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ぼらんてぃあぶっ♪  作者: yukey
Dear My Friend
20/28

Dear My Friend

杏果編クライマックス




雨が降っている。





今朝の予報では今日はずっと雨のようだ…。

私は傘を持つ。

気分は変わらない。

憂鬱にはならない。

だって…、あの日、奉仕部としての終わりを迎えたあの日。あの日から私の世界は変わった。何もかもが無に帰った気がした。だから心は死んだ。

そして世界の色は失われた。


私の世界…。そこは灰色の世界だった…。



火曜日…。今日は火曜日。

昨日、一年生の子たちに奉仕部の頃のことを聞かれた。懐かしいまだ楽しい頃の思い出…。

ずっと続くと思っていた部活。ずっと続くと思っていた勉強会。ずっと続くと思っていた友情…。

でも壊された。たった一つのことで…。

私は裏切られたんだ。

そしたら世界は色を失った。だから…だから…。


気づくと放課後を迎えていた。

私は昨日、三木先輩と幸ヶ谷先輩に言われた通り図書室へと足を向ける。



……。


雨だ。すごく降ってるよ…やだなぁ。

私は傘を差し外へ出るっ。

昨日のことを思い出し少し心配になる裕佳梨。

モカ姉…大丈夫かな…。

うぅん。小鳥遊先輩のためにもモカ姉のためにも…。

きっと大丈夫。今日の放課後に…。



……。




「はーいー。みなさぁーん。それではぁー、今週のー金曜までがー入部申請期限ですよぉー」


楓先生のホームルームが終わる。

もうすぐ放課後だ。

私は凛菜ちゃんとともに教室を出る。

隣のクラスにいるかなちゃんに声をかけ、

図書室へと足を向けた。



……。

図書室



「おまたせしました…」


小鳥遊先輩がやってくる。

モカ姉は小鳥遊先輩を見つけるとかけよる。

雨はまだやまない。

それどころか雨雲は少し厚くなった気がする。図書室の静かさが逆に雨音を大きくする。

ザーッザーッ…。

裕佳梨たちは何も言えず、萌華が話し出すのを静かに待っている。


萌華は何か決心したかのような顔をし、杏果に話し出す。


「私…ね…。」


ザーッ…雨音が強くなる…

土砂降りになりそうだ…


「奉仕部…。奉仕部ね、廃部にしたかった本当の理由はね…」


萌華はゆっくりと話す。

身体は少し震えている気がする。

やはり彼女なりの恐怖はあるのだろう。

杏果に対する罪悪感に苛まれているようにもみえる。だが、話すのをやめることはしなかった。


「私、あの日。聞いたの。」


萌華の声は雨に負けそうだ。

でも何とか続ける


「留学の話がキョーカちゃんに来ていたこと…。そして、それを断ったこと。あの日、私は鍵を取りにたまたま職員室に行ったの。その時にキョーカちゃんと先生が話してるのが聞こえちゃって…」


ザーッ。雨は止む気配がない。

まだまだ雨は降る。


「だからね、私。もしかしてキョーカちゃんに無理させているのかなって…。私のせいでキョーカちゃんの夢を邪魔してるんじゃないかって…。だからね、私キョーカちゃんのためにも部活動をやめようと思ったの。本当は夢のために留学してほしかったの…」


萌華の話を聞いていた杏果は口を開ける。

小さい声だったがそれでも理解できた。


「なんで…。なんで。」


杏果は怒る。怒る…。

初めて萌華に対して怒った。


「どうしてっ!?なんで私が留学しないといけないのっ!私っ、私っ、椎名さんの言いたい事がわからないっ!!!私には、私にはっ、理解できないよっ」


大声で叫んでた。泣いてた。すごい顔だったと思う。でもそれだけ私は怒りたかった。

だから怒ったんだ。


「椎名さんに私の夢を決められたくないっ!勝手に夢を決めて勝手に夢を壊さないでよっ!!!」


杏果は叫ぶっ。叫んだっ。

萌華はどうしたらいいのかわからない。


「私はね、私は、本当は留学なんてどうでもよかったの。ただ、椎名さんと一緒に勉強したかった。同じ学校に進学したかった。それだけなのっ。だから留学も、断ったの!!!」


