理由その4 - 傷音
義父さんは『バラルの命令に逆らうな』そう言った
正直、僕はその言葉が嬉しかったのかもしれない。義父さんに何かを任されたことはなかったし、お使いのような任務であっても今回の調査が初めて頼りにされたことだった。だから僕はその言葉を忠実に守り通す、そう決めたはずだった
だけど――――
こんな化け物と戦ったことはなかったし、戦うにしてもせめて場所を変えたかった
訓練では決して嗅ぐことのない、濃密な血の臭いから一刻も早く逃げ出したい……それが本音だった
だけど――――今、僕の背後には苦しんでいる人がいる
自分は誰かを救えるような、そんな立派な騎士なんかじゃない。誰かの面倒が見れるほど強い人間じゃない!
助けた後のことなんて何も考えていなかった
何の責任が持てなくても……戦えない者を放っておけるかよ!
「大人しく降伏しろ!さもないと……わっ!」
言い終える前に人の姿をした『何か』は、鋭く伸びたナイフのような爪を奇声を上げながら振り回してきた
「この、人の話を……」
「なにやってるんだ!斬れ!」
僕を追ってフォードが剣を構えて飛び出してきた
フォードは僕の目の前に立つ『何か』の足を斬り落とし、体勢を崩したそれの顔を串刺しにする
剣を突き入れた場所と剣が生えた傷口の両方から、黒い肌がそのまま融けたように同じ色の液体が噴き出す
「フォード!」
「なにを勘違いしている!?こいつらはっ、ヒトじゃない!」
フォードは早口で捲し立てた後、僕を突き飛ばす……さっきまで立っていた場所に爪が振り下ろされていた。仲間がやられたことを知って、別の『何か』が一斉に襲い掛かってきたのだ
フォードが茂みからやってきたヤツに立ち向かい、僕は女剣士を襲っていたヤツに剣を向ける
人の姿をしたそいつは両腕を下げ、ピラニアのような牙を剥き出し、奇声を上げながら血で赤く染まった口を大きく開けた
それは獣が見せる威嚇のようだった。敵意を剥き出し、顔を歪ませ、剣士の血で染まった赤い爪を構える姿は醜い獣そのものだ
そいつは僕に狙いを定めて飛び掛かると、着地と同時に右手の爪を振り下ろしてくる
動きはそれほど速くない、これなら……!
身を低くして降ってきたそいつの爪を躱し、背後に回ると剣を喉元に突きつけた
後ろから抱き締めるようにして、そいつの自由を奪う
「っ!大人しく罪を償え、そうすれば殺しはしない!」
「ギギ、ギぎギィぃィぃギィぃぎィぃー!!!」
「あっ!」
思ったより激しく抵抗してきたそいつを、押さえ切れずに喉を掻っ切ってしまう
そいつの喉から黒い液体が勢い良く吹き出た
しまった!そう思って僕は不用意にもそいつに近づいてしまう
「「ヴァン!」」
エレインとフォード、二人が叫ぶのと、僕が剣を持つ右手に傷を負ったのは同時だった
剣を取り落とし、跪いた僕の頭上に鋭い爪が振り下ろされ、爪の刺さった頭から大量の血が噴き出し――――はしなかった
そいつは何故か爪を額の直前で止め、小刻みに震えながら僕の背後を見ている
「ふぅ、どうやら通じたようじゃ……のぉ」
バラルの声だった、呟きながら近づいてくる気配を背中に感じる
バケモノの硬直を理解した瞬間、バラルの剣が僕の頭上を通り過ぎて動けないそいつの顔に剣を生やす……またこの広場に生命が流れた
呆然と黒い血を噴き出すそいつは、僕をジッと見ていた気がする。僕はそいつが息絶えてから、やっと自分が手を伸ばそうとしていたことに気付いた
……なにを、しようとしていたんだ?僕は……
全てが終わって自分の震える手を見た。血と泥で汚れた僕の掌には汚れただけで何も手に入れてはいない
助けたかったんだろうか、哀れに思ったんだろうか……
どちらにせよ、僕がここでしたのはどうしようもない後始末でしかなかった
「おい、ヴァン」
フォードの声に力無く振り向くといきなり殴られた、鉄の味が口に広がる。さらに僕の胸倉を掴んで顔を近づけ、湖にいる全ての生き物に聴こえる怒鳴り声を上げた
