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悪魔なら問題ないよな!  作者: 塩大福くん
6/6

一周目 6話 滑稽噺

 

 

 『何度言えばわかるんだ!』

 

 『お前はいらない子なんだ!』

 

 『連れ子のお前に価値なんて無い!』

 

 叱責。私をまた怒る声。また忌まわしい声が聞こえてくる。

 

 『お前なんて...』

 

 『消えてしまえばいいんだ!』

 



 その瞬間真っ白だった世界が真っ暗になる。

 


 ふと気づくと私はベットの上で足を伸ばして座っている状態だった。

 

 手にはじっとりとした手汗。額に浮かぶ大粒の汗。見開いた瞳孔。息が荒くなっている。

 

 ぼんやりと見える時計の針は二時を指している。丑三つ時だ。

 


 夢だ。夢なのに、忘れたいのに、忘れられない。

 


 私は、八つの時に父さんを殺した。

 

 私には父さんの血は流れていなかった。本当の父さんは私が幼い頃に交通事故で死んだ。

 

 本当の父さんの顔なんて知らないし、別に知りたいとも思わなかった。

 

 義理の父さんはいつも私をいじめた。炎みたいに赤くなった火かき棒を体に押し付けた。殴られた。何度も引出しの中に閉じ込められた。泣いたら余計に虐めてくるから、黙っていたら、もっと殴られた。

 


 この世は理不尽で溢れている。いつもそう思っていた。

 体育の時は皆に、殴られたあざを見られて笑われるから嫌だった。先生に気づかれたらまたお父さんに殴られるから、バレないようにあざが酷い時は嘘をついて見学をした。

 皆が楽しげに運動場を駆け回ったり、本を読んだり、友達と話したりしてる時に、私はいつも折鶴を折っていた。お母さんは体が弱いから、病気がちだから鶴を折った。でもいつも誰かに踏みつけられてクシャクシャになっちゃうから、何回も鶴を折った。

 


 でも、いくら私が傷つけられても母さんが無事ならそれで良かった。母さんはいつも涙を流しながら私を抱きしめてくれた。ごめんね、ごめんね。と疲れ果てて掠れた声でいつも言う。

 母さんを守れたという優越感。それが唯一の生きがいだったのだ。

 

 

 ある日私が学校から帰ってきた時に見た光景に驚愕した。

 

 その日は、図工の時間に作った紙粘土の人形を持って帰ってきていた。

 授業中、先生に褒められた。

 

 「××ちゃんのうさぎちゃん可愛いね」

 

 と。嬉しかった。母さんにも褒めて欲しかった。

 

 私が帰ってきた家にあったのは、静寂。母さんのお帰りの声がない。リビングにも誰にもいない。

 自分の部屋、お風呂、トイレ、リビング、物置、引出しの中。

 どこを探しても母さんがいない。

 買い物に行っているだけかもしれない。けれど第六感がぼんやりとした何らかの危険を察知した。

 


 最後に、母さんの部屋にいるかもしれないと、ドアノブに手をかける。手が震えている。もしかしたら強盗がいるかもしれないと思った。咄嗟に台所から包丁を持ち出して、恐る恐るドアを開ける。

 ギイッと扉が開く音。禍々しい雰囲気に身を包み、私が見たのは----

 

 

 母の寝顔。目を閉じて、髪を乱れさせて横たわっている母さんの姿。ただ、一ついつもと違うのは、違うのは、違うのは。

 

 背中に深々と突き刺さるカッターナイフ。今も絶え間なく流れる血が、母さんの白いシャツを赤色に染める。呼吸が、出来なくなる。頭の中が真っ白になって、何もかもがわからなくなる。

 


 「××。こんなところにいたのか」

 


 地を這いつくばるような父さんの声。こんな状況であるのに、不気味なほどの猫なで声が私を刺す。

 鳥肌が立ち後ろに振り返られないような圧がかかっている。

 

 父さんが私の前に立つ。いつも白いシャツには赤いシミ、目はやつれていて光が無い。怖い。と思った。逃げ出したいが逃げられない。

 

 「母さんは...もういないんだ」

 

 最悪で、最低な事実を述べているのに、父さんはニヤニヤしながら私に視線だけをよこしている。

 

 「何で...?」

 

 


 「なんで母さんを殺したの?」

 

 言葉を必死に紡いでいく。

 

 「母さんを」

 

 父さんの口から滑らかに出た言葉を、自分で訪ねておいて聞きたくない。ちぐはぐな感情が心をぐちゃぐちゃにする。

 

 「俺は愛していなかった」

 

 予想外の言葉。じゃあ何で私を虐めたの?なんで私に暴力をふるったの?どうして?どうして?

 疑問符だけがただただ私の頭の上に浮かぶ。

 

 「俺が不意打ちで殺す?そんなことで自らの手を染めるつもりは無かった」

 

  嫌だ

 

 「だがなぁ!?自分から言ったんだぜ!?死にたいって!誰かに殺されたいって!」

 

  嫌だ嫌だ

 

 「だから俺は言ったのさ!」

 

  もう言わないで

 

 「俺を殺してくれと!そしてあいつが俺を殺す時に俺があいつを殺したんだ!」

 

やめてやめてやめてやめて

 

 「俺は犯罪者にならない最高の殺し方だったなぁ!オマケに声なしの防犯ビデオもあるわけだ!ざまぁないね!」

 

 

 その声を聞いたあとはあまり記憶が無い。

 ただ、記憶がぶっ飛んだ後の光景を見て私は

 

 

  まるで血祭りみたいだなと思った。

 


こんにちは塩大福くんです✌(´>ω<`)✌

今回は過去話ということで書かせてもらいました。

え、meizuなの?咲希なの?とか思ってる人もいるかもしれません。これが思惑です。ホントです。

次回は一応meizu回にしようかな...と考えています。違うかったらごめんなさい。

それではまた次回の後書きでお会いしましょう!

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