萌華はそこで気づく。自分の過ちに。

でももう取り戻すことはできない。

終わってしまったんだ。部活も友情も…


雨は降り続ける。

2人はやがて沈黙する。裕佳梨たちも声を出せずにいる。

時間だけが経ってゆく。


……。


そこへ3年生が入ってくる。


「あーあー。やっぱこうなるかー」


その声に裕佳梨たちは振り向く。

声の先には幸ヶ谷先輩と三木先輩が。


「まっ、こんなところだよね。2人の想いは。でもね、それは2人が犯した過ち。過去なんだよ?」


幸ヶ谷先輩が少し含めた話をする。

三木先輩も続ける。


「2人は互いに互いが好きだからこそ過ったんじゃないかな?同じ道を歩いていたつもりだったけどどこかでその道は分かれてて気づかないうちに2人は別々の道を歩んでいたの。だから気づいたときにはもう遅かったの」


三木先輩は道に例えた。その道はとても長い道だ…。

でも今の2人の状況は全くその通りだ。

だから私もその話に乗っかる。


「モカ姉も、小鳥遊先輩も同じ道を歩みたかったんですよね?ただ、モカ姉は小鳥遊先輩のために…、小鳥遊先輩はモカ姉と一緒にって想いが変に交差しちゃったんです。でも、2人とも気づいてないけど、その道はまだ先があるんですっ。その先に何があるか分かれた二つの道の先に…あるものを探せばいいと思うんですっ」


裕佳梨は2人に言い聞かせる。

萌華と杏果はまだ沈黙のままだ。

しかし、表情は少し変化した気がする。

お互い想い想われたからこその失敗。

でも、それは本当に失敗なんだろうか?

過ちといっていいのだろうか?


萌華は口を開けた。


「私は…私はその道の先を知りたい…」


萌華は先を見たいと願う。

杏果も少しして口を開ける。


「私も…できるならその道の先を知りたい…でももう遅いよ…私には何もないから…」


杏果は何も望まない。灰色の世界に何も期待しないのだ。

この世界は色を失っている。

ただそれだけ。それだけのこと。

だから私は何も望まない。


裕佳梨は話す


「ううん、あるんだよきっと。その道がたとえくずれそうでも大回りすることになってもきっとその道の先はある」


今は先輩後輩なんて関係ない!

2人の想いを真に伝えるためにも。


三木先輩も続ける。


「道の先が知りたいの?」


返答はない。道の先が見えても怖いんだ。きっと。

だから口には出さない。

でも、話は聞きたい。

萌華は三木先輩の方を向く。

杏果はまだ下を向いたまま。


「道の先なんてわかるわけないでしょ?だってその道はあなたたち自身なんだから」


三木先輩は答えた。2人の道だと。

2人の道は2人で決めろ…そういうことだよね多分。

でも、それだと何も解決しないんじゃ…


「でももう私たちの道は壊れかけているんです。いえ、もう壊れているんです」


杏果は言い切った。壊れていると。

だが、萌華は何か反応することもない


そこへ幸ヶ谷先輩が少し口を挟む。


「あのねー、そーゆーことじゃないのっ。2人の道は続いていくとかじゃなく、分かれ道だったとかじゃないのっ」


萌華と杏果は少しキョトンとしている。


”分かれ道ではない⁉︎”


その言葉に少し違和感を覚える。

だって、私たちはお互いを想い…、過った。そして失った。

そうでしょ?だから今こんなことに…

私は考える。

意味なんてない…そう思う…


ザーッ雨が降っていることを思い出した。

少し冷静になる。


そこへ凛菜が口を開く


「あの、もしかして。道はつながっているのではないでしょうか…」


そう…道はつながっている。ん?


”つながっている⁉︎”


えっ…つながっているってどういうこと?

私とキョーカちゃんはもう壊れてしまったんじゃないの?

だからこんなにもこじれてしまったんじゃ…


「いえ、つながっているというよりは先でつながっている。が正解ですわ」


奏多も声を出した。つながっている。

先で?道の先で?

