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悪人面の魔王でも友達になってくれますか?  作者: 梅三六角
第二章 魔王、姫君を攫う
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魔王初心者でもできる姫君誘拐作戦

 魔王の城の中。俺は薄暗い書斎の中、机の前に座り、資料に目を通していた。


「一度占領した村や町からは、そこでの収入、食糧等の何割かを奪うことができるのです。占領した町が多くなるほど、魔王様の暮らしが豊かになるということですな。奪う割合としては、村の収入の数値を見て決めましょう。収入の多いところからは、大目に奪っても生活にはさほど困らんでしょう。」


 目の前には、本を持って政治学の講釈をするマチルダ。魔王となって数日。俺はマチルダから政治学やこの世界の仕組みを学んだり、ダンジョンに潜って魔物と戦って修行を積んだり、たまにやってくる冒険者と戦ったりして過ごしていた。


 魔王の暮らしとは思っていたより地味だった。食糧や金は、近隣の村から巻き上げているので問題ない。


「ここまでで、何かお聞きしたいことはありませんか?」


 マチルダが聞いてきたので、


「今の話にしても、占領した町をどう使うかについては勉強になった。知っておかなければならない大事なことだというのは分かっている。しかし、正直に言って、あまりにも面白みに欠ける。魔王らしくもっと世界を震撼させるような大事件を起こせないものか?一国の姫君を攫うなんて結構良いと思うぞ。」


 俺がそう提案すると、


「またお友達作戦ですか。しかし、姫ともあろう人間が魔王様と仲良くなどするものですかな。」


 マチルダは呆れた顔で苦言を呈する。


「分かっていないな。姫という立場の人間は、王室での窮屈な生活に飽きて刺激を求めているものだ。その希望を満たして、後は丁重に扱えば可能性はある。」


 俺は自信満々に言い放つ。マチルダからの返答は


「ルイ様が魔王として覚醒してから、まださほどの時間が経っておりませぬ。魔物の用意などは不完全なものですじゃ。今はあまり世界を敵に回すようなことはされない方が宜しいかと。」


 魔物はいるにはいるが、今は雑魚ばっかりだ。そういえば、最近城にやってくるのはアビリティも録にもっていない冒険者ばかりだった。あんな奴らでも魔王の城に辿りつけてしまうほど、現戦力は頼りないのだ。


「それに、王国ともなれば、それなりの戦力をもっていますからな。アビリティをもつ者もいるかもしれません。一国を乗っ取れたら、それはそれで貴重な資金源にはなりそうですが、相応の犠牲は覚悟しなければなりません。」


 実際のところ、今の俺は魔王でありながら、空も飛べない、アビリティも使えない。身体能力は常人とは比較にならないぐらい強いが、これではトロルやミノタウロスに毛が生えたようなものだ。


「やはり、無理か。」


 マチルダが言うのも尤もだ。マチルダは考えていたが、何かを思い出したようだ。


「楽な方法があるにはありますな。」

「何!?あるのか?」

「一国の姫を攫うのは大変です。ですが、これが姫候補となれば、警備は幾分か手薄です。」

「姫候補?何だ、それは?」

「実を言いますと、ここから少し離れた国、ノエルでは最近国王が亡くなり、残った王子が継ぐことになったのじゃ。なのですが、この王子は冒険者としての素養はあるが、政治などは全く分からない人物でしてな。そこで、周辺の貴族は自分の娘を王子と結婚させ、王族と親類となって政治の実権を握ろうとしているのです。」

「政略結婚という奴か。その王子は、それを分かっているのか?」

「それが、王子は可愛い女の子と付き合えたり結婚できれば良いという考えでして。政治には全く興味がないのです。」


 英雄色を好むとはよく言ったものだ。まあ、男として気持ちは分からなくもないが。


「話を聞く限りでは、一国の姫を攫うより楽そうだ。しかし逆に、その姫候補を攫っても、国を占拠するための脅迫材料にはならないのではないか?その王子にとっては、あくまで結婚相手の候補の一人なのだし、見捨てたところで代わりはいくらでもいるのだろう?」

「姫候補一人で国の利益を奪えたらラッキーぐらいに思えば宜しいでしょう。もし、王子が見捨てたら、その時はその娘を魔王様のお好きにすれば良いことです。」


 俺は考える。悪くない条件だ。どっちに転んでも、金か友達か、どちらかは手に入る。


「よし、その話乗った。して、どうやって攫う?」

「王子はこれまで何人もの娘とお見合いをしてきて、ようやく気に入った相手を見つけました。三日後、姫候補の娘が王子のところまで嫁ぐ予定になっております。」

「ならば、その道中を狙えば良いな。」


 俺はさっそく姫を攫う方法について、考えを巡らせる。そこで疑問が湧いた。魔王というものは姫を攫いに行く時、己一人で行くのだろうか。多分やろうと思えばできるだろう。護衛の者は十人もいれば多い方だろうし、アビリティをもっていない奴が相手なら楽なものだ。楽ではあるが、魔王が護衛の者を一人一人腕っ節で殴り倒して姫を攫うなど、どこか違和感があった。それでは、ただの人攫いと大差ない。


「なあ、部下の魔物は使えないのか?」

「上級の魔物は現在いませんからな。まあ、頭を使えば不可能とは言い切れませんな。」

「よし、作成を練るぞ。」


 俺はマチルダからの情報、及び現時点で使える魔物の種類、数を元に計画を立てることにした。

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