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007:封印解除


 ……さて、大体の計画は練った。プラン的にはこんなトコだな。


「よし、ルートについては大体決まった」


「おお、こっちはいつでもいいぞ!」


 全体としては、動き始めと中層から上層のめんどくさいトコをうまく抜けられるかどうかが鍵っぽい。

 あとはやたら嬉しそうなお嬢様の様子を見ながら、うまく状況に合わせていく感じかね?


 ……まあ、なんとかなるだろ、出たとこ勝負だけどな。


「一応、動きなんかの基本事項だけ教えておくぞ」


「そういう事ならなんでも言ってくれ」


 あー、完全にはじめての冒険かなんかで待ちきれないお子様みたいな顔になってやがる。

 コレ、一応は倒壊する遺跡から逃げ出すっていう絶望からの脱出プランなんだけども。

 いやまあ、封印から出るってなるとそれだけで興奮するのはわかるけどさ。




 ―――ってことで、一通りのことはレクチャーした。




「障害物の基本的な超え方は覚えたな? あと、ココのルートをしっかり覚えたなら大丈夫だと思う」


「うん、それなら問題ないと思う」


 いくつか動きを試させてみたが、思ってたよりずっと運動能力は高そうだ。コレならだいぶ楽にいけると思う。

 見た目があまりにもお嬢様だから箱入り娘みたいにも思っていたが、運動能力自体はかなりのものだ。

 魔術師のローブとかドレスとかみたいなこの服装で、普通はそんな動けないと思う。さすがは魔物様だって言うことかもしれない。


 まあなんにしても、大丈夫だって保証付きなのはわかるが、それでも心配して損はない。

 なぜって、そういう俺の心配や保険こそが運命かもしれないからだ、畜生。


「よし……それじゃ、そっち始めてくれ」


「なら始めようか。戻ったら、前と同じ手順を踏んでくれれば封印が解けるのでよろしく。じゃあ、いくぞ……」


 その声とともに、俺の意識とともに周りの景色も歪んではっきり認識できなくなる。

 魔法陣とか呪文とかそういうのもなしにこんなのできるのか、すげえなおい。


 前後左右がなんなのかわからなくなり、寝てるんだか起きてるのかすらわからなくなる。


 ……気がつけば、俺は当たり前のようにダンジョンの最下層で封印を外しに来ていた。

 いままで未発見だった隠し部屋の中央には、いくつかの仕掛けとともに、中央に封印らしきものが並んでいる。

 さっきまで会話してた記憶があるのに、はじめてココに来た感じはすごく違和感がある。

 どうなってんだかさっぱりだが、俺にはそんな理屈はどうでもいい。


 俺は、まず右の仕掛けを3つ進めて2つ戻す。

 真ん中を一度外して、左と右を入れ替える。

 そして真ん中を入れ直し、左を3つ右を2つ進めて真ん中を押し込んだ。


 うん……この仕掛けを外したらダンジョンがぶっ壊れるって分かっててやるのは、すげえムカつく。

 他の情報があるわけじゃなし、前にやったことのトレース以外に余計な事やって予定狂っても困るからやるしかないんだけど。


 ガタンと音が響くと、中からゴトゴトと大掛かりな音が聞こえる。

 封印がひび割れ、中から光があふれるとともに、ダンジョン全体に地響きが起こり始める。

 あー、前の俺はこの光で封印に取り込まれたかなんかで、そのまま気を失ったんだな。


 だが、今回はなにが起こるかわかっている。

 お嬢様が封印を破って、このクソッタレな世界にやってくるってわけだ。


 光が渦巻く魔法円とともに乱舞し、その中に人の型を作り、それが徐々にヴィーデに変わっていく。


「よう、ひさしぶり」


「ああ、ほんのわずかの間だけど、知ってる顔とまた出会えるっていうのは本当にいいことなんだな! こんなに興味深いとは思っていなかった。そして、改めてこちらでもよろしく、エイヤ」


「おう、よろしくなヴィーデ」


 他愛ない挨拶だが、それでも現実の世界で顔を合わせたって意味では初顔合わせだ。

 さっきまでのは謎の別空間とかそういうやつぽいからな。ヴィーデにはあまり変わらないかもだが、俺は人間だから物質や感情にとらわれて構わない。

 それに、どっちにしろやっとのことで封印から出たんだ、挨拶くらいあっていい。


 ……だが、おめでとうを言うのはあとだ。


「さて、じゃあ行くぞ、走れ!」


「うん!」


「3ブロックほど駆け抜けるぞ、なにもなさそうなところにヤバいやつがあるから、考えずにとにかく俺と同じ場所をたどって来い」


「わかった!」


 俺が先導して、ヴィーデがついてくる。

 実際、下層から中層まで走破してわかったのは、そのへんの連中なんかより、よっぽど優秀だってことだ。


 驚いたことに、実際の彼女の身のこなしは予想以上にちょっとしたモノだった。

 お嬢様どころか、熟練の冒険者や探索者に匹敵すると言っていい。

 激しい揺れで足場がぐらつく中、障害物を物ともせずにクリアし、幾つかの仕掛けも難なくこなし、軽々とついてくる。


 特に、深い溝を飛び超えるって時に、まるで躊躇がないのが人間離れしてる。

 距離が飛べるなら飛び越えられて当然。風が吹き上げるとかの影響なんかも考えてるっぽくて、出来るから気にしないと言った感じだ。高さに対する恐怖感とか一切ない。

 おそらく、本人の中でただの状況の一つとして捉えていて、高いからと言っても、他の状況と比べてまったく差がないんだろう。


 疲れないと言っていたから息切れもないのだろうし、そう考えると運動に関する発言はだいぶサバを読んでいたか、嬉しい勘違いだってことになる。

 おかげで、だいぶマージンは稼いだと思う。


 思うが、そういったことで気を抜いちゃいけない。倒壊ってやつはだいたい、脆いところから崩れるもんだし、連鎖して崩れるもんだ。

 階層が浅いところのほうが、下層崩壊の影響で危険な可能性もある。

 それに、たぶん魔術的な仕掛けで壊してるんだから、どういった順序で壊してるかはわからない。


 わかるのは、可能な限り早い方がいいってことだけだ。


「こっから難所だぞ、気をつけろ」


「なるほど。いままでのような感じで、特徴的な場所があるということか」


 覚えもいい。

 まあ、運命を操るようなやつだから、きっと普段からだいぶ複雑なことをやってるんだろう。


「ココから2ブロック、ちょっと大掛かりな罠があるんで、俺の足跡をトレースしてたどってくれ。ここまでそんだけ優秀ならイケると思う」


「足跡をなぞればいいんだな。了解した」


 右床、右床、左壁、左床、右壁、左床の順に跳んで見せる。


 ココは間違うと通路が崩落する恐れが出るようなちょっと大掛かりな仕掛けがある。

 おかげで床に踏める場所が少ない。

 丁寧なマーキングの余裕があればもう少し楽なんだが、いまはその時間が惜しい。


「右、右、左、左、右、左……と。これでいいんだな?」


「あ、おい……油断するな!」


 トレースは正確だ、申し分ない。

 けど、左床のあとに【そのまま右床にも足を置く】やつがあるか!

 間に合ってくれ!

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