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2. 風景

なんだか、前のと同じような雰囲気になってしまった……

  風景



 エミリにとって、日曜の午後二時から三時半の一時間半は、極上のティータイムだった。行きつけの喫茶店で、いつものアールグレイティーを注文し、席に着く。恋愛小説の短編集を取り出して読み始めると、二ページほど進んだところで、紅茶が到着する。


 この時間は、いつも一人と決めていた。誰かに心を乱されたくないから、必ず一人で来る。肌身離さず持ち歩いている携帯電話すら、電源を落としている。「都会で働く人間は、こんなことできないだろうな」という邪魔な想念が心を乱すこともあるが、「誰か」ではないから別にいいやと言い訳をする。そんなことを言ったら、本も読めなくなる。大事なことは、ノイズととらえるか否かだ。



 一人といっても、一人ではない。余計な会話はしないが、人はいる。二、三人のお客のほか、店主で初老の男性が一人と、彼によく似た、若い青年のウエイターが一人。アールグレイティーを持ってきてくれるのは、この青年だ。



「お待たせいたしました」

「……」



「ありがとうございました」

「……」



 そして、たまに、


「いつもありがとうございます」

「……どうも」



 無愛想にしているつもりはないけれど、余計な会話はしない。別にしてもいいけれど、なんとなくしない。

 もしかしたらエミリには、俗にいう「今さら感」があったのかもしれない。彼はもうすでに、「風景」でしかないのだから。





***


 エミリは「風景」の大切さを知った。

 別に、馬鹿にしていたわけではないし、風景は風景として眺めるべきだと、今でも考えている。





「彼は」


 といたエミリに対して、店主で初老の男性が答えた。「東京へ行ったよ」



 エミリはいつもの席に着くと、窓の外を眺めながら、アールグレイティーが来るのを待った。

 読み途中の短編、そのハッピーエンドを読むのは、来週になりそうだ。






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