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ショートショート・ラヴストーリーズ  作者: ロミコ


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19/21

煙草男と帰り道

 




「今夜、満月だね」



 少し先を歩くゆかりが、立ち止まって空を見上げてた。



 同じく立ち止まり、同じ方向を見上げる。



「明るいな」



「ね♪」



 再び歩き出す彼女の、少し後ろをついて歩く。



 長い髪を頭のてっぺんでお団子にして、大きく開いたボートネックからは



 白く綺麗なうなじが見える。



 インディゴブルーのスキニーに、ぴったりと包まれたまぁるいお尻。



 俺は、女はお尻の大きめな方が好みなので、見ているとイケナイ気持ちになる。



「会社の子に、迎えに来てくれる彼氏、良いなって言われちゃった~」



 今夜は飲み会、イヤ、女子会ってやつがあって、きっと男子には聞かせられない話とか男子は聞きたくない話とか、色々してきたんだろう。



「迎えにって言ったって、駅まで10分じゃん。大したことじゃないよ」



『今から帰るね』とLINEがあった時、ちょうど煙草が切れてるから、買いに出るついでに『迎えに行きます』と返信したのだった。



 訂正 「迎えに行く」が本件で、「煙草を買う」が別件ってことで、ひとつよろしく。



「だから~」



 ゆかりは後ろで両腕を組んだまま、後ろを振り返りふふふっと笑うと擦り寄ってきて、俺の腕に腕を絡ませた。



「その10分を惜しんで、逆に大した距離じゃないって放置する男が多いんだってば~」



「ふぅん。そうなんですか」



 って言うか、俺の肘に柔らかくて気持ち良いものが当たってるんスけど。





 小さな川沿いの道を、風に吹かれながら黙って歩いた。



 聞こえるのは、俺の雪駄を引きずる音と、ベルトループに下げたシルバーのキーホルダーの鳴る音だけ。



「それ、好きだな」



「ん?」



「ケンちゃんの、シルバーアクセサリーがチャリチャリいう音」



「ああ」



 シルバー同士はぶつかると良い音がする。



 コンビニが見えてきたので、煙草を買って出る。



 肘にあった柔らかいものは、俺を離れ、また数歩先を歩いていた。



 どうやら、もう俺の肘を温めてはくれないようだ。



 残念に思いながら、立ち止まり、早速煙草に火をつけた。



 ほかには誰もいない、俺とゆかりしか存在しないみたいなこの夜に煙草に火をつける。



 雪駄の音が止まったので、ゆかりが振り向いた。



「早速ですか?」



「早速です」



 深く吸い込んで、ゆっくり吐き出す。



 そしてそのまま――火がついたまま――携帯灰皿へとしまった。



 家に着いたらまた吸うのだ。



 再び歩き出すと、ゆかりと並んだ。



「わたしねぇ、ケンちゃんが煙草吸ってる姿、好き~」



「俺はいつ、お前に煙草を吸う男はやっぱり嫌いって言われるんじゃないかと、戦々恐々としてるよ」



「ふふふ。でも、同じ部屋では吸わないね」



「そりゃ、まぁ。煙いですから」



「気使ってるの?」



「あなたが変われば、マナーは変わる。ですから」



 ゆかりが声をあげて笑った。



「おっと」



 足元に落っこちていた、小さな子供の靴の片割れを拾うと、ポンポンと埃をはたくと、落とし主が気づきやすいように塀の上に置いた。



 その作業をじっと見ているゆかり。



「ケンちゃんのそういうとこ、好き」



 俺は笑った。



「なんか、さっきから好き好き言われてるね、俺」



「あは。ホントだ。



 わたし、ケンちゃんのホニャララが好きなんじゃなくて、ケンちゃんが好きなんだね」



「それはどうも」



「それだけ~?なんか素っ気なくない~?」



「いや、素っ気なくないです」



「ちゃんと判ってるの~?」



 ほっぺたが膨らむ。



「うん。俺のことが好きで好きで仕方ないんでしょ」



 そう言って、膨らんだほっぺたをつついた。



「も~」と照れてぶつ仕草をしてくる手を掴んで、ゆかりの耳に顔を寄せると



「俺も好きだよ」と素早く言った。



 そのまま、手を繋いで歩く。



 横目で見ると、満足そうなニヤニヤ笑いをしていた。



 それを見て、俺も笑った。



 好きだと言うのは、やっぱ照れくさい。






 帰ったらイケナイことできたらいいなぁと思いながら



 好きな子の手を引く満月の下。











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