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47. 新生活は8~18時

 翌日から私は8~18時の学園生活を送ることとなった。

 ガイドブック? を参考にいくつか授業を増やしたため、予定以上に詰まってしまったが、オリエンテーション授業の週なんてこんなものだろう。

 ちらほらと姿を消していく学生達を横目に、私は授業内容をプリントにメモしていく。


 スキルの取得って多分この段階で行われるのだろうと、前期予定を見ながら当たりをつける。

 それ以外の講義予定も興味が持てそうかではなく、睡眠時間にならずに済むかを前提として判断していく。

 人数が少なく、先生も人が良さそうなこの授業はとりあえず続行、っと。

 メモの端にマークを残して、唯一の欠点へと視線を向ける。


 実はこの授業の受講者が少ないのには訳がある。

 廊下を挟んで向かい側でも授業が行われているのだが、そこにグルメマスターが出席しているのだ。

 まだオリエンテーションのため、本格的に受講するかはまだ定かではないのだが、教室の席を取り損ねた生徒達が教室の外に溢れている。

 彼女の授業を邪魔しないよう、声を押さえてはいるのだろうが、いかんせん人数が多すぎる。

 壁を挟んでも聞こえる声に、ドア側の席を取ったのは失敗だったかもしれないと反省する。

 彼らも悪気はないのだろうし、授業の邪魔になるようだったらあちらの教室の先生や生徒達が注意することだろう。

 少なくとも私の前で授業予定を説明するやや高齢の先生が気にしている様子はない。

 来週もこの人数しかいないのであれば、次回から窓側の席に移動するのも手だろう。

 あぶれた生徒がこちら側の教室にやってこなければ、の話だが。

 これ以降の授業も、グルメマスターの存在を踏まえた上で選択する必要がありそうだ。今はまだ向かいの教室ではあるが、選択希望科目が被ったら受講は見送ることになるだろう。

 案外、時間割に空白が出来そうだな~なんて思いながら、チャイムの合図で教室を後にするのだった。



 それからやはりというべきか、グルメマスターが足を運ぶ授業はどこも早々に定員オーバーとなっていた。教室の座席を満たすほどの受講希望者が集まるなんて、教える側も先生冥利に尽きるというものだろう。

 先生がグルメマスター信者ならば泣いて喜んでいるかもしれない。

 先生や隣前後の生徒が失神せずに授業を受けられればいいが。

 オリエンテーション3日目にして7つの授業で席を獲得出来なかった私は別の教室へと足を運ぶ。


 今回は『薬学一般』から『植物学』へ。

 第二化学室から植物室が隣接さえた生物室へは意外と距離が離れている。3階の端から1階の端までの移動は、運動不足気味な私には良い運動になりそうだ。座ってばかりじゃ身体も鈍ってしまう。大股早足で廊下を闊歩し、生物室へと辿り着いた時点で自分の失態に気がついた。


「メリンダ=ブラッカー……」

「義弟さん……」


 決して意図して避けていた訳ではないが、まさかここで出会うことになるとは……。


 この時間帯、男子生徒が受けられる授業は5教科も存在する。

 単純計算で遭遇率は20%。

 だが昨日一昨日と理系の授業に足を運んできたが、遭遇していないことを考えると確率はもっと下げてもいいだろう。

 そのたった二割以下の確率を引き当ててしまった私はなんとも運が悪いようだ。

 ここで受講を決めれば半年はこの時間、義弟さんと遭遇することになると思うと、自然と足はその場にピタリとくっついてしまう。

 けれどそれは義弟さんも同じことのようで、嫌なものを見てしまったと歪めた顔を保って、その場から動こうともしない。


 お前が諦めろとでも言いたいのだろうか。

 だが同時刻に行われている科目のうち、二科目は男子生徒のみの受講で、一科目は定員オーバー。残る一つは算術だ。算術なんて、前世で義務教育期間中がっちりと算数と数学を教えられてきた私には不要である。今さらそろばんの使い方を教えられたところで頭に芽が生えるだけだ。

 それなら空きにした方がマシ。

 だけどここで一コマ犠牲にするのも……。

 今のところ、グルメマスターとの授業かぶりはおよそ半分。今日はこれで終わりだが、明日明後日でどれだけ被るか分からない。易々と引き下がる訳にはいかないのだ。


 私と義弟さんは互いに無言での威圧を行っていた。

 けれどあっさりと終わりを告げる。


「あ、受講希望者さん? さぁ入って入って」

 チャイムが鳴ったことでドアを閉めようとやってきた先生に回収されるように二人揃って中へと入る。

 生徒は決して少なくはない。むしろグルメマスターが受講していない教科にしては多い方だ。

 私が入ってすぐの席に腰を下ろすと、義弟さんはスタスタと真ん中まで進んで空いている席に決めたようだった。


 これだけ離れていれば同じ授業を受けているからといって、気にすることはないのかもしれない。


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