思い出の中の私
これはさよならを言う物語。
「それで、ええ。はい…。」
下から話し声がする。
お母さん?
どこか、悲しそうだ。
なんだろ?何かあったの?私は少し戸惑いながらも下へと降りる。
「お母さんっ!何かあったの???」
母の顔を見上げる。
しかしそこにはいつもの優しい顔はない。
どこか悲しみを混ぜたような顔だ。
私はなにがあったのかわからない。
そう、わからないのだ。。。
……。
「では。新入生の皆さんおはようございますー。今日からこの学校が皆さんの通う場所ですよー。保育園とは違い、お勉強もやっていくのでみんなちゃんとお勉強しようねー」
入学式を終えて初めての学校。
緊張と初めてのお勉強に少しワクワクしながら新しいお友達ができるか不安になっている私。
少し固まっていたかもしれない。だから少し。少しだけみんなと距離を置いてしまった。それから少し経ち、私は一人机に座っていた。そんなある日、そんな私に突然、隣の席の女の子がやってきてこちらへ話しかけてきた。
「ねぇ?あなた。お友達にならない?」
え?
突然のことにびっくりする。
なんて答えればいいのか少し返答に困っているとその少女は続ける。
「お友達にならない?って言われたらうんっていう返事だけでだーいじょぶっ!!なーんにも考える必要なんてないんだからっ!!」
すごく眩しかった。私にとってその少女はとても輝いて見えた。まるで太陽のように。
それから少ししてその少女とよく話すようになった。
と、いうよりその少女がいつも私に構ってくれていた。
私はあまり積極的に話すようなタイプではない。でも、その少女といると楽しかった。
「ねえ?凛菜ちゃん。私のことちゃんと名前で呼んでよねっ」
少女はいった。私は恥ずかしくていつも名前を呼ばずにいた。でもそんな私でもその少女はいつも笑いながら話しかけてくれていたんだ。
「で、でも。だって。は、恥ずかしいもん…」
「だーいじょーぶっ!一回言ってみれば楽になるよーっ?恥ずかしくなんてないんだからー」
そういって少女は笑う。
笑う少女はやはり太陽のようだ。
「うぅ…。ぁ…ぁ…、ぁ……ちゃん」
「なぁに?きこえないよー?」
意地悪く言う少女。恥ずかしさのあまり顔が赤くなりながらも私は声を上げる。
「ぁ…あ…ああ…。ありすちゃん」
顔は真っ赤だ。でもいえた。いえた…よね?
「ふふー。おりこーさんっ。ちゃーんといえたねぇ」
ありすちゃんははにかんだ。
それから、また少し月日が経ち、本当にお友達と呼べる仲になっていった。
そんなある日。
いつも一人本当にらめっこしている少女を見つけた。
彼女は少し大人びているように見える。でも、どこか寂しそうだった。
そんな彼女を見て私は昔の私みたい…と思った。そう、小学校へ入ったばかりの頃。
まだ誰とも仲が良くなかった頃。私は保育園が遠かったこともありこの学校では知り合いが誰もいなかった。だから寂しさと緊張でうまく輪に溶け込めなかった。
そんなある日を思い出す私。あのとき私は彼女に助けられた。
だから、今度は私が自分から声をかけてみる。今にしてみればかなり成長したと思うけど、今はそんなことよりも彼女と話をしてみたかった。
「ねえ。本を読むの楽しい?私も本読むのすきなんだけどさっ、よかったら私にもおすすめの本教えてくれないかなー」
私は少し勇気を振り絞ってそう彼女に話した。
本を読む彼女は少しこちらをみるとすぐに本へと目を向ける。
私は少しがっかりする。
すると彼女は口を開ける。
「…。……。」
小さい声でよくきこえなかったけど、きっと何かの本を教えてくれたんだと思う。
だからもう一度聞き直す。
「不思議の国のアリス」
彼女はそういった。そう童話だ。とても有名な童話。アリスという少女が体験する不思議な国での物語。でも小学生なら一度は読んだことがあるんじゃないだろうか。シンデレラに人魚姫、白雪姫に眠り姫。いろいろな物語がある。私もそんな物語が好きだった。
「不思議の国のアリスかー。私も好きー。アリスが変なところへ行っちゃうお話だよねっ!」
他愛もない会話だった。
でもそんな他愛もない会話から新しい友達ができるんだ。
そう、彼女の名は
"奏多"
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