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ショートショート・ラヴストーリーズ  作者: ロミコ


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18/21

『JEALOUSY “platinum”』

前回の主人公の彼女の気持ち。

 




 車の中、ユウヤの苛立ちが棘となって突き刺さる。


 完全に私を頭の中から追い出して煙草を吸っている彼の、首に腕を回して肌を合わせているから判る。


 その態度が切なくて、余計にしがみ付く腕に力を込める。


 煙草の煙を吐き出す息遣いが、まるで溜息をつかれているみたいで嫌。


 ユウヤが片手で私の頭を支えながら、自分の身体を少しずらして


 煙草をもみ消す気配がする。


 あ、くる・・・・。


 そう思う。


 そう思った途端、やっぱり彼が口を開いた。


「ほら、そろそろ帰らないと彼が心配するよ」


 言って私の身体を引き剥がし、肩を叩いた。


 これが私には『早く帰れよ』に聞こえて、嫌になる。


「やだ、もうちょっと・・・」


 そう抵抗して、頭を彼の肩と首の間に埋める。


 この場所に、こんなにぴったり収まるなんて


 ユウヤが私の帰るべき場所で、運命の人なんじゃないかと思ってしまう。


 顔を上げて、彼を見るとすぐに顔をかがめてキスをされた。


 私の好きなキス。


 嫌な事も、過去も未来も何もかもが“ぶっとぶ”キス。


 外で立ってる時に、ユウヤがこの“ぶっとぶ”キスをしてくると


 私は文字通り、腰砕けになって立っていられなくなる。


 唇を離したユウヤが、私の顔を見詰めてふっと笑う。


「えり、今ちょ~イヤラシイ顔してる」


「!」


 恥ずかしくなって、照れ隠しに彼のわき腹をくすぐると


 彼が声を出して笑った。


 あまり爆笑したりしない人だから、ユウヤが笑うと私は心底嬉しくなる。


 そのはずんだ気持ちのまま、彼にくすぐっていた手を掴まれて


「でも、さっきので十分満足したでしょ。早く車から降りて」


 真顔で言われて、まるで冷水を浴びせられるってこう言うことって思い知る。


 はじかれたショックで、何をどう言えば良いか判らず


 彼の顔も見ることが出来ないまま、ただカバンを手に取り


 車のドアに手をかけた瞬間、声がかかる。


「早く帰らないと、彼が心配するからね」


 取ってつけたように言われても、何も心に響かなかった。


 それでも何とか返事をして車を降りると


 窓を開けて「じゃ、またね」と言って素早く去って行った。




 私はその場に立ち尽くして、ユウヤの車を見送りながらぼんやりと考えた。


『あんな事を言って、私を嫌がってるのかと思わせておいて


 なのに「またね」だけはいつも必ず言ってくれる・・・。』


 変な人・・・、訳が判らない。





 ユウヤと逢って、彼に抱かれている時だけは愛されているのかと


 夢みたいな錯覚をしそうになる。


 でも、と打ち消す臆病な心。


 ユウヤは女の子にモテるし、私を相手してるのだって


 私に一緒に暮らしてる相手がいて、真剣に相手しないで済むと思っているからかもしれない。


 前にも「旦那や彼氏持ちの相手は面倒が少ない」って言ってたし。


 その後「相手が本気にならなければネ」と付け足してたけど。


 私がユウヤに本気だって知ったら、面倒くさい相手として捨てられるのだろうか。


 でも、もう私の態度は誤魔化しようがなく、べた惚れだとあのユウヤが気づかない筈が無い。


 ユウヤを前にして、好きの気持ちにセーブなんてかけられない。



 ユウヤ以外に抱かれたくなくて、自分を許せなくなる前に


 一緒に暮らしていた人とは、別れた。


 でも、それをユウヤには言っていない。


 ユウヤのせいじゃないし、ユウヤのためでもない。


 私自身が、ユウヤと上手く行く行かないに関係なく


 別れを選択した。


 それでも、彼に言ったらどうなるんだろうとは思わずにはいられない。


 わざわざ別れるなんて重いと思われる?


 わざわざ言うなんて、責任とれって言ってるみたい?


 ただ、ユウヤだけが好きだって伝えたいだけなのに


 どうして私はこの迷路から抜け出せないんだろう。





 こうして離れると、すぐに嫉妬に取り付かれてしまう。


 早く帰るのは、次に約束している女に逢うためじゃ?


 そう思うとたまらない気持ちになる。


 ユウヤが、あの手で私以外の誰かを抱いていると思うと


 おかしくなりそうになる。


 あんな風に、意地悪く、煽って煽って限界まで焦らして、試すような。


 なのに、優しくて切ない。


 ユウヤは、いじわる言いながらその眼が・・・、顔が泣いてるみたいに切なくて


 私は何でも許してしまう。


 いつもいつも、今日こそは泣いてしまうんじゃないかと思うほど


 切なく、苦しそうな顔をしている。


 あの瞬間、ユウヤの腕に抱かれて見詰め合う瞬間だけは


 ユウヤに本当は愛されているんじゃないかって思える。


 でも、終ると腕枕してても、あの大きな手が私の髪をずっと撫でていても


 もう頭からは私の事なんて追い払って、どこか遠くを見ている感じがする。


 不安になる。


 不安になって、今まで彼がどんな風に女の子を抱いてきたのか想像して


 恐くなって、その見えない存在に勝手に張り合って


 どんな事をされても許そうと強く思う。


 他の女の子達が彼に許さなかった事も、私だけは許そう。


 だから、そんな遠くを見ないで・・・。


 私だけを見ていて。










 夜、1人の部屋に居ると


 ユウヤの事ばかり考える。


 地毛だと言っても信じてもらえない、と言うあの夕日を溶かしたように


 日に透けて輝く、肩に届くところでくるりと跳ねている愛しい髪の毛。


 私を見詰める、チョコレートを混ぜたような色した甘い瞳。


 いつも冷たい私の手を温める、熱くて力強い大きな手。


 ベッドの中、淋しくて眠れない夜、たった一言携帯から聞こえる「えり、寝てた?」で


 どこまでも安心させてくれる、身体の芯まで震えるあの声。


 暗闇でもあの声で耳元で囁かれるだけで、何も恐いものなんてなくなる。


 ユウヤの存在そのものが、私にすべてをくれる。


 愛も、勇気も、愛おしさも、思いやりも


 そして


 哀しみも、淋しさも、惨めさも、苦しみも・・・・。


 すべてをくれる。






 ユウヤ 


 ユウヤは一人でいる時、私を思い出してこんな風に泣いたりすることある?








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