灰色の世界
終業式は近づく。
私は…。
私は打ち明ける。
この部活動について。
これからのことについて。
「三木先輩。あの私…」
三木藍華は振り向く。いつになく真剣な萌華に少し緊張しながら。
「私、この部活動やめたいです。」
三木藍華は固まった。副部長が唐突にやめたいだなんて。なんで?頭は思考を停止していた。でも、声に出して聞いてみる、
「なんで?どうして?」
私は少し勇気を振り絞り続けた。
「三木先輩。私はこの部活動は好きです。でもこのままじゃいけないんです。詳しいことはまだはなせないんですけど、話せる時が来たらいずれ…」
そうして、三木先輩に打ち明けたんだ。
その後、みんなにこの話は話された。
幸ヶ谷先輩はすぐに了承してくれた。
しかし、杏果の方は信じられないと怒りそのまま教室を出ていってしまった。
「まあ、そうだよね。一番のお友達が突然やめるなんて言ったら。ましてや萌華ちゃんがこの部活動やめたら来年は…。」
そう、部員が3人になり、後2人入らないとこの部は廃部になる。
だから私は続ける。
「ワガママで申し訳ないんですけど、このまま廃部にしてもらえませんか?」
さすがにこれは許されないだろう…
そう思いながらも勇気を出して話した。
三木先輩は少しためらった後、了承した。
幸ヶ谷先輩も何も言わずうなづいた。
ただ、杏果は。キョーカちゃんは。何も知らなかった。
やがて、終業式が近づくと、杏果とは疎遠になってしまった。杏果も少し前に廃部の話を聞いたみたいだ。その時の話を三木先輩から聞いたけど、何も言わずうなづいてどこかへ出ていったみたいだった。
私は少し罪悪感を覚えていた。でも、キョーカちゃんに話すのは躊躇われた。
……。
杏果は悩んでいた。
せっかくの楽しい部活動。楽しかったのに。
どうして?どうしてやめちゃうの?どうして廃部にしちゃうの?意味がわからない。私はなにかわるいことをしたの?どうして突然、裏切られなくちゃいけないの?
何も考えられず、ただ絶望し灰色の日々を送っていた。
私は、もえちゃん。ううん、椎名さんになにかわるいことをしたのだろうか。
ただ。ただ。悲しくて泣き続けた。
泣くことで少しは落ち着いた。そして、そのうちに椎名さんを避けるようになっていった。終業式は近づく。
……。
『このまま廃部にしてくれませんか?このままだとキョーカちゃんは自分のやるべきことができないんです。私は一年間、キョーカちゃんと勉強しました。最初の頃は勉強のためとがんばっていたんです。でも最近は勉強よりも部活動が大切と言っています。部活動が大切なのはわかります。でもこの前聞いてしまったんです。彼女、部活動のために留学を諦めたって。彼女の夢だった学校への留学を。だから、彼女が留学するためにもこのまま廃部にしてもらえませんか?ワガママ言っているのはわかります。彼女にはとても辛いことだとも。でも、それでも私はキョーカちゃんをキョーカちゃんの夢を叶えたいんです。だから廃部にしてください!それと、この話はキョーカちゃんには内緒にしてくださいね』
三木先輩は少しためらいながらも了承し、笑う。幸ヶ谷先輩も笑った。
そして幸ヶ谷先輩は無言でうなづき、こう話す。
「わかったよ。廃部にはする。でもね、このこと秘密にしたらきっと後悔するよ?今のままの関係ではいられなくなるよ?それでもいいの?」
幸ヶ谷先輩は、私とキョーカちゃんのことについていっている。わかっています。それでも、たとえ嫌われても私は彼女のためにも廃部にしたいんです。
「突然だからびっくりだよ。でも、彼女はきっと萌華ちゃんとの部活動も楽しんでいたからこそ断ったんじゃないの?」
「確かにその通りです。私のワガママなだけかもしれないけど、でもそれでも彼女のことを大切に思うからこそ廃部にしたいんです。これは自己満足と言われたらそこまでですけど、私のために自分の夢を我慢して欲しくないんです」
そう言って、2人の先輩から廃部の許しを得た。でもその代償に私はとても大切なものを失った。親友と言う名の彼女を。
そして、終業式は始まった。私の中で何かが足りないまま春休みはやってくる。
気持ちは暗くなってゆく。でも、来年にはユカもくる。お姉さんとしていつも明るく笑顔でいなくちゃ。
それがとても辛いことだとわかっていても…
2人におきた出来事です。




