『JEALOUSY “gold”』
何度も達して、疲れ果てて眠るえりの寝顔を見ていた。
おでこに張り付いた髪を、指でそおっとよけると
くすぐったかったのか、声を出して「ふふふ」と笑った。
「フッ」
つられて笑った。
満足そうな笑みを浮かべて、夢の世界に居る眠り姫。
いつだって、泣かせて、これでもかってほど焦らして
俺を欲しがって乱れる彼女の姿を見ないと、気がすまない。
「カラスの・・・なんだっけ」思わずつぶやいた。
彼女は、真っ黒でまっすぐな髪をしている。
水に濡れたカラスの羽のように、真っ黒。
そして肌は、俺のようにただ色素が薄い肌色じゃなく
研ぎ澄まされたような白い肌。
口紅をひかなくても、紅い唇。
黒いダイヤのように輝く瞳。
初めて逢った時、なんてオリエンタルなんだと思った。
彼女は俺を「綺麗」と言うが、本当に綺麗なのは彼女の方だ。
裸のまま寝てしまった彼女の、胸に目をやる。
手を伸ばして、乳首をはじいてみた。
「んっ」と声を出して、身体が跳ねる。
その声を聞いたら、猛烈に腹が立ってきた。
えりの帰る家で待つ、1人の男に。
俺がフラフラになるまで抱いても、部屋に戻ったらまた奴に抱かれるのか?
俺にして見せたように乱れるのか?
こんな事が恐くて聞けないなんて
まったく、笑えるね。
彼女の胸に口を寄せると、乳房の下側、彼女が上から見て気づかない位置に
俺はキスマークをつけた。
彼女が気づかなくても、彼女を抱いた男は気づくだろう。
馬鹿なことをやってる。
彼女は俺のものってか?
これじゃ、俺が散々うんざりしてきた、女が自分の存在を知らせるために
車に髪の毛を残したり、イヤリングをポケットに入れてくるのと同じだ。
この俺が、嫉妬に狩られてこんな事までするようになるとは
まったく、泣けるね。
えりはまた、いつものように俺から離れない。
彼女の家の近くまで送った車の中、やわらかい身体が俺を締め付ける。
なんて幸福で、なんて残酷な仕打ちだ。
彼女の冷たい鼻先が、鎖骨に触れてくすぐる。
じっと見詰めてくる濡れて光る黒い目、まるで飼い主を見つめる子犬の瞳。
黒い宝石の威力に勝てず、唇を奪う。
キスに弱い彼女の反応を見ると、ついもっと乱したくなる。
唇を離すとき、いつも彼女の唇が少し追いかけてくるのを見るのが好きだ。
もう触れないのが解ると、ゆっくりと目を開けて『もう止めちゃうの?』って
顔をする。
それがたまらなく可愛いと思う。
でも、彼女と過ごす時間が楽しければ楽しいほど
別れは辛い。
彼女がいくらぐずろうが、抵抗しようが
結局帰るんだろう?って思う。
結局、どうしたって俺じゃなくあいつを選んで帰るんだろう?って。
だったらそんな哀しい顔するなよ。
そんな泣きそうな顔するなよ。
彼女が俺に抱かれている時、今日こそは帰らないって言ってくれるんじゃないかと思う。
今日こそは、ユウヤの傍に居たいと言って、飛び込んできてくれるんじゃないかと願う。
イク時、愛してると言ってしがみ付くお前を
俺がどんな思いで抱き返しているのか
お前は知らない。
別れ際、冷たくするのは
必ず帰っていってしまう彼女への仕返しと
俺自身への「俺が冷たくしたから帰るんだ」と言う言い訳と
そのハードルを越えて『今夜は帰らない』と引き止めて欲しい願いの現れだ。
冷たくしても、ちゃんと追いかけてきてくれるか。
それで俺は彼女の愛情を量っている。
彼女を抱く時、ひどい事をしても受け入れる彼女を見て
俺を許し、愛してるのだと推し量るように。
俺は最低だ。
部屋に戻り、スウェットに着替える時、何気なく見た腕に
えりの残した爪あとを見つける。
ふいに、初めて彼女を抱いた時の事を思い出した。
ずっと、「怖い、怖い」と繰り返していた。
「こんなに人を好きになった事が無いから、怖い。」
「どうしていいかわからない。どうしたらいいの?」
「がっかりさせちゃったらどうしよう、怖い。」
緊張してしゃべりっぱなしで、ついには泣き出した彼女を
抱きしめて、髪をなで、小さいキスをたくさん落とした。
入れなくても、抱き寄せただけで得られる幸福を
俺は初めて知った。
なのに
今では壊れるほど揺さぶって、ひどく泣かせないと終らない。
それも、どんどんひどくなる。
このままだと、いつか彼女をどうかしてしまうんじゃないだろうか。
えり
えり
気が狂いそうだよ。
お前は、俺がこんなにお前に夢中だって知ったら
恐がらせて、逃げてしまうか?
気が向いた時に、恋愛ごっこを楽しみたいだけなのか?
お前は今、誰の事を考えてる?