「なにをやってるんだお前はっ!!!」
物凄い形相をしていた、普段クールなフォードが僕の前でこんな怒りの表情を見せたのは初めてだった
「……フォード?――――痛っ!」
喋ると口の中で痛みが走った。……痛みが少し治まる、ずきずきと痛む頬が痛覚だけを残して麻痺しているような気がした
頬の痛みでフォードに殴られたことに僕は腹を立てた
「痛ぅ、なに、するんだよ!」
反論が無いわけじゃなかった、僕も痛む頬を押さえて怒鳴り返す
「どうしてこんな無茶をした!」
「生きてる人がいたんだぞ!放っとけるか!」
「そのことじゃない!俺が言っているのはこいつらを殺さなかったことだ!」
空いてる片方の手で人の姿をした襲撃者を指した、黒い血が広がっていくのを見て僕はやっぱり思う
「こ……殺したく、なかったんだ……でも!捕らえられると思ったから――――」
言い終える前にフォードはまた拳を振り上げていた、僕は思わず目を閉じる
「やめて!!!」
拳が当たる前にエレインが叫んだ、僕の目の前にバラルによって止められた拳があるのが気配でわかった
「ヴァン、俺だって……っ!……エレインやお前があの男のようになっていたら、迷わず飛び出していたさ」
たとえ怒られていても、フォードのいつもとは違う感情的な面を見て、僕はホッとしていた
フォードはこう云ってはいるがそれはきっと違う。やられているのが僕らじゃなくても飛び出していきたかったんだと僕にはわかった
「だったら……!」
僕と同じ気持ちだというフォードは『そうじゃない』と首を振って否定する
「俺だって救えるものなら救いたいさ!だがな……見ろ!こんな地獄を造りだしたバケモノに情けなどかけられるか!?」
フォードは死体の山へ顔を向けさせると突き飛ばし、背中を向けて木蔭に向かって歩き出す。すぐ目の前に映ったのはもう動かないあの女剣士だった
その死体は奇妙なオブジェのように手足をありえない方向へ曲げられている。これが人だと理解しているはずだった、だというのに……
視認した瞬間、僕は思った…………不気味だ、と――――
吐き気がした、食べたばかりの干し肉すらこの無惨な屍骸の肉のように感じられた
「ヴァン……!これからはお前が躊躇った秒数、誰かが死ぬと思え!」
言い終えると、フォードは興奮した心を落ち着かせるように『ふぅ……』と深い溜息を吐き、剣士たちの墓を造りだした
僕はそれを手伝うこともできずにフォードの言うバケモノ達を見ていた
呆、と暫く屍骸を見つめていると、誰かが僕の視線を遮るように前に立つ。見上げるとバラルだった。薄い朱色だった筈の瞳が、今は鮮やかで深い紅色に見える。その瞳に眼が合った瞬間、動きがだるくなった気がした。なのにその眼から僕は眼が離せなくなる
「ヴァン、儂はお主がしたことは間違っているとは言わぬ。だがな勝手な行動を起こせば他の誰かが巻き込まれるのを――――」
バラルはそういって不安そうに僕を見るエレインを指差した
「――――忘れるな」
「あっ……!」
「儂らが勝てる相手だったからよいものの、もし負けていたら戦えないエレイン殿はどうしていた?」
バラルの言葉を聞いて、エレインと剣士たちの死体を見てから先ほどの戦いを思い出す
バケモノの屍骸が僕らが倒した他に無いということは、剣士たちはきっと不意を突かれて全滅したのだろう。とはいえ、『戦士』が一矢報いることも出来なかったのだ
エレインが馬を使っても、逃げ切れたかどうか……否、彼女は僕たちの所為で逃げてくれないかもしれない
バラルの言いたいことが全て理解できた時、言わなければならない言葉が頭に浮かんだ
「すみ……ません、でした」
バラルは『よし』と言って頷くとエレインを連れて怪我人の下へ向かっていった
暫く黒い血を流す『何か』を見てから両手で自分の頬を叩いて、僕はその後を追った
◆
