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悪人面の魔王でも友達になってくれますか?  作者: 梅三六角
第二章 魔王、姫君を攫う
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水泡と化す計画

 俺は魔王城の裏庭、墓石の前に立っていた。ケヴィン、そしてアリスのものだ。アリスは氷の瓦礫の下に埋まり、瓦礫から掘り起こした時にはもう息はなかった。魔王の俺は瓦礫に埋まったぐらいじゃ死ななかったが。


「本当にこのまま埋葬するのですか?アビリティをもった者ならアンデッドにすれば役に立ちますでしょうに。」


 隣のマチルダが言う。今まで倒してきた冒険者はマチルダの呪術により、ゾンビ、すなわちアンデット系の魔物に変えられてきた。生前より弱体化はするが、戦力としては十分使える。まして、それがアビリティもちならなおさらだ。


「ケヴィンについては、最後に少しだけ分かり合えたからな。アンデッドにするのは忍びない。」

「では、アリスに関しては?」

「クラスメイトの誼だ。」

「そうは言いますが、転生初日に殺したクラスメイト三人については、アンデッドにしたのでは?」


 マチルダが鋭く突っ込んでくる。

 

「本当のことを言うと、たった一時とはいえ、アリスがクラスメイトとして普通に話せる時間をくれたのは、事実だからな。」

「まあ、魔王様がこれで良いと言われるなら、私も反対はしません。」


 マチルダは俺を気遣うためか、それ以上深くは聞かなかった。


 結局、姫候補も王子も死なせてしまった。これで友達を手に入れる、という目的は失敗に終わった。また、王子が死んだ以上、もはやノエルに対する交渉材料は零になってしまった。王子が亡くなったためにノエルでは少し混乱するかもしれないが、もともと政治にあまり関与していなかった王子だ。代理の者などすぐに立てるだろう。


(何故こうなってしまったのだろう。)


 俺は思い起こす。つい先程まで仲良く話していた、と思っていたアリスと、最後には憎しみ合い、そして死なせた。


(何が駄目だったんだ?俺の顔のせいなのか?俺の見る目がなかったのか?それとも、俺のやり方が間違っていたのか?)


 俺は今一度、墓を眺める。そして、マチルダに尋ねる。


「なあ、魔王の役目というのは、リタイアとかはできるのか?」


 マチルダは溜息を吐き、


「方法がないとは言いません。魔王様が死ぬか、もしくは魔力が零になったときですな。」

「死ぬのはともかく、魔力を零にすると、どうなる?」

「魔力を完全に使い果たしてしまえば、人間になり、魔王としての力は失います。尤も、魔王様の魔力は放っておいても回復しますから、完全に零にするのは逆に難しいでしょう。

 それに、仮にその方法で人間に戻ったとして、そこから先どうするのか宛てはあるのですかな?」


 残念ながら明るい未来は見えなかった。


「この顔さえなくなってしまえば、少しはまともに余生を過ごせるだろうか。」


 俺の問いにマチルダはこちらに杖を向け


「何を言っているのか分かりませんが、頭を冷やした方が良いのは間違いないでしょう。」


 マチルダの杖から眩い光が発せられるのと同時に急速に眠たくなって、俺は意識を失った。

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