漫才「診断書」
漫才8作目です。どうぞよろしくお願い致します。
この作品は、youtubeにも投稿しております。
診察室の中。
「次の方どうぞ」
「失礼します」
「今日はどうなさいました?」
「診断書を書いて欲しいんです」
「診断書?」
「しばらく休みたいものですから」
「どこか具合でも?」
「いいえ」
「健康です、とでも書いておきますか?」
「それは困ります」
「目的はずる休みですな」
「何も言わず一筆お願いします」
「風邪だと一週間ですかね」
「できれば長い方が」
「鉛中毒で数か月」
「は?」
「大麻中毒で数カ月から数年」
「そんな診断書、持って行けませんよ」
「長期療養の代表は骨折ですね」
「じゃあ骨折でお願いします」
「単純骨折にしますか? 複雑骨折にしますか?」
「どっちでも構いません。一か月くらい休めればいいんです」
「じゃあ単純骨折でいきましょう。腕にしますか? 頭にしますか?」
「脚にしてください。その方が患部を隠しやすい」
「じゃあ、脚を前に伸ばしてください」
医者が立ち上がって、椅子を振り上げた。
「何をするんですか」
「骨を折るんですが」
「やめてください。書類の上だけでいいんです」
「ほんとじゃないと、書く気にならんのですよ」
「そこをなんとか。頑張って書いてください」
「理由だけでも聞かせてもらえませんか?」
「オリンピックです」
「ほう」
「チケットを申し込んだところ、何種目か当選しましてね」
「それはラッキーでしたね」
「オリンピックを楽しみなさいということなんでしょうね」
「仮病を使ってですか」
「せっかく回ってきたチャンスなんですよ、全部観たいんです」
「全部?」
「ええ。もちろんテレビ観戦も含めてですけどね。どっぷりと一か月間オリンピックにひたるつもりです」
「ちなみに卓球のチケットはありますか?」
「ええ、あります」
医者が身体を乗り出す。
「あなたは運がいい。医師として私が同行することを条件に、診断書を書きましょう」
読んでいただき、どうもありがとうございました。