傷薬じゃ駄目だった、薬草でも駄目だった。お医者様でもない私にできることは声を掛けてあげることと、祈ることだけ……
切迫した顔で『薬をくれ!』と、駆け込んできたお客さんを私は幼い頃から見ていた
お客さんのほとんどは城の兵士さん
『あの人あんなに慌ててどうしたの?』
私がそう聞くと
『きっとお仕事で怪我をして、お薬が足りなくなったのよ』
お母さんは幼い私に、そう言って教えてくれた
怪我をしても、お母さんが作る魔法のお薬が兵士さんを助けてくれる
今も昔も、そう信じていた――――ハズ、だった
「エレ、イン……さん?」
苦しげに、呻きにも似た声が吐き出された
聞く側が悲痛な思いをせずにいられない……そんな声だった。それでも生きている、生を望む声をもっともっとと無心に求める。少なくとも、彼の声が聴けるうちは生きているから
「そうです!しっかりしてくださいカルブレさん!」
傷口を診ながら私は大きな声で返事をする、昔、死んだお父さんが言ってた。『傷を治すにはまず起きてること』
その理由は何故だったのか、そうするとシンチンタイシャがどうの、と説明された気もするがよく憶えていない。でもそんなことはどうでも良かった、私は目の前で誰にも死んでほしくない、ただそれだけを願う
うろ覚えの知識を活用しようと必死になった
私の大きな声を聴いたカルブレさんは手を伸ばす――――ヴァンの方へ
「カルブレさん、目が……」
私は伸ばした手をとり、顔を上げてカルブレさんの眼を覗き込むと、まるで膜を張ったような白い瞳が見えた
「……血を流しすぎたようじゃな、もう自分自身の傷音のせいで、ものもよく聞き取れぬじゃろう」
私と同じように彼の顔を覗き込んだ、剣士のお爺ちゃんが苦い顔をして言った
傷音……きっと心音や血の流れる音のことだろう
人は大怪我をしたり激しい運動をすると妙に自分の音がうるさく聞こえる、これも剣士だったお父さんから教えてくれたことだった
生きている、そう実感する
死にたくない、そう渇望させる音なんだと――――
「そんな……」
もし声が聞こえていなかったとすれば、私だと気付いたのはどうやら手が触れても襲われなかったから、だったらしい
血を流しすぎた、その言葉を聞いてもう駄目だと思った。そんなのは勝手な思い込み、だというのにそれは今のこの状況ではその通りのものだった
「エ、レ……さん」
苦しげな声を聞いて我に返った。悲観的な考えを無理矢理捨て去り、私は彼に見えない筈の笑顔を見せる
「だ、大丈夫ですよカルブレさん!きっと助かります!」
聴こえない筈の彼を励まし続けた、助からない筈の彼に薬を使い続けた。私の呼びかけに彼が僅かに頷いた気がした、どうやら完全に聴こえないわけではなかったらしい
その反応に希望を見た私はなんとかして助けたいと、彼を助けることだけを考えた
薬を使うたび、薬が沁みて痛みに顔を歪ませる彼の顔に胸が痛む
私の使う薬は彼を苦しませているの?もし彼が助からないのなら、これ以上は苦しませるだけの拷問なの?
用法は間違っていないはずだった、これは傷薬だ。薬を布に滲み込ませてその布を傷に巻きつけるか押さえつける
頭の中では他に持ってきた薬のこと、それぞれの用法を何度も何度も何度もっ!思い合わせていた
やはり間違いは無い、持ってきた薬の中ではこれは最適の薬のはずだった
もてる薬知識を総動員させて効能と分量と患部を確かめる
このままでいい、この薬で間違いないはず、そう思いながら彼の意識が途切れないように私は何度も呼びかける
顔を上げるとカルブレさんが何か口を動かしていた
「ぐぅっ、モリ、ガン……」
「あっ……」
言われて彼女の方を見た、ちょうどフォードが樹に凭れる彼女の目蓋を下ろしたところだった
『無事です』『ダメでした』……二つの言葉が頭に浮かんだ。お医者様ならきっと前者を選ぶだろう、でも……
彼が『それ』を知ったら安堵して身体が死に急ぎはしないだろうか?
