岩をまるで使い魔として使えるようになってしまったらしい。だが、そんなことを言われても、私にはまるで実感がない。
「まあ、いいか。一時はどうなるかと思ったが、これで戦闘をする必要がなくなった。ジラティワット少佐、全艦に伝達。砲撃戦、用具納め。全艦後退し、通常態勢に移行」
「はっ!」
あのジラティワットという男が、何やら手元の仕掛けに向かって何かゴソゴソとやっている。すると外にいる駆逐艦が一斉に、後ろへと下がり始める。
窓の外を眺めると、私が従えるあの不思議な岩よりも、多数の駆逐艦が並んでいるのが分かる。あれを全て、ヤブミ殿が率いているのか。
あの無数の岩だが、どういうわけか、この船の後をついてくる。まるで、羊の群れのようだ。もしあれがヤブミ殿の言う通り、私が操っているのだとすれば、さながら私は、羊飼いか?
そして、しばらくすると私の乗るこの船は、呆れるほど大きな岩に向かって接近を続けていた。
「なあ、ヤブミ殿……あの灰色の大きな岩は、なんだ?」
「あれが我が補給基地である、戦艦キヨスだ」
「戦艦……キヨス?」
今日はどういうわけか、岩に縁があるらしい。操れる岩に遭遇したかと思えば、これからあの岩の中にこの船を寄せて、あれに潜るのだという。
不安と呆れと自身の身の上の儚さとが錯綜する心を抱えたまま、私を乗せたこの船は、その岩へと向かう。




