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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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78話 薄汚れた沼地、再び

 牛追い祭りから数日が経ったある日。街はすっかり落ち着きを取り戻し、いつも通りの時間が流れていた。俺たちはいつものようにギルドへ向かったが――


「うーん……今日はめぼしいクエストがないな」

「そうですわね……スライム討伐か薬草採取ばかりですわ」

「物足りない」


 クエストボードに貼られているのは、どれもこれもパッとしないクエストばかり。半日かけて遠出して、スライム倒して千ゴルド稼ぐのなんて、正直割にあわない。さて、どうしたもんか……


「あの……」

「ん、どうしたラヴィ」

「ダンジョンは、どう?」

「ああ、その手があったか!」


 ――ダンジョン。それは定期的に構造が変化する異空間のようなもので、たくさんのモンスターが出現する為、腕次第で多くの稼ぎを得られる場所でもある。

 アルクーンの街には管理されてるダンジョンが二つあり、一つは既に挑戦済みだ。


「それじゃあ、今日はダンジョンチャレンジに――」

「ち、ちょっとお待ちくださいまし!?」

「なんだよ、ラヴィ」

「ダンジョンって、また"あそこ"に行くんですの!?」

「うん、まあそうだけど」


 "あそこ"というのは、俺たちが始めて挑戦したダンジョンである、《薄汚れた沼地》のことだ。どんな場所かって言うと、名前通りちょっと汚い沼地だ。

 前回はサハギンの群れに追われたり、巨大蛙との戦闘やムキムキな魚人との激戦と、まあ大変な目に合ったものだ。


「むぅーーー!また汚れてしまいますわ!!」

「まあまあ、仕方ないだろ」

「ち、ちなみ、他のダンジョンはどうなんですの?」

「……確か、他のダンジョンは沼地より難易度あるみたいだけど、いけるのかい?お嬢さん」

「むぐぅ……」

「大丈夫だよ、ベル。拙者も、頑張るから」

「分かりました~……ベルさんにそう言われたら断れないですわ……」


 おい、俺だったら断るのかよ。

 まあいいや、とりあえず今日はダンジョンチャレンジといこう。


「ようし、そうと決まれば、出発だ! せっかくならボスモンスターってのも一目見てみたいな!」

「はぁ……何でちょっと楽しそうなんですの? まあいいですわ、ワタクシのセバスチャンが、誰であろうと倒してみせますわ!」

「……切り刻む」


 ベルはフフンと腕を組み、ラヴィは愛おしそうに刀を撫でる。いいね、ヤル気満々じゃないか。

 後は、空回りしなければいいんだけどなぁ……


 * * *


 ボスモンスター。

 それは、ダンジョンにしか存在しない特別なモンスターで、倒すことでボスドロップとかいう報酬が貰えるらしい。気になる報酬は、ゴミみたいなものから高価な装備品など様々で、実にゲーマー魂を沸かせてくれる。


 俺は密かに、期待に胸を膨らませながらダンジョン内を進む。相変わらずのどんよりした空気に、ぬたぬたの足場が気持ち悪い。


「ところで、このダンジョンのボスってなんですの?」

「はぁ?お前、そんなことも知らずにダンジョンに挑んでるのか?」

「なっ……!ワタクシ位ともなれば、そんなもの知らなくとも楽勝なんですのっ!」

「んなこと言って、サハギンに追い掛けられてピーピー泣いてたくせに」

「泣いてなんかいませんわ!」


 バシッ!と、ベルから強めのツッコミを頭にくらう。確かに、泣いてはいなかったな。騒いだり、俺を囮にしようとしただけだったな!うん、尚更タチ悪ぃ!


「分かった、悪かったって! ……ええと、このダンジョンのボスだな?それはズバリ――」

「あいつ」

「「へっ?」」


 唐突にラヴィが立ち止まり、沼地の奥を指差す。うっすら霧がかった沼地には、アシのような植物と枯れた木しか見えない。


「なあ、ラヴィ。あいつ"って、どいつ?」

「ワタクシも、さっぱりですわ」

「あの、生えてるやつ」

「生えてるやつって……あの木?」

「そう。木じゃ、ないけど」


 ラヴィに言われて、よく目を凝らしてみる。少し霧が晴れ、徐々に姿を現し始める。ぐねぐねと小さく、不規則に揺れる木――いや、あれは木なんかじゃない。一部の人には大人気コンテンツ、触手だ――!!


 太いタコの足のようなものが、地面から空に向かって伸びている。吸盤の代わりとでも言うように、触手にはいくつもの目がギョロついている。見ているだけで不快感マックス、鳥肌が体を駆け巡る。


「うげぇ……!なんだあいつ、気持ち悪ぃ!」

「えぇ!?『なんだ』って、マヒルさんこそ分かってないじゃないですか!」

「図鑑には文字しか書いてないんだよ! いや、にしても想像以上だなありゃ……魚人とか蛙なんかの比じゃないぞ、きっと」

「……どうする、やる?」


 ラヴィは一人落ち着いて、戦闘準備を整えている。

 いや、ボスドロップは魅力的だし、何より"ボスモンスターを倒した"という実績は欲しい。けどなぁ……


「……ま、まあ、やるだけやってみるか?」

「ふ、ふん!どうしてもって言うなら、ワタクシもやりますわよ?」

「足震えてんぞ?無理すんな」

「こ、これは武者震いですわ!」

「二人とも、静かに。行くよ」


 こうして、俺たちはボスモンスターに挑むことになった。まだ全容の見えない、不気味な触手に。

 次回、沼地の触手VSパライジング・グレイス!ベルとラヴィの運命やいかに!?お楽しみに――!ってか。

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