彼が『それ』を知ったら絶望して生きる希望を失ったりしないだろうか?
私には瀕死の彼に掛ける言葉が見つからなかった
何も言えない……
どちらを選んでも、たとえここで助かったとしても、私がここで云う言葉のせいで彼が死んでしまう気がして――――
何を言えばいいのかわからないまま口を開いた
とにかく何か云わなきゃ、その時はそう考えてたんだと思う
「カルブレさん、モリガンさんは…………あの、カルブレ、さん?」
身体の震えが……止まってる?
――――!
失神したんだ!そう思った、そのはずだそうに違いないきっと!
きっとそうだから大きな声で呼び掛ける
「カルブレさん、カルブレさん!?カルブレさん!……ゃぁ……カルブレさん!!カルブレさん!!!」
怪我した身体を大きく揺さぶってもカルブレさんは起きてくれなかった、何の反応も示さなかった
「やめろ……やめろエレイン!」
「いやだ、やだぁ!モリガンさんは無事ですから!無事だからっ!起きて!起きてよぉ!!」
私、まだ伝えてない。カルブレさんにモリガンさんのこと伝えてない
知らないままで――――なんて
伝えないままで――――なんて、そんなの、酷すぎる!
「エレイン……」
みっともなく取り乱した私をヴァンは優しく包んでくれた
背中にヴァンの体温を感じる
その温かさが優しすぎて、回された腕が力強くて、抵抗する気力を奪っていくように感じた
全身から力が抜けた。怖いくらいに安心できちゃったから……ずっと堪えてた涙が抑えられなくなった
死はこんなにも唐突で、信じられないくらい残酷で、あまりにも悲しいものなのだと……
昔、お父さんが死んだ時には感じられなかった本当の“死”を、今更になって感じた
「うっ、うぇ、うぅ、っ……」
穏やかな顔で永い眠りについたカルブレさんの前で、私はその眠りを妨げないように咽び泣いた
◆
僕らはエレインを落ち着かせ、剣士たちを丁重に葬ってやった
エレインの申し出で、先ほど看取ったカルブレという剣士とモリガンという女剣士の墓は一つにしてやることにした
本当はまとめるのはよくないことなんだが……きっと彼らもそれを望んでいるに違いない。恋人同士だったんだろう、エレインと彼らの話を聞いて僕は受け入れることにした
全員を埋葬した後、みんなで彼らの冥福の祈りを捧ぐ
墓に突き立てられた四本の十字剣、隣でフォードとエレインが目を閉じて祈っているのを見て、僕は厭な想像をした
僕も、いつかこんな風になるんだろうか、と――――
戦士ならば誰であっても死は隣り合わせ、だから今土の中で眠る戦士たちのように、僕も同じ目に遭うとも限らない。先ほどのバケモノが何者なのかは知らないが、もし他に仲間がいるのなら……そうなる可能性もこれから高くなってくる
死――――
生まれてから戦の無い世界で育ってきた僕は幸せ者かもしれない、いつも思っていた。でも、このバケモノの出現で僕らが……否、国が戦をする理由が出来てしまった
例えその相手がバケモノであっても、人が死ぬ戦がこれから始まるのだろう……フォードもバラルも僕と同じことを考えているはずだ
もしも、もしも万に一つの可能性だが、このバケモノがどこかの国の“人間”であるのなら……やはり戦争は避けられない
祈りを終えるとさっきのバケモノの屍骸に近づいたフォードが不機嫌そうに最初の言葉を吐いた
「で、こいつらのことだが……一体何者なんだろうな」
言われてフォードの足元に転がる屍骸を見た。斬られた箇所から黒い血を流す生き物……今まで見たことも聞いたこともない生き物だった
ただわかることは、その人の姿をしたヒトでない生き物は
人を、食べていた
僕はこいつらが剣士の死体に顔を埋めていた時のことを思い出す
獣が肉を食す時のように、人としての最低限のマナーも何も無い、クチャクチャという咀嚼音
