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93.温室と転生者

 後日、ガイナスさん経由でラングさんから手紙が届いた。

 例の一件についての謝罪とお礼。

 手紙二枚分に渡るのろけの後に、温室についての情報が書かれていた。


『あくまで噂として聞いた情報である』と前置きをしてから、温室のドアが開く条件は『鍵』と『魔法認証』の2パターンあるらしいと教えてくれた。魔法認証の突破条件はラングさんも知らないらしいが、真に選ばれし者は鍵がなくても入れるのだと言う。


 つまり私が所有している鍵を使用せずとも温室に入ることが出来たのは『魔法認証』を突破したからではないだろうか?


 またグルメマスターは私と他の鍵を所有している可能性の他に、魔法認証を突破した可能性も発生する。

 私の中で『真に選ばれし者』とは『転生者』のことではないか? という仮定が生まれた。


 転生者なら誰でもあの温室に入ることが出来、他の生徒達が足を踏み入れることが困難だと言うのならば、あの場所こそグルメマスターと接触するのに絶好の場所なのではないだろうか?



 ガイナスさんが不在の日、私は決まって温室へと向かう。

 グルメマスターが温室にやって来る日は決まって同じ曜日だ。


 その曜日に温室に来なければ、王子と食事を取っている。

 都合が付かなければ温室ランチに切り替えているのだろう。


 彼女を温室で見かけるのもこれで4回目だ。

 身を隠しながら昼食を取っているが、やはり彼女が不審な行動を取ることはない。


 完全に一人だと油断しているのか、たまに前世の踊りを踊ったり、歌を歌ったりはするがその程度だ。

 何か企てをしている様子もない。


 一応、温室に来る度にステータスを確認しているが、大きな変動はない。現地人と比較すれば高い程度で私とのステータス差は依然として大きい。偽装しているかの判断もつかない。



 彼女もまたチート持ちなのだろうか。

 そのチートでグルメマスターの地位を築いたとか?


 警戒した所でいつみても王子といちゃついているだけだし。

 筋力が上がるのと比例して、距離が近づいたくらいの変化しかない。


 けれど何か思惑がある可能性も完全には否定できない。

 なにせリーリアさんが口にした『桃色の髪のロザリア』は、エドルドさんの調査にも引っかからなかったのだ。さらに思いを通わせ、毎日ラングさんと盛大にいちゃついているリーリアさんは『ロザリア』という少女の存在を知らないというのだ。自分で口にしたことすら覚えていない。彼女が怯えていたのは格好よく誰にでも優しい婚約者が他の女性に目移りしないか、なのだと。


 まるでロザリアの存在を隠しているようだ。

 ガイナスさんもそう感じたらしいが、それ以上聞き出すことは出来なかったのだという。


『ロザリア』の謎が残っただけ。

 そんな状況だからこそ、無害に見えるグルメマスターも警戒せざるを得ないのだ。


 ゲームらしい世界のことだ。

 案外『ロザリア』がゲームシナリオで重要な役割を起こすのかもしれない。

 私がそのゲームを知らずにイレギュラーな行動を起こしているだけで、世界の歯車は正常なシナリオに戻ろうと動き出しているのかもしれない。


 どう考えてもこの世界の重要人物第一位は『グルメマスター』にしか見えないのだが、同じ転生者なら何か知っているかもしれない。


 メリンダとして話しかけられたのは消しゴムの一件だけだが、ロザリアスタイルで登場すれば素の姿を晒してくれるかも?


 我ながら良いアイディアかもしれない。

 何か問題が生じた所で、どうせ『ロザリア』として学校に通うことはないのだ。

 ステータス欄を一部偽装してから姿を現せば、リスクは最小限で済む。


 だがそれだけでは足りない。

 どうせなら思わず素が出てしまうような、相手に警戒されるような姿で登場しなければ。


 サンドイッチを食べながらウンウン唸る。

 けれどなかなか良いアイディアは浮かんでこない。


 糖分が足りないのだろうか。

 ポイント交換でコーラを取り出して、腰に手を当てながら一気に飲み干す。


 ぷはぁと息を吐き出せばグッドアイディアは私の頭に降臨した。

 踊り子の彼女にぴったりな登場シーンで、登場BGMもバッチリ。かつ警戒される格好。


 全てを兼ね備えたパーフェクトスタイルだ。

 アイテム倉庫にコーラの空き缶を投げ込み、次のグルメマスター訪問日までに装備品を完成させようと温室を後にした。


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