イケメンと可愛いは表裏一体
私の兄はかっこいい。
その顔面、スタイル、仕草から放たれるイケメンオーラの効果は、通りすがりの奥手そうな女性さえをも、逆ナンという奇行に走らせてしまうほどである。
「何あれ有名人?」
ちょっとした繁華街を歩いているときに、友人が指差した方向には、もじもじとした様子の女性に話しかけられている兄がいた。
それに勇気付けられたのか、順番待ちをしているのか、周囲には何となくウロウロする女性が4人。
その様子に足を止め野次馬しようとしているカップルが2組。
とりあえず写真を撮っておこうとしているおじさんが1人。
「何だろー?」と言いながら近寄っていく女子高生が3人。
兄を中心に人集りが形成されつつあった。
困った様子の兄がとんでも無く可愛くて、スマホを構える。
「知ってるの?有名人?」
「有名人ではないと思うけど、」
そのままシャッターを押すと、久しぶりに可愛い兄が撮れた。
「写真撮ってんじゃん」
「え、だって、めちゃくちゃ可愛いし」
待ち受けにしよう。
「待ち受けにしてるし」
「うん、いい感じじゃない?」
兄にも送っておこう。
「やっぱ知ってる人?」
「うん、お兄ちゃん」
「え?お兄ちゃん?」
「うん、お兄ちゃん。かっこいいでしょ」
「え、あ、うん、かっこいいね?」
「でしょー!自慢のお兄ちゃん!」
「あー…うん、あ!輪郭とか似てるね?」
この友人は、謎の共通点を見つけようとする3割に振り分けられた。
"気付いてたなら助けてくれ"
携帯を見れば、珍しく兄から苦言が入っていた。
苦言を呈す兄も可愛いと思った。