予告
二回目の作品をそろそろ書こうと思っています。
一回目ももう終わるので、幻想見聞録を読んでいただいた方にも、
是非こちらも読んでいただければ、と思います。
勿論、初めての方々にも! 私は大歓迎であなたたちを最大の感謝を以て迎えようと思います。
予告を少し。
この小説は、末期戦、塹壕戦、近代戦争、官僚達の人知れない苦悩、外交戦、共産趣味、反動政治、
とりあえず国を統一して列強に成り上がるぜ!、
資本家を育てて重工業化じゃ! 労働者は消耗品、でも反乱が怖いから社会保険作っとこう、
革命万歳!、美少女万歳!、オッサン万歳!
というのが好きな人以外には好みを選ぶ場合がございますが、何ら問題なく閲覧できるので
15歳以上の全年齢対象ございます。
しっかり社会主義と共産主義の区別がつく年齢になってから読もう!
「……本当に、出来るの?」
「成せ、とお命じになれば」
貴女の願いを叶えて見せましょう、と少女は夢物語のように、何の臆面もなく言ってのける。
彼女こそ、「魔王」。
畏怖と畏敬、憎悪と称賛を込めて呼ばれる異形なる少女。
或いは国民が生み出した恐怖の魔王。
或いは栄光を奪還せんと願う人々の祈りの果てに遣わされた使徒。
或いは目的の為ならば手段を選ばぬ合理主義的な怪物。
或いは零落しつつあった国家を再び再浮上させ、列強の首位に甦らせた、現代の英雄。
彼女が元は全くの異世界から使わされた人間であることは、誰にも知られることはない。
悲運の死を遂げた人間は、いったいこの世で何を成そうと、何を壊そうと、何を果てさせようというのだろうか。
その瞳に映る光だけが知っている。暗黒たる光、地獄の窯の底のような漆黒の光だけが!
嗚呼、哀れなり。彼らは栄光にすがるがゆえに、この世の者ならざるモノを呼び寄せてしまったのだ。
多くを望まざれば多くを得ず、少なきを望まれば少なきを得ず。彼らは己の強欲を持ってその身を焼く。
嗚呼、愚かなり。彼らの願いの先には、彼女の偉業の先には、己の亡びが待ち受けているというのに。
「リューネに栄光を! 世界に冠たる我らがリューネ!」
「国王陛下万歳! 宰相閣下万歳! 祖国万歳!」
「万歳! 万事! 万歳! ……! ……」
称賛を叫ぶ声は留まるところを知らない。
覇権国家の誕生には、いつだって傑物の存在がある。不運にも、リューネは異世界の魔王を擁してそれを成立させんとしたのである。
では、魔王がこの世に顕現したとなればそれを迎え撃つのは果たして誰か?
生きることとは富を蓄えることだと謳って止まない狂人か?
旧き玉座に深く腰を下ろし、刃を錆びさせた老人か?
永久凍土に押し込められ、今か今かと暖かい日の光を切に願い続ける乞食か?
未だ絶えぬ革命の灯を高く掲げて自由を叫ぶ百姓か?
彼女が意志はただ一つ。生まれ堕ちたこの地に安寧と平和を築くことただ一つ。
それなのに。
それなのに。
彼らはどうして私の仕事の邪魔をするのだろうか?
「ええ、そう。分割して、統治せよ。単純で分かりやすく、しかもグロテスクなやり方でね」
「彼らも我らの「お客様」ですから。……そうね、少なくとも、お金を払っていただけるまでは」
「何も恐るるに足らん。彼らは何度も立ち上がったが、何度も潰してきただろう? この国が」
「……どうせいつかは亡びるだろう。我らの仕事はいつだって漁夫の利を得ることばかりだ。今回だって、そうだろう」
「時に友人、時に敵。全く、外交は難しいものだな」
「友の幾百万ともしれぬ屍を乗り越えて築いた国だ。欺こうなどと夢々思うな」
「私たちはいつだって自由のために闘ってきた。そして今も!」
「私たちは自由の為、祖国の為、愛する家族の為に、絶対的勝利まで戦いつづけるだろう。……神よどうか、私たちを助けたまえ」
「これが本当に労働者の平等につながるのだろうか? 否! 資本家階級を打倒し、今こそプロレタリアによる真の平等なる国家を築くのだ!」
「国家のために人民があるのではありません。すべての権力を人民に!」
世界が、全ての人間が、老若男女、誰しもが否応なくこの狂気の渦に呑み込まれる。誰もが死の最前列で賛美歌を歌う!
蒸気機関が呻き、歯車が軋む。
無数の機械が犇めき、機関銃が唸る。
怨嗟と罵倒が渦巻き、銃声と砲火が音楽を奏でる中で最後に残っているのが自分だと、どうして言えようか?
世界大戦へと突き進んでいく世界各国。それは歴史の通りであり、当然の帰結である。
彼女はそれを知っているがために、亡びる運命にある祖国を救おうと、権謀術数を駆使して祖国の敵を討つ。祖国を守らんがために。祖国の敵を討ち倒さんがために。
歴史は、繰り返す。
それでも。
だとしても。
運命を打破する力が、彼女にあると、少なくとも今は。
今だけは、信じようではないか。
「シュネーヴィトヒェンに帝冠を」2017年春ごろから投稿開始。
たくさんの人に見られるといいなあ。