少し考えただけで聴こえない筈のその音に耳を塞ぎたくなった
頭に響く不快な音を振り払い僕は言った
「とりあえず、墓を造っておくよ。ほら、このままじゃ血が……湖に流れる」
見るとバケモノの流す黒い血が小さな川を作り、剣士たちの血と混ざって湖の方へ向かって流れていた
まだ着水はしていなかったけど、このままじゃそれも時間の問題だ
湖が染まるのをこのまま見過ごすのは忍びない
他のみんなも同じことを考えていたのか、戸惑いながらも僕の提案に同意した
尤もらしい理由を挙げて言ったけど
正直、こんなバケモノたちの墓を造ろうなんて言いだした、自分が信じられなかった
それでもそうしたいと思うのは、きっと僕が普通じゃないからなんだろう
墓を造ろうと言い出したとき、その場にいる全員が硬直し、僕を見た……当然だ
エレインは知り合いを殺され、フォードやバラルは戦ったからわかるはず、さっきのアレは死闘だった
命の奪い合い、それも相手が人や獣ならばともかくバケモノの目的が“目的”だった
しかも殺されかけたのは僕だ、僕がバケモノに畏怖するどころか死を悼む姿に面食らっているのだろう
当然だ……
ただそれだけ呟き、自分を納得させると僕は深めの穴を掘り始めた、バケモノを全て入れるための穴だ。他のみんなは流れ出す血を土で被せていく、剣士たちのこびりついた血も含めれば相当な仕事量ではあった。だが流れ出す血を何とかすれば、あとは時間さえあれば一人で十分だ
それでも実際には一人でも十分な作業に三人は取り掛かる、湖を汚さないための確かに重要な作業なのだから。だから誰も僕の墓作りを手伝いはしなかったんだ
これは当然なんだ、ただ……僕が異常なだけ
そう反芻しながら僕はバケモノたちを穴に埋めた
両手の五指を組んで軽く祈る、そんな僕を見ていたバラルが声を掛けてきた
「ヴァン、念の為に聞いておくが……もう迷わずに斬れるな?」
バケモノたちのために墓を作る僕にまた不安を抱いたのだろう。『斬れぬなら置いていく』とでも言い出しそうな重い声をしていた
「わかってる、今度は大丈夫だから」
…………
……嘘だ、本当は納得なんて出来てなかった
バケモノ達が他に食べられるモノを知らないなら、これは仕方のない出来事だったのかもしれない
彼らが人を食べるのは、僕らが動物の干し肉を食べるのと一体何が違う?
……こんな考えに答えなんて無かった
答えてくれる者も善悪を啓示する神もこの場にはいない。だからきっと、あの場では殺すことが正しかったんだろう
種族を侵す者はより強い種族に屠られる運命……それはわかっていた。今更こんなことをここで考える自分が異常なんだというのもわかっている!
でも、それなら僕は彼らを捕らえてどうする気だったんだろう?
バラルは少し不安そうな顔をしながらも、頷いて馬に乗り込む
「もう少しバケモノの屍骸を調べたいところだったがの、もう暗くなる。急いでタラの都へ向かうぞ!」
もう今日中には都に着くことはできないだろう。だがエレインや僕らのことを考えてこの場を離れるようにバラルは指示を出す
この血の臭いがする場所を移動しよう、暗い想いを断ち切ろうと
その場にいる全員が頷いて、馬に乗り込んだ
みんなが先に行くのを見送った後、僕はこの場で起きた出来事を森に詫びながら、最後にもう一度祈りを捧ぐ
この場で流れた二種類の血に対して
この場で喪われた全ての命に対して
黙祷を終えた僕は無言で立ち去る、護るために命を奪うという誓いを立てて――――
ん〜モリガン&カルブレはもっと引っ張ろうかと思ったんですけどね〜■しちゃいました☆
いや、人多いと書きづら……じゃなくってぇ
魔物とかエレインストーリーが書きたかったんです。イマハハンセイシテイル
あ、タイトルの「傷音」って造語です。うわ、造語とか自分イタイかも……