だとしたら私たちは…


3年生の先輩の方を見るとニヤッと笑う。

意味がわからない。


キョーカちゃんは…


「ははっ…、そんなことあるわけないでしょっ?そんなこと…」


やけになっている…。このままじゃ…

杏果は続ける。少し自暴自棄になりながら…


「私はね、私はもういいのっ!そんな優しい嘘なんて信じないっ。もう裏切りをみたくないっ。例え、それが誰かのためでも誰かのためにならないこともあるのっ!!だからっ。だからっ、私はもう信じないっ」


あぁ…、だめだ。このままじゃ…。

私が…私がもっとキョーカちゃんを理解していれば…。

はやくしないと壊れてしまう。本当にキョーカちゃんが壊れてしまう。


…。


違う。壊れさせてなんかたまるかっ!


私は考えることをやめた。

ただ、キョーカちゃんに駆け寄り抱きつく。

杏果は何が起きているのかわからず固まってしまう。


壊れてなんかいないっ。

彼女は…キョーカちゃんは!私が一番大切なお友達は。大切なお友達だけは。助けなくちゃいけない。助けるんだっ!

そんな想いだけで抱きしめ、声をかける。


「うん、信じられなくてもいいんだよ?ごめんね、私がもっとちゃんとしていれば…。キョーカちゃんの気持ちを考えていれば…。」


優しい言葉をかける。これだけでは多分、キョーカちゃんは何も信じない。でも続ける。信じなくても意味がないわけじゃないっ!!!


「ごめんね?ごめんね。私、キョーカちゃんのこと何も考えていなかった。ただキョーカちゃんは夢を追いかけなくちゃ…私なんか構ってちゃダメだ。なんて、無茶苦茶言ってた。本当は私ももっともっとお話ししたかったのに。自分に嘘ついてまで無理してた。それがキョーカちゃんが幸せになる方法だと思って。自己満足してたんだ…」


自分の想いを素直に打ち明ける。

杏果はまだ下を向いていた。

しかし、肩が震える。

口元も震えている。

顔は赤く腫れあがる。


そして彼女は顔を上げた。


「ッグス…。グスッ…。ぅん。ぅん。ぅん。」


声にならない相槌を打っていた。

赤くはれた頬を伝う光の雫。

雨の音なんて気にならない。

光の雫はやがてたくさん流れ出す。

涙だ…。彼女は泣いている。


ザーッ…ザーッ…ざー


雨が弱まっていく。


やっと聞けた…椎名さん…ううん。もえちゃんの本音。そうだよね裏切ってなんかいなかったんだよね。

ごめんね…



「めんね…」




涙声で小さく囁く。


「ごめんね、私のほうこそ。ごめんね。私、ずっと裏切られてたと思ってた。だから、ずっとずっと悲しかった。でも。私…、もえちゃんの本音が聞けてよかった。私、もえちゃんと友達でよかった!!!」

杏果はスッキリとした笑顔を向ける。

まだ、涙は流れ続ける。


「あはは。もえちゃん泣いてるっ」


あれ?私も知らないうちに泣いてた。キョーカちゃんと同じように何か気持ちがすっきりしたのかな。


そんなことを思い、空を見上げる。

青空だ…。

さっきまでの雨はどこへいったんだろう。

綺麗な青空が広がっている。


すると、杏果も空を見上げる。

綺麗な空…。綺麗な世界…。

杏果の灰色の世界は色を浴び始めた。

やがて色彩豊かな黄金色の世界が広がって行く。


あぁ…私…私たちの道はつながっていたんだ…


萌華の方を向き微笑む。


そう、私…私たちの道はつながっている。

どこまでもどこまでも。

私たちは新しい道を歩みだしたんだ。

一度は分かれたように見えた道だったけどそれは分かれ道なんかではなく、同じ場所へつながっていたんだ。だから、私たちは同じ道をゆく。

親友に導かれ…進み続ける。





私たちの物語は始まったばかりなのだから














杏果編終了です。次回からまたいつものぼらんてぃあぶっ♪になっていくとおもいますー

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