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4.通知機能

 攻略ガイドによって異世界の知識を十二分に手に入れた私は地図を元に大きな町へと向かった。

 3つほど村と小さな町をスルーしたのは、冒険者登録が可能な冒険者ギルド支部がなかったから。

 どうやらこの世界、ギルドは至るところにあっても登録が出来るのは大きめの支部だけのようだ。


 かつては全てのギルドで登録可能だったようだが、数十年前にルールが改訂されたようだ。

 その理由の一つが1年以内の死亡率の高さにある。一攫千金を狙える冒険者職を志願する者は多いが、収入が高いクエストは大抵が危険を伴うもので、その多くは魔物の討伐やドロップ品の回収だ。


 どうやら私の出身村だけではなく、この世界の住人は魔法を使えないのが一般的らしく、冒険者の多くがその肉体の力のみで魔物と対峙しなければならない。


 それも私の何十、何百分の1のステータスで。

 だから国は気軽に冒険者になれないよう、登録可能場所を絞ることにした。

 登録には登録料が必要で、ステータス提示が必要。

 場合によってはお金を用意出来ても冒険者にはなれないケースがあるらしい。


 これは幼い子どもや身体の弱い人が冒険者になるのを防ぐ狙いがあるのだろう。


 また大きな仕事を受ける場合にはこちらからお金を払う必要があるらしい。

 そのお金はギルドが保管し、仕事が達成された場合には冒険者に返金。一部達成の場合には割合に応じた報酬と共に一部返金。そして果たされなかった時には一切返金なしで、そのお金は次に仕事を受ける冒険者への報酬に上乗せされるらしい。


 これにより死亡者の割合は一気に減ったとガイドに書かれていた。

 なんとも考えられたシステムだ。



 だがここで一つ問題がある。

 おそらく私のステータスで冒険者になれない、ということはないだろう。だがこの異常なステータスを見せることによって騒ぎになる可能性はある。


 騒がれるだけならまだしも、恐怖され、仕事がもらえないなんてことになればこの世界での暮らしの幅が狭まってしまう。

 そう考えた私はテントにこもって、交換出来るステータスの中から何かいいものはないかと探った。


 そして見つけたのは『偽装』スキル。

 名前の通り、好き勝手に偽装出来るスキルだ。レベルに応じて偽装出来る物や数は違うが、レベルなんて何度も試しているうちに勝手に上がるものだ。



 早速偽装スキルを交換し、手に入れたスキルでステータス画面の偽装・解除をし続けた。非常に地味な作業だが、決して無駄ではない。連打し続けて、ピコーンと音が鳴っては広がった範囲を確認し、再び作業に戻る。その繰り返しだ。

 ご飯を食べている最中ももちろん手を止めず、魔物を狩っている最中も画面を横にずらしては連打し続ける。

 いい加減指が痛くなってきた頃にピコーンという音ともに通知画面が目の前に表示された。




「〈『解錠』を使ってみませんか?〉 ってなにこれ?」


 確か『解錠』は私の記憶がよみがえるよりも前から持っていたスキルだ。

 見る限り、あの村には錠前なんてなかったのになぜかレベルが10もあった不思議なスキル。

 将来鍵開けに困った時にでも使おうかな、くらいにしか思っていなかったのだが、なぜこのタイミングで未使用アプリの使用を促すような通知が来るのだろう。


 時間制?

 それともランダムなのか。


 そもそも誰が通知なんて送ってきたのかも分からぬまま、一度『偽装』の手を止めて、『詳しくはこちら』のボタンをタップする。

 すると交換一覧に並んでいるスキルページに書かれているのと同じような説明が表示された。


「えーっとなになに? 『解錠:レベルに応じて様々なものを開くことが出来ます。高レベルを取得すると錠前マークがあるスキルを向上させることが出来るようになります』……ってマジで?」


 錠前マークってレベル表示の横についているマークのことでしょう?

 マークがあるものとないものがあるのは不思議だったんだけど、まさかこんな身近に謎を解くスキルがあったなんて!


 攻略ガイドにはそんなこと書いてなかったんですけど!

 そもそも書かれていたのは村や町、国の地図と魔物の説明、世界観設定などなどで、スキルの個別説明は一切なかった。

 全てを知った気でいたが、攻略ガイドも全てを網羅している訳ではないようだ。


「通知機能ありがとうございます!」

 誰かも知らぬ通知主にお礼を告げて、ステータス欄の錠前マークをタップする。

 すると〈『解錠』スキルを使用しますか?〉という通知が表示され、迷わずYESボタンを押した。

 するとなんということでしょう。

 私が何時間もタップしてようやく1上がったレベルがわずか2タップで上昇しているではありませんか!


「解錠スキル、最高!」

 使用予定未定だったスキルの魅力に囚われた私は錠前マークのあるスキルを端からレベル上げしていった。どれもレベルは10どまり。ガイドによると現状のレベルカンストラインはここなのだろう。


『未知なる領域に足を踏み入れることも出来るぞ!』なんて書かれていたから、何かを達成することで10以上のレベルも取得出来る可能性はあるが。


 今の最大値でどこまで出来るのか。

『偽装』スキルを発動させ、ステータス画面をいじってみた。すると好き勝手に数値をいじれるようになっていた。下方修正からスキルの非表示、未取得のスキルの追加までお手の物。これなら誰に見られても大丈夫なスキル欄も作れる一方で、威嚇目的の物も作れる。


 早速ステータスは10前後に、スキルはファイヤーボールをレベル2表示に偽装し、残りは全て非表示にした。もちろん称号と職業は全て非表示にした。

『職業:狩人』とか『称号:逃亡者』なんて見られたら何を言われるか分かったもんじゃない。それに子どもは職業と称号を持たないのが一般的ってガイドに書かれていた。


 ガイド様々ね!


 チート道をまた一歩進んだ私は森を抜け、今度こそ冒険者への一歩を踏み出した。


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