000:黒鷲のエイヤ
新連載です!
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「ああ、やっとだ……ついにここまで来たってもんだ」
制覇されてない古代のダンジョンを探し、この罠だらけの遺跡を、ついに一人で最下層までたどり着いた。
苦節26年。
スラムの孤児から始まって盗賊稼業。
そして、駆け出しで無名だった俺が、盗掘や探索のプロとして修行を積んで【黒鷲のエイヤ】と呼ばれるようになって4年。
思えば、俺みたいな一匹狼の盗賊風情が、ここまで来るのに苦労したってもんだ。
まず、この手の未発掘情報ってのは、まず情報が出回りにくい。
だから、古代の文献を探しまくり、財宝が眠るっていう断片的な情報から、古文書を片っ端から読みあさるハメになった。
そこから、今度は踏破するための準備。
俺にはパーティなんて呼べる仲間は最初からない、だいたい俺が合わないか向こうが合わないかどっちかだ。せいぜい、依頼で道案内程度。
だから、必要な装備は一人で揃えた。
なにより、俺には「物がよく見える」っていうスキルしかない。
使い勝手はともかく、とくに威力があるわけでも強くもない。せいぜい目ざといって感じのレベルだ。
だから、他の連中みたいに、正面切って派手な立ち回りをやるってのは性に合わない。
おかげで、いつも裏から這い回るのが関の山だ。
いつの間にか、人の隙間や影にいるほうが馴染んじまった。
「だが……俺は、やり遂げたんだ!」
ココまでの罠は、全部避けるなり、外すなりしてきた。
罠だらけなら、逆に魔物とかそんなものはいないってのも幸いだ。
素人目にはわからねえだろうが、これでもすげえ高難度のダンジョンなはずなんだぜ?
そんな場所も、俺様にかかれば……ってな。
今まで、なにかとうまくいかないことばかりだったが、そんな人生経験と熟練のなせる技と言える。
あとは、この仕掛けの封印を外すだけで、伝説の宝とご対面ってワケだ。
手順だって完璧に把握してる。
まず、右の仕掛けを3つ進めて2つ戻す。
真ん中を一度外して、左と右を入れ替える。
そして真ん中を入れ直し、左3つに右を2つ進めて……真ん中を押し込んだ。
―――俺の記憶は、そこで